クルマ漬けの毎日から

2021.02.02

フォード創業者のひ孫、ビル・フォード(63歳)は、2001年から自身でCEOを務めていました。その後は会長としてフォードCEOを支えています。会長と現CEOを知るクロプリー編集長は、フォードの未来は明るいと考えています。

【クロプリー編集長コラム】フォード創業家の誇り、ビル・フォード氏

もくじ

「異端児」と言われた時代も
CEOを支え、慈善活動も
クルマ大好き ジム・ファーリー新CEO
カリスマの必要性

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)

「異端児」と言われた時代も

アメリカのオートモーティブ・ニュースが、ビル・フォードを「インダストリー・リーダー・オブ・ザ・イヤー」に選んだと聞き、とても嬉しく思った。

ビル・フォードの功績は大いに称賛されるべきだと、ずっと思ってきたからだ。

彼は何かの賞を与えられる以上に大きく、会社と社会に貢献してきた人だといえる。

フォード会長のビル・フォード

大手自動車会社の創業家に生まれ、また若い頃から環境問題に熱心に取り組むという独自の道を歩んできた人は、きっと特殊な人物にちがいない。

ビル・フォードは、環境問題がこれほど叫ばれていなかった時代から、環境に配慮したクルマへの取り組みを推し進めてきた。そうした信念を持ち続けながら、フォードの経営陣の1人に伸し上がるには、よほど強い決断力を持つ、現実的で冷静な人物でなければならない。

CEOを支え、慈善活動も

ビル・フォードの功績は、ほかにもある。

2001年に最高経営責任者(CEO)に就任した彼は、5年後の2006年、フォードのCEOには自分よりも適任者がいると考えた。そして勇敢にも、ボーイングの元上級幹部のアラン・ムラーリーをCEOとして登用(2006-2014)したのだ。

そして、2008年から2010年にかけての世界的な不況の間、ムラーリーを支えた。

この不況で、ライバルのクライスラーとGMは政府からの救済を必要としたが、フォードは救済を受けずに乗り越えることができた。また、ビル・フォードの進取的なアイデアのもと、2017年にはジム・ハケットがCEOに就任し、再編成と新しい思考がフォードにもたらされた。

そして現在は、大胆で若く、クルマが大好きなジム・ファーリーがCEOとしてフォードを統率している。自動車業界に革命的な変化が起こっている今、ファーリーのような強いリーダーシップを持つトップの存在は極めて重要だと、フォード会長は考えたのだろう。

ビル・フォード氏(右)にインタビューするクロプリー編集長(左)。2019年、米国ミシガン州ディアボーンのフォード本社にて。

ビル・フォードはまた、フォード家の人々がこれまでしてきたことも継承している。

地域社会を常に大切にし、フォードの地元であるミシガン州ディアボーンを中心に、慈善活動にも取り組んでいるのだ。

業界のリーダーと呼ばれる人たちは概してあまり人気がないが、ビル・フォードの人気はいつも、他のリーダーたちを上回っている。

彼の人気がさらに高まったとしても、驚きではない。

クルマ大好き ジム・ファーリー新CEO

フォードでは、昨年10月にカーガイのジム・ファーリーが昇進して、CEO(最高経営責任者)に就任している。

このニュースが舞い込んできた時は、あまりにも嬉しかったので、祝いにすぐにでもフォードを1台買いに行こうと思ったほどだ。

フォードの新CEO、ジム・ファーリー。欧州フォードのトップだった2015年、クロプリー編集長のインタビューに答えるファーリー。(AUTOCARのフォト・アーカイブ室にて)

ファーリーは若い頃、アメリカ人のF1チャンピオンで自動車コレクターだったフィル・ヒルと一緒に仕事をしたこともある、根っからのクルマ好きだ。

また彼は、アメリカの大手自動車会社で素晴らしいキャリアを築いているのみならず、自身のローラでル・マン・クラシックに参戦し、グッドウッドでもフォードGT40を走らせたことがある。

カリスマの必要性

ジム・ファーリーは2015年から2017年にかけて、欧州フォードの指揮を執っていた。

AUTOCARとは取材を通して良好な関係にあり、昼休みに編集部に立ち寄ってくれたこともある。ST、RS、ブリット、ラプターといった、フォード成功のために不可欠であると彼が信じているモデルに、われわれ編集部が夢中になって試乗したことは記憶に新しい。

フィエスタ40周年の2016年、70年代のファッションに身を包みジュネーブに現れたジム・ファーリー(中央)。後方に見えるのは、1976年製初代(左)と2016年製のフィエスタ(右)。

また、フォード・フィエスタが40周年を迎えた2016年、カメラマンのスタン・パピヤーと私は、40年前の懐かしい初代フィエスタに乗って、この年のジュネーブ・モーターショーに出かけたが、この時、ファーリーはわざわざ私たちに会いに来てくれた(写真参照)。

1976年にデビューした初代フィエスタ。2016年、クロプリー編集長はこのヒストリックカーでイギリスからジュネーブ・モーターショーへ。

これまでフォードが絶頂期を迎えた時はいつも、クルマが好きなカリスマ的リーダーが存在していた。

いま、フォードの新時代が始まろうとしている。

AUTOCAR 英国版 編集長 スティーブ・クロプリー

オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。新しく独特なものなら何でも好きだが、特に最近はとてつもなくエコノミカルなクルマが好き。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。

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