まるで違う「装甲」性能 7シリーズ・プロテクション 爆弾15kgにも耐える! BMWの特別プログラムを体験(1)

公開 : 2024.04.27 09:45

衝突テストのNCAPとは異なる安全性を誇る、BMWのプロテクション・モデル 装甲車の基準でドイツ最高レベル マシンガンの攻撃を凌ぐ最新7シリーズを英国編集部が体験

「装甲」性能がまるで違うプロテクション仕様

現代版カラシニコフ、通称「ドラグノフ」と呼ばれるSVU OTs-03 マシンガンの殺傷能力は半端ない。最大射程は1.2km。もちろん普通のサルーンなら、弾丸は簡単に貫通してしまう。反感を買うこともあるVIPからは特に、歓迎されない武器だろう。

しかし、豪奢な空間で身の安全を守りながら、陸路で目的地へ辿り着く方法がある。それが、今回ご紹介する特別なBMW 7シリーズだ。

BMW i7 xドライブ60 プロテクション(欧州仕様)
BMW i7 xドライブ60 プロテクション(欧州仕様)

電気モーターで走るi7 xドライブ60 プロテクションと、ガソリンエンジンで走る760i xドライブ・プロテクションは、街角のディーラーで購入できるG70型とは大きく違う。見た目の印象は似ていても、「装甲」性能がまるで異なる。

世界でも特に恐れられている携行武器の1つ、ロシア製の新型マシンガンによる攻撃を、しっかり防御できると公表されている。自動車では最高峰の防弾基準を満たした、数少ない装甲リムジンだ。

少々物騒な内容だが、マシンガンから発射される7.62x54mmR弾をしのげるだけでなく、ドローンから投下される手榴弾にも耐えられる。最大15kgのTNT爆弾による攻撃でも、乗員の命を守れるという。

その強固なボディを構成するのが、プロテクティブ・コアとBMWが呼ぶ構造。最新の装甲鋼に加えて、新素材も採用したBMW独自の装甲構造が、見慣れたシルエットの内側に組み込まれている。

装甲車の基準でドイツ最高レベル

アンダーボディやルーフ、ピラーなどが強化されるだけでなく、多層ガラスを前後左右のウインドウへ採用。VIPも納得のラグジュアリーなインテリアを内包した、走るシェルターといっていい。

防弾性能は、ドイツが定めるVPAMと呼ばれる基準で、最高レベルのVR10に合致するそうだ。装甲車に適用される基準でもあり、よほどの攻撃でも大丈夫と考えていい。

BMWプロテクション・プロダクトのマネージャー、アクセル・スタナー氏(右)と、筆者、グレッグ・ケーブル(左)
BMWプロテクション・プロダクトのマネージャー、アクセル・スタナー氏(右)と、筆者、グレッグ・ケーブル(左)

高度な防弾技術を提供するのは、社外の専門企業。ドイツ・シュツットガルトの老舗ブランド、メルセデス・ベンツもVR10に対応するSクラスを提供している。だが、バッテリーEVに対応した例としては、最新のi7が初めてだとBMWは主張する。

この重装甲を獲得するに当たり、相当な重さも追加されるのはご想像通り。なんと、ドア1枚の重さは最大200kgまで増えるらしい。その重量を支え、滑らかに開閉し、確実に密閉するため、ドアには専用のヒンジと電動油圧システムが必要になるそうだ。

仮に強烈な攻撃を受けて、多少変形しても心配ない。ドアを吹き飛ばす発火装置も装備する。有毒ガスから車内を隔離するため、独別なドアシールも得ている。キャビンとエンジンルームやトランクを隔てるワイヤーウォールも、装甲された専用品だ。

トランクの中には、酸素タンクがある。必要に応じて5分以上、車内へ加圧された環境を作り、外部からのガス流入を防ぐ。BMWは、このキャビンをサバイバル・セルと呼んでいる。自動と手動に対応した、消化器も2本積まれている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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