ベースは極上2002 クーペ BMWガルミッシュ(2) 現代のカロッツエリアが見事に再現

公開 : 2024.05.05 17:46

依頼先はミケロッティからガンディーニへ ベルトーネが独断で進めたガルミッシュ BMWの元デザイナー、サクスティ氏が角ばったキドニーグリルの歴史を振り返る

オリジナルのBMW 2002をデータ化

コンセプトカーのガルミッシュを復元することを考えた、BMWのアドリアン・ファン・ホーイドンク氏は、真っ先にトリノを訪問。当時79歳だったマルチェロ・ガンディーニ氏へ、ガルミッシュの再現に反対するか、意志を確認した。

BMWが再び注目したことへ、驚いたそうだ。しかし、彼は喜んで協力を申し出た。

BMWガルミッシュ・リクリエーション(2019年)
BMWガルミッシュ・リクリエーション(2019年)

2018年7月、BMWのデザイン・エンジニア、セバスチャン・ヘプフル氏へ、数枚の写真とベルトーネ社に残るデザインスケッチが渡された。彼が生まれる以前に作られたプロトタイプを、現代の技術で再び設計するという、重要な任務が任された。

「初めに取り組んだのは、オリジナルのBMW 2002のデータ化。写真に合わせてシャシーとサスペンションの位置関係を確認するため、デジタルモデルを作っています」。とセバスチャンが振り返る。

「BMWクラシックを通じて、レストアされたベース車両を準備しました」。まっさらな2002がデザインスタジオへ届けられたのは、2018年10月。1970年にベルトーネが実施したように、職人の手によって、美しいクーペはバラバラにされた。

影の協力者として機能したのが、イタリア・トリノのスーパースタイル社。金属製ボディを手作業で成型することを得意とする、現代版カロッツエリアで、ガルミッシュの再現にも尽力している。イタリア人が描いたデザインを、再生する要となった。

ドアハンドルやライトは1970年代のものがベース

同社を立ち上げたのは、フランコ・パルミサーノ氏とダビデ・パルミサーノ氏、フラヴィオ・ガリツィオ氏という3名。ジョバンニ・ベルトーネ氏とヌッチョ・ベルトーネ氏がベルトーネ社を創業したように、フランコとダビデは親子だ。

既に数10年という経験を有し、フラヴィオの父はベルトーネ社で働いていた経験も持つ。金属加工に関わる技術は、次の世代へしっかり受け継がれている。

BMWガルミッシュ・リクリエーション(2019年)
BMWガルミッシュ・リクリエーション(2019年)

スーパースタイル社は、ベルトーネと同じく5か月でボディを仕上げたが、その工程はまったく異なった。「ドアハンドルやライトなどの部品は、1970年代のものをベースにする必要がありました」。課題だったことの1つを、フラヴィオが説明する。

「BMWクラシックの知見が非常に重要でした」。50年前なら、近場のディーラーを訪れ、フィアット130 クーペのヘッドライトを購入できただろう。BMW 2002のステアリングホイールも、簡単に入手できたはず。しかし、2018年には難しいことだった。

それ以上に頭を悩ませたのが、構造的な問題。ベルトーネは、2002を魅力的に見せるため、車高を落としただけでなく、ドアのヒンジを前方へ移動させていた。かなり大規模な加工が必要になった。

スーパースタイル社は、ボディパネルをすべて分離。骨格構造を新たに作り、開閉できる長いドアを据え付けている。これがなければ、クルマとしてのカタチを保てていなかっただろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

BMW ガルミッシュの前後関係

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