「速度の2乗」で増える空気抵抗 アリエル・アトム 4 効果絶大のスクリーン トンネルでテスト

公開 : 2024.02.26 19:05

速度に対して約2乗で増える空気抵抗 廃線になった鉄道用トンネルを改修した2.7kmの空力テスト施設 アリエルの新アイテム開発へ、英国編集部が同席

速度に対して約2乗で増える空気抵抗

クルマにとって、空気抵抗を抑えることは極めて重要だ。一般的なモデルの場合、走行速度が65km/hを超えた辺りから、パワートレインが対応する最大の負荷要因は空気になる。機械的な内部抵抗や転がり抵抗が占める割合は、小さくなっていく。

さらに空気抵抗は、速度に対して約2乗で増える。速度が2倍になったら、空気抵抗は約4倍に増える。3倍まで加速したら、約9倍に増加する。

アリエル・アトム 4(英国仕様)
アリエル・アトム 4(英国仕様)

65km/hで走るのに40psが必要だとした場合、195km/hで走るには約360psが必要だということ。これは単純計算ではあるものの、空力特性の改善へ多額の予算が割かれることを納得させる物理の法則だ。

ただし、高速走行時には安定性も求められる。理想的なハイスピード・コーナリングには、ダウンフォースが必要になる。ラジエターやブレーキへ、適切に空気を当てることも不可欠だ。

これらを求めると、大抵は空気抵抗が増える。目に見えない空気を操り、理想的な気流を得るため、開発へ時間が割かれることになる。

こんな悩ましい課題解決をアシストしてくれる施設が、グレートブリテン島の中部、ノーサンプトンシャー州にある「ケイツビー・トンネル」。ここでアリエルの技術者チームは、最新のアトム4を持ち込んで、設計の仕上がりをテストするという。

光栄なことに、テストドライバーを兼ねた取材として、AUTOCARをお誘いいただいた。お断りする理由などない。

小さなスクリーンの有効性を実感

今回のテスト対象は、新しく設計されたコクピットの保護スクリーン。小さなフロントガラスだ。アトム 4の動力性能の優秀さは、AUTOCARの読者ならご存知だろう。

高速域では、ドライバーの保護が欠かせない。今回のテストは、新しいスクリーンが生む空気抵抗やダウンフォースを、確かめることが目的だという。

アリエル・アトム 4のテスト方法へ耳を傾ける参加者一同
アリエル・アトム 4のテスト方法へ耳を傾ける参加者一同

現場に立ち会ったのは、アリエルの創業者であるサイモン・ソーンダース氏と、同社の技術者数名、ケイツビー・トンネルを管理するポール・ロバーツ氏。そこへ英国編集部のマット・プライアーと、筆者、スティーブ・クロプリーが加わった。

テスト方法は、プライアーと筆者、技術者の3名が、アリエル 4をトンネル内で順に運転。スクリーンを付けた状態と外した状態で96km/hまで加速し、その後ニュートラルに入れて32km/hへ落ちるまで惰性で流すというもの。

これを繰り返し、データロガーで速度変化などを記録。コンピュータ解析で、影響を評価するそうだ。

プライアーと筆者は、アリエルの前方に備わる小さなエアダムが、ドライバーの顔へ当たる気流を抑えるのに効果的だと、経験で知っている。アトム 2が現役だった1990年代から、スクリーンのありがたみを実感してきた。

最初のランで、新しいスクリーンの有効性も即座に理解した。これがなければ、メガネをかけていても、96km/h下でドライバーは目を開けていられない。取り付けた状態なら、高速道路で家路につくことも可能そうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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