奇抜なコンセプトカーへ試乗 感動するほど普通に走るシトロエン・オリ 未来への姿勢を表現

公開 : 2023.02.28 08:25

普段はモーターショーのステージを飾るコンセプトカー。走行可能な状態へ仕上げられたオリを、英国編集部が試乗しました。

感動するほど至って普通に運転できる

シトロエンのCEO、ヴァンサン・コベ氏と真剣に意見を交わした結果、計画は臨機応変に変更される可能性があると知った。事前にサインした書面上では、オリは運転できないことになっている。しかし、今回の試乗レポートへ至ったのだから。

完全なワンオフ・モデルとして作られたオリは、約100万ポンド(約1億6100万円)といわれる、巨大なコストを投じて作られている。各ディーラーで展示され、顧客のイメージアップを目的に渡英している。

シトロエン・オリ・コンセプト
シトロエン・オリ・コンセプト

筆者がサインした書面は、最終的にはコベが承認することになる。彼がOKというのだから、基本的に逆らうスタッフはいない。にわかに試乗の準備が整えられていく。AUTOCARのためだけに。

わたしたちがいるのは、グレートブリテン島の中部、バーミンガムにあるコンベンションセンターの展示ホール。一般道での印象は掴めないが、こんな機会は滅多にない。シトロエンのCEOは、オリの能力に自身を持っているようだ。

意外と長いドアを開き、運転席へ腰を下ろす。助手席にはコベが座っている。彼を意識しないわけにはいかない。

勢いよく発進させ、展示ホールの柱を避けるように曲がり、止まってみる。至って普通に運転できることへ感動してしまった。

スタイリングは挑戦的。インテリアも既存の枠を越えようとしている。しかし、完成度の高い電動パワートレインにより、走りには不自然な部分がまったくない。

手頃さと持続可能性に対する姿勢を表現

運転席からの視界は良い。シートも座り心地が良い。シンプルで大胆なデザインのインテリアは、オリのコンセプトをストレートに反映している。

もちろん、このまま量産化されるわけではない。だが、次期型のC3 エアクロスを皮切りに、このエッセンスが量産モデルへ展開されていくのだろう。

シトロエン・オリ・コンセプト
シトロエン・オリ・コンセプト

加速力も不足を感じない。ステアリングホイールの操作へ、フロントノーズが機敏に反応する。ショーカーらしくタイヤは巨大だが、展示ホールのフロアは平滑だから、乗り心地も静か。

広い場所で急旋回を試みる。「好きなだけ回っていいですよ。ドーナツターンしてもらっても構いません」。コベが笑顔で話す。楽しさで筆者も笑顔になる。完成度の高さには、感嘆せざるを得ない。

ドーナツターンまではしなかったが、もうしばらく積極的に運転してみた。すごく良いじゃないか。もしこれが未来なら、かなり楽しみだ。

シトロエン・オリは、英国価格2万3000ポンド(約370万円)前後を想定した、バッテリーEV(BEV)のビジョンを体現したもの。手頃さと持続可能性に対する取り組みをカタチにしたコンセプトカーで、今後の量産車へ展開される技術が盛り込まれている。

C3 エアクロスに似たアウトドア志向のコンパクト・クロスオーバーとして、ブランド哲学を具現化したものでもある。公道走行できるほどの高い完成度には驚かされる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジム・ホルダー

    Jim Holder

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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