ハリー・ポッターでは飛んだ フォード・アングリア 105E 英国版クラシック・ガイド 前編

公開 : 2023.03.25 07:05  更新 : 2023.03.25 07:53

英国フォードが開発した、個性的なスタイリングのアングリア。彼の地でのクラシックカーの嗜み方をご紹介します。

1960年代を見据えた105Eのアングリア

1950年代、世界的に自動車産業を牽引する立場にあった英国。名車も数多く生み出したが、明らかに時代遅れといえるモデルも作られていた。戦前の技術をそのまま継投していた、フォード・アングリア 100Eはその1台に数えられる。

戦後を象徴するような、アングリア 100E ポピュラーが発表されたのは1953年。サイドバルブの4気筒エンジンに、3速マニュアルのトランスミッションが組まれていた。フロントガラスのワイパーは、モーターではなくバキュームホースが動かした。

フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)
フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

シンプルさとリーズナブルさで、英国市民の支持を集めた。しかし、新しいアングリア 105E 2ドアサルーンが1959年に登場。1960年代を見据えたモデルチェンジを果たした。

今回ご紹介する、このアングリア 105Eは、それまでとは異なる低いボンネットが特徴。両サイドの高い位置に、丸いヘッドライトが構えた。コストを抑えた板状のリアガラスは、通常とは逆向きに傾斜が付き、リアシート側の空間が確保されていた。

英国フォードのエンジンの歴史を遡っても、1959年ほど大転換といえる時期はないだろう。従来のロングストローク・サイドバルブから、アングリア 105Eではショートストローク・オーバーヘッドバルブへ進化している。

シリンダーもオーバースクエア形状へ変更され、高回転域まで軽快に吹けるようになっていた。2速から上にシンクロメッシュが付いた4速マニュアルが組み合わされ、滑らかな変速も実現していた。

チューニングベースとして注目された4気筒

その結果、105E用のユニットはコスワースやアレクサンダー、HRGといったレーシングカー・メーカーが、チューニングベースとして注目。数年後には、フォーミュラジュニア・クラスのレーシングカーへ搭載されるようになっていた。

さらにこのエンジンは、フォード・コルチナ用としてバージョンアップ。1962年に追加された高性能なアングリア・スーパー 123Eへ、1198cc版が登用されている。

フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)
フォード・アングリア(105E/1959〜1967年/英国仕様)

低価格の量産車であったアングリア 105Eだが、フォードは複数のオプションを用意。現代でいうパーソナライズにも力が注れた。クロームメッキ・モールがボディに付かない、シンプルなフロントグリルと内装のスタンダードが、標準仕様に設定された。

その上のデラックスでは、クロームメッキ・グリルにクロームメッキのサイドトリムとテールライト・フレームを獲得。グローブボックスにリッドが付き、サンバイザーも備わった。

アングリア・スーパー 123Eでは、サイドトリムが2本に増え、ルーフをボディと対照的なツートーン・カラーで塗装。インテリアは豪華に仕立てられた。また、デラックス仕様やスーパー仕様で指定することも可能だった。

ほかにアングリア 105Eでは、約1000台が生産されたピックアップトラックと、約600台のステーションワゴン、スタンダード・エステートも作られている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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