CESで見た「モビリティ革命」 ソニー・ホンダEVから空飛ぶタクシーまで

公開 : 2024.01.14 18:05

・世界最大のテクノロジー見本市「CES」の注目展示を総まとめ。
・EV開発を根本から見直すホンダ、商用車に新規参入するキア。
・韓国ヒョンデと中国シャオペンは、エアモビリティに力を入れる。

クルマから、モビリティへ

2024年最初の世界規模の自動車イベントは、モーターショーではなかった。1月にラスベガスで開幕したCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)は、テレビや携帯電話といった家電製品だけでなく、社会変化の最先端に身を置こうとする自動車業界も受け入れられて久しい。

CESの規模はすさまじく、自動車業界各社が押し込められたフロアだけでも気が遠くなるほど。展示内容も、自身の現実感が疑わしくなるものばかり。レーダー、センサー、カメラ、ソフトウェアなどは、実演して魅力を伝えるのが難しいものだ。AI(人工知能)がクルマに搭載されるなんて、まだすんなりとは信じがたい。

CES 2024の注目展示を総まとめ。
CES 2024の注目展示を総まとめ。    AUTOCAR

ホンダは「0シリーズ」と呼ばれる次世代EVラインナップの第1弾として、サルーン・コンセプトを発表した。そのシルエットはまるでデロリアンのようで、新たな開発思想に基づいて開発されたというエキサイティングなモデルである。数字だけで作られた、合理的で無味乾燥したモデルではない。

一方、ヒョンデ傘下のキアは、2025年に商用車市場に参入する計画を発表した。その急先鋒として、PV5という中型バンが披露されている。キアの成長が減速する兆しはない。

CES 2024におけるヒョンデ・グループの目玉展示は、四輪車だけではない。エアモビリティ部門スーパーナル(Supernal)は、都市部における空飛ぶタクシー「S-A2」を公開した。ヒョンデのEV用バッテリーとモーターを使用し、さらに同グループのデザイン責任者であるルク・ドンカーヴォルケ氏がスタイリングを手掛けるなど、四輪車との関連も深い。

ドンカーヴォルケ氏は、「CESの素晴らしいところは、新製品を売ることを目的とした単なるコマーシャル・ショーではないことです。CESは革新的なショーであり、我々が何をしているのか、環境はどうなるのかを展望するものです。クルマや競争力だけではなく、デザイン能力と、未来に向けた会社の適性が問われます。自動車の世界から革新的な世界へ、未来に向かって進んでいくのがとても楽しみです」と語った。

同氏の言葉は、フォルクスワーゲンには届いていないらしい。フォルクスワーゲンは改良新型ゴルフのプロトタイプを出展し、生成AI「ChatGPT」を導入した新しい音声アシスタントの利便性と機能性を強調した。それが公道でどれほど役立つかは、まだ定かではない。

BMWメルセデス・ベンツもCESで存在感を示していた。メルセデスはインフォテインメント・ソフトウェアにますます多くの機能を追加しており、BMWは運転中に装着するARグラスを公開した。後者は、ドライバーの前方視界にナビ案内などが映し出されるというもの。確かに先進的ではあるが、このようなグラスが将来スマートフォンのように普及するというBMWの主張は、少し飛躍していると感じた。グーグル・グラスが脳裏をよぎる。

CESに出展した自動車ブランドとしては、電動ピックアップトラックのコンセプトを発表したベトナムの新興企業ビンファストや、空も飛べる六輪ミニバンを発表してCES会場を盛り上げた中国シャオペンなどがある。

しかし、CESで話題の中心となったのは、モービルアイやルミナーなどのセンサーやOS(オペレーティング・システム)である。華やかさはないが、特に自動運転技術の開発において重要な意味を持つ。クルマが空を飛ぶかどうかよりも、はるかに重要だ。

自動車の世界は大規模かつ急速に変化しているが、CESほどそれが明確な場はない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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