クルマ漬けの毎日から

2024.05.29

英国のスポーツカーメーカー、TVRをかつて率いたピーター・ウィラー(1944 – 2009)は、TVRの黄金時代を築きました。そのウィラーが遺した水陸両用車「スカマンダー」が最近話題になっています。

英国TVR元オーナーの遺作、水陸両用車「スカマンダー」【クロプリー編集長コラム】

もくじ

まるで巨大なゴキブリ!?
元オーナー、ウィラーの野心作

translation:Kaoru Kojima(小島 薫)

まるで巨大なゴキブリ!?

カレンダーには、いつも突然新しい予定が入る。ほんの少し前まで6月4日から6日にかけての私の予定は、キーボードを打ち続けて原稿を書くか、遠く離れたロケ地へ行くかのどちらかだと思っていた。

だが今は、その期間にはロンドン・コンクールに出席することが決まっている。その開催地はHonourable Artillery Company(名誉砲兵中隊)と呼ばれる、イギリス陸軍でもっとも古い連隊の本拠地。

今年のロンドン・コンクールでは、TVRの「スカマンダー」という名の型破りな水陸両用のオフローダーが、ワイルドカードと名づけられたクレイジーなクラスに展示され、脚光を浴びているだろう。

スカマンダーは大胆なデザインのワンオフで、2008年にピーター・ウィラーによってつくられた。ウィラーは化学工業技術者として成功し、その後1981年から2004年にはTVRをオーナーとして率い、このイギリスブランドの黄金時代を築いた。

スカマンダーは大型3座の水陸両用車。巨大なゴキブリのようなスタイルをしている。フォード製V6エンジンをミドに搭載して、陸上では後輪駆動で走行。また水中では、ジェット水流を動力とする。

元オーナー、ウィラーの野心作

2009年にピーター・ウィラーが亡くなって以来、スカマンダーは長らく冬眠状態にあった。しかし、ウィラーをよく知る自動車ジャーナリストで、かつてスカマンダーを水上で試したこともあるハリー・メトカーフが、今年2月にイングランド北西部のランカシャーの小道を走るスカマンダーの姿をYouTubeに投稿したところ、突如注目が集まった。

ピーター・ウィラーのことは私もよく知っている1人だと思っていた(ウィラーがTVRを率いていた時、よく私たちはTVRの信頼性について意見を交わしていたから)。だが、スカマンダーの話を彼から聞いたことはなかった。

スカマンダーのデザインはじつに先進的で、ウィラーが意欲的に取り組んでいたことが表れており、実際よく出来ている。イギリス自動車業界の真の英雄、ピーター・ウイラーの思い出に新たな輝きが加わった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。

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