戦前クラシック唯一の魅力 V4エンジンにモノコック ランチア・アプリリア 英国版中古車ガイド(2)

公開 : 2023.12.02 17:46

1930年代の先端技術を積極的に採用したアプリリア 風洞実験を経た世界初の公道用モデル 狭角V4エンジンにモノコック構造 英国編集部がご紹介

信頼性や耐久性が高い狭角V型4気筒

ランチア・アプリリアの小さな狭角V型4気筒エンジンは、オーバーヘッドカム構造。カムはダブルチェーンで駆動され、その横にロッカーシャフトが並んでいる。

エンジンブロックとロッカーカバーは、アルミニウム製。ライナーとシリンダーヘッドはスチール製だ。

ランチア・アプリリア(1936〜1949年/欧州仕様)
ランチア・アプリリア(1936〜1949年/欧州仕様)

ツインチョーク・キャブレターへ改造されている例は珍しいが、パワーが増し望ましい走りを披露する。後期型のアプリリア・セカンドシリーズに載る1486ccユニットの方が、トルクが太く扱いやすい。

初期型のエンジンでも、信頼性や耐久性は高い。内部摩耗しても、リビルドに必要な部品は入手可能だ。

高速域でパワーが落ちるようなら、燃料ポンプの劣化が疑われる。リビルドは難しくない。ウォーターポンプの交換には、かなりの費用が求められる。ダイナモが中心に食い込んだラジエターは、内部が詰まりやすいようだ。

ランチアは、1937年には燃料インジェクション技術をアプリリアで実験している。また1940年代には、狭角V型6気筒エンジンも開発を進めていた。

コンパクトなボディサイズで、パワーウエイトレシオは良好。電気系統は、当初の電圧が6Vだったものの、1939年から12Vへ昇圧している。点火プラグがロッカーカバー内で破損し、ミスファイアを生じることがあるようだ。

入手困難な部品が最大の課題

クラシック・ランチアの定番技術といえる、スライディングピラー式のフロント・サスペンションは、1922年のランチア・ラムダで初採用。アプリリアが現役だった頃も、遥かに優れた設計といえた。

バネ下重量が軽く、ソフトなスプリングと油圧ダンパーの組み合わせで、快適な乗り心地を実現。ステアリングの切れ角も深い。安定した制動力にも貢献していた。ダンパーのオイル漏れや、スプリングの破断には注意したい。

ランチア・アプリリア(1936〜1949年/欧州仕様)
ランチア・アプリリア(1936〜1949年/欧州仕様)

対するリア側は、横向きに配置されたリーフスプリング。スプリング自体や、スプリングハンガーのサビへ注意したい。破断すると、クルマが横転することも。

オリジナルのドライブシャフトには、16枚のベアリングが組まれており、1本100ユーロ(約1万5000円)ほど掛かる。英国の場合、特別な整備工具はランチア・モーター・クラブから借りることができる。

ボディはコンパクトながら、大人4名が問題なく座れる広さがある。小柄な体形なら、もう1人乗れるかもしれない。サイドウインドウのワインダーなど、インテリアのディティールにも見惚れてしまう。

クラシックカーとして嗜む上で、最大の課題といえるのが一部の部品が入手困難なこと。基本的な消耗品は滞りなく流通しているものの、部品が欠損したアプリリアのレストアは、簡単ではないと考えたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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