イベント・レポート

2017.03.24〜25

編集者マツダ体験会2017

text:Motoaki Saitou (齋藤基明) photo:マツダ株式会社

 

「ZOOM ZOOM」、「人馬一体」、「SKYACTIV」などのキーワードを聞いて一体何をおもい浮かべるだろうか。そう、ほとんどの人は「マツダ」をおもい浮かべると僕はおもう。

そして、このキーワードに少し懐かしさを感じるのもじつは間違いではない。

だが「編集部向けマツダ体験会」に参加して強くおもったのは、これらのキーワードがただの一過性の「マーケティングの為のコマーシャル・フレーズ」ではなかったということだ。

今回の「マツダ体験会」。まずは座学で今までのマツダの歴史、社内改革、クルマ造りの哲学を教示して頂くことになった。

よかった出来事、反省すべき出来事を、広報本部長、開発役員からマツダの歴史のアウトラインとして教えてもらったのだが、先述の3つのキーワードのバック・グラウンドに共通してそびえているのは「マツダの背水の陣、その覚悟」だったように僕はおもった。

例えば、「業績がおもうように伸びず、しかも企業として生き残らなければならない中で、開発に人を多く割くことが難しい状態。企業内の様々なフリクションの中でどのように社内改革を行っていくか」

実はこのような事は普段、社会人として生活している僕らを含めた読者の中でも同じように葛藤している方が多いのではないだろうか。

結果として、この為し難い状況を打破してきたことが、今日のマツダの隆盛と復活に結実していったのは明らかだった。

このマツダという会社は、15年ほど前に本当に「抜本的な社内改革をしていかなければ企業として存続が難しい」という状態に陥った。今回、企業や組織としての普遍的な課題をいかにして打ち破ったのかを聞くにあたり、あの当時から、各セクションの個人個人に会社として生き延びていくためのスローガンを内在化させていったことを気付かされ、改めて深い驚きを感じた。

「ZOOM ZOOM」と言う言葉を広報本部長から聞いたとき、その言葉を初めてテレビCMで聞いたのはもう15年以上前のような気がしたが、多分そうは間違いではないだろう。

だが、その一見年月を経た言葉の裏側にある「クルマを通じて人間そのものが幸せになる」という考え。そのもとにクルマづくりの哲学を落とし込み、そこにマツダが企業として生きる道を指し示して、今現在でも社員の一人一人の方が異口同音に自らの言葉で僕らに伝えてくれた。

同じ信念を複数の人の口から聞くというのは、あまり多くの事例がないのではないかとおもう。

「喉元過ぎればなんとやら」を日々繰り返してしまっている僕にとっては本当に驚愕だった。

そして実際にマツダ車を試乗してみる段階になると、その哲学が1台1台のクルマのエンジン特性、車体寸法、重心位置に、統一した「クルマを操る喜び」という公理を血肉にしていることを体験した。

この意識改革の積み重ね、それを社内全体1人1人へ内在化し、「クルマの感覚性能」に現れるまで昇華させていくのは非常に難しいことではないだろうか。

例えばロードスター、アクセラ、アテンザ、CX-3、CX-5。それぞれ違う車をあえて「通常の舗装路面」に改修したテストコースで試乗したが、その印象はやはりマツダの基準とする「クルマを操る喜び」を持ちながら、統一のある操縦感覚を持っていた。

つまり「クルマづくりの精神、そして社内の精神、それがクルマと言うプロダクトの結果に結びついている」という事を身をもって感じさせられた。

帰路に着く飛行機の中で、高速道路をひたすら微小舵の修正を必要とせず、本当にステアリングに手を添えているだけで、それこそ「自ら進んでクルマが直進していく」操縦感覚の新型CX-5におもいを馳せる時。

人間ひとりひとりが企業としての信念を自己に取り入れることによって、その企業の根幹をより強いものにし、戦い続ける企業に変革できるということを僕はおもった。

  • 生産効率向上のために作業されている方が考えた「部品の運搬代車」。異なった車種のパーツを無駄なく運搬するよう配置されていた。

  • バネやてこの原理を使い、原動力なしで生産性を上げるボルト取り分けトレー。制作は場内で作業する皆さん。実は組み立て作業だけではなくエンジニアリングもこなしていた。

  • 続々と組み立てられる完成車。生産現場を目の当たりにしていると、1台1台が神々しく感じてきたのも今回取材した収穫だった。

  • 広報部町田氏より今回のプログラムに関して事前レクチャー。同氏ならではの言葉でマツダの車づくりの理念を伝えていただいた。

  • 車両開発推進部の森内氏から人馬一体講座とドライビングポジションに関してのプレゼンテーションをいただく。人馬一体がサーキットなどの高速領域のみならず日常で感じられることの大切さを改めて教えてもらった。

  • 剽悍な操縦性のコスモ・スポーツを自ら運転することができたのは本当に貴重な体験だったとおもう。今乗ってもおもわず気分が高揚するほどの爽快感。当時これを手にしたオーナーたちはどんな気持ちだったろうかとおもいに馳せる。

  • 自ら声はあげたと言う社内有志の方々でレストアされたコスモ・スポーツ。こちらは貴重な海外仕様であった。細部にわたり丁寧に愛情を持って仕上げられていた。その真摯な作業の痕跡を見ると心が暖かくなる。

  • こちらも社内有志の方で進められたR360クーペのレストア車両。リア・ウインドウのカーテンやシート生地のギャザー部分まで、サプライヤーの方と共同して作り上げた現物を見て、とても感慨深い気持ちになった。

  • 様々な座学を通して感じるのは社員一人ひとりの方が自らの言葉で「マツダのクルマづくりへの熱いおもい」を語ってくれたこと。プレゼンテーションを受けるたびに社内一丸となったこの15年の結実を感じた。

  • 自然なドライビングポジションのレクチャー。日ごろの不摂生がたたり腕を上げひじを曲げ伸ばす行為だけでも顔を歪める筆者。実は全然若手ではありません。

  • 日頃怠惰な姿勢でのんべんだらりと運転してしまう。今回無理ない姿勢と正しいドライビングポジションを基礎から教わったのは収穫だった。聞けば各ディーラーのセールスマンもこのレクチャーを受けているという。

  • マツダの全ラインナップをテストコースで試乗。車体寸法、重心の高さなどそれぞれ違うにも関わらず、一貫した運転感覚と操る喜びを持っている。

  • R360クーペを自ら運転してみる。360cc空冷2気筒の力強い走りと二速オートマチックのマッチングがことのほかバッチリ。運転した全員が、自然に笑みがこぼれていた。

  • 最後に参加者全員で写真をパチリ。一泊二日の行程でマツダの車作りの哲学と社員の方一人ひとりの熱いおもいを真正面から感じることができた。

  • これで僕も、クルマに対してもうちょっとまっすぐに向き合えるようになった気がする。