英国の「日本車ブーム」がアツい GT-Rに軽自動車、なぜ愛される? 欧州最大級イベントへ潜入

公開 : 2024.04.12 18:45

英国では1990年代から「日本車ブーム」が始まり、今もなお多くの人が熱狂している。なぜ日本車がこれほどまで愛されるのか、欧州最大級の日本車フェス「Japfest 2024」でその理由を探った。

若者からコレクターまで幅広く愛される

英国のクルマ文化では、基本的に自動車の発明以来「改造」が盛んに行われてきた。そんな英国で初めて日本車が販売されたのは1965年のことだ。しかし、日本車の改造が普及するまでには、そこから15~20年かかった。

マックス・パワーを追いかける時代が過ぎ去ってもなお、日本車の改造シーンは健在だ。英国の若者たちは日本車に興味を持ち続け、時間と労力とお金を費やしてクルマの外観や性能を自分好みにカスタマイズしている。

英国で開催された欧州最大級の日本車フェス「Japfest 2024」
英国で開催された欧州最大級の日本車フェス「Japfest 2024」    AUTOCAR

マツダMX-5(日本名:ロードスター)のような車種は、こうした若いエンスージアストたちの間で人気であり、一方ではコレクターたちが日産スカイラインホンダNSXを買いあさるようになっている。

海外でよく聞かれる「JDM」という言葉をご存知だろうか。

日本のメーカーは、日本国内市場向けの仕様車を作る傾向があり、それが世界中のエンスージアストによって輸出された。これらのクルマは主に「JDM(Japanese Domestic Market)車」と呼ばれている。

JDM車は、グレードの違いから性能の違いに至るまで、さまざまな点で輸出市場向けモデルとは異なっている。

日本車全般、特にJDM車のブームは1990年代から2000年代初頭にかけて高まり、ビデオゲームや映画、モータースポーツによって日本車の素の性能やカスタマイズ性が強調された。

この時期に最も有名になったクルマの1つが、映画『ワイルド・スピード(原題:Fast and Furious)』でポール・ウォーカー演じる主人公が冒頭数シーンで使用した日産スカイラインR34 GT-Rだ。

同様に、『グランツーリスモ』というビデオゲームが子供たちをJDM車文化に早くから引き込んだ。今ではその子供たちがゲームの中で遊んでいたクルマを高く評価し、購入する傾向にある。

英国の日本車シーンがアツい理由

今年、英国で開催された日本車フェス「Japfest 2024」で、その時代に育った人たちに話を聞く機会があった。

このイベントでは、欧州各地から3500台以上のクルマと約2万人の観客が英ノーザンプトンシャーに集まり、日出ずる国からやってきた最高のクルマを祝った。

英国で開催された欧州最大級の日本車フェス「Japfest 2024」
英国で開催された欧州最大級の日本車フェス「Japfest 2024」    AUTOCAR

日本のクルマ文化は常にバックグラウンドで脈々と受け継がれてきたが、Japfest 2024ではその巨大さが浮き彫りになった。展示されたクルマは、軽自動車から1000馬力の日産GT-Rまでと幅広く、誰もが楽しめるものだった。

イベントの常連であるマット・ハムレットさん(31歳)は、ベイサイド・ブルーの日産スカイラインR34 GT-R V-スペックで会場に現れ、瞬く間に観客を集めた。

彼は10年以上前からJapfestに参加しており、日本車文化に対する愛情は、R34の他にスバルWRX STi(ブロブアイ)プロドライブ・エディション、R35 GT-R、三菱ランサーエボリューション9を所有するガレージに表れている。

「日本車文化は特別ですよ。というのも、オーナーはほとんどの作業を自分で行い、クルマに個性を与えているので、1台1台がオーナーを象徴しているんです。同じメーカーやモデルでも、みんなユニークなんです」とマットさん。

日本車愛好家の間で特に人気があるのがマツダMX-5で、今回のイベントには全4世代にわたって多くの車両が集まった。

リアム・ハートレーさん(27歳)は、スピリティッド・グリーンのマツダMX-5(第3世代)のオーナーで、イベントの常連でもある。例に漏れず、彼も自宅ガレージでクルマを改造しており、「近いうちにサーキット仕様に仕上げることを目指している」という。

サイモン・ベイカー・チェンバースさん(50歳)は今年Japfest初参加だった。彼は昨年、トヨタGR86を購入できた数少ない幸運なドライバーの1人であり(英国では台数限定販売)、それ以来、日本車文化にのめり込んでいる。

欧州車を何台も所有してきたサイモンさんがGR86を購入したのは、純粋に運転が好きだったからだ。「僕のGR86は今ノーマルなんですけど、もうすぐノーマルじゃなくなります。ちょっとした改造を控えていて、とても楽しみにしているんです」

リアムさん同様、サイモンさんも手頃な価格と日本車コミュニティを楽しんでおり、いくつかのフォーラムや自動車クラブに積極的に参加している。

スーパーカー顔負けのパフォーマンスを手軽に体験し、入手し、コミュニティやサポート、そして楽しみを求めている。要約すると、それが今日の英国の日本車シーンだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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