「3車3様」の楽しませ方 優勝は? 911 GT3 RS vs アトム 4R vs ウラカン・ステラート BBDC 2023(7)

公開 : 2024.01.03 13:45

AUTOCARの年末恒例、ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権 2023年に試乗したクルマで、最高のドライビング体験を与える1台は? 11台を一挙比較

宝刀といえるシビック・タイプR由来の4発ターボ

アリエル・アトム 4Rから降りるマット・プライヤーが、口を滑らせる。「メカニズムとの結びつきが素晴らしい。快適性には大きな妥協がありますが、2023年のベスト・ドライバーズカーで間違いないでしょう」

それはどうだろう。責め立てて運転するほど、高揚感を得られるとしても。

アリエル・アトム 4R(英国仕様)
アリエル・アトム 4R(英国仕様)

ステアリングにアシストは備わらないが、そのぶん感触は濃厚。脚力は求められるが、強力で漸進的なブレーキにはABSが備わり安心感も高い。すべての操作へ、鮮明で豊かなフィードバックが返ってくる。その次の挙動を、正確に予想できる。

コーナリング・スタンスは、僅かなテールスライドを好むタイプ。リアタイヤを軽く滑らせながら、脱出速度を高めていける。

そして、アトム 4Rの宝刀といえるのが、タービンの悲鳴を盛大に響かせる、ホンダ・シビック・タイプR譲りの4気筒ターボエンジン。チューニングを受け、従来より滑らかなパワーデリバリーを叶えている。

トラクション・コントロールの効きを1番弱めても、突然沸き立つ太いトルクで手に負えなくなることはなくなった。濡れたアスファルト上でも、高い精度で求めるパワーを引き出せる。

路面が乾いていれば、目覚ましく速い。クワイフ社製のシフトパドルを弾くと、変速は瞬時に完了。狂気の勢いでエネルギーが路面へ伝わり、ストレートを飲み込んでいく。

一挙手一投足 全部が気に入った

ボディパネルがないだけに、公道での妥協は大きい。疲労度も高い。服装から整える必要がある。それでも、控えめな速度でも、ドライバーの魂を激しく鼓舞する。

一見すると、近づき難いワイルドさがある。ところが常識的な速度でも、ドライバーとマシン、包まれる環境との結びつきを堪能しながら、運転へ没頭できる。

ブラックのアリエル・アトム 4Rと、オレンジのランボルギーニ・ウラカン・ステラート
ブラックのアリエル・アトム 4Rと、オレンジのランボルギーニウラカン・ステラート

路面へ追従するように、フロントタイヤが上下する。サスペンションの仕事を目で楽しめるのも、アトム 4Rならではだ。

対するランボルギーニ・ウラカン・ステラートも、淡々と能力を発揮するポルシェ911 GT RSや、高精度なアトム 4Rとは異なるスタイルで、ドライビングの喜びに浸らせてくれた。少し誇張気味な見た目以上に。

「ランボルギーニの進歩ぶりを、如実に表しています。最高のクルマといっても良いかも。恐らく、自分がこれまで運転してきた、すべてのモデルの中で」。先の発言を撤回するように、プライヤーが興奮気味に口を開く。

そして続ける。「一挙手一投足、コミュニケーション力、全部が気に入りました。エンジンも最高!」

彼の主張は正しい。スノードニア国立公園のワインディングを少し走らせただけで、ウラカン・ステラートの壮大ぶりを筆者もひしひしと感じた。

スーパーカーは、恐怖心を覚えるほどパワフルで、手のひらに汗をかくほどドラマチックであるべきかもしれない。それも、魅力の1つになるだろう。だがウラカン・ステラートは、異なる方法でわれわれを魅了した。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 撮影

    ジャック・ハリソン

    JACK HARRISON

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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