同じ土俵に登った2台 BMW M3 ツーリング vs ランドローバー・レンジローバー・スポーツ 後編

公開 : 2023.07.01 09:46

今まで直接は比較されなかった、M3とレンジローバー。それを叶えたツーリングとスポーツの特徴へ、英国編集部が迫ります。

英国の道路環境に理想的な高性能モデル

ランドローバーレンジローバー・スポーツのステアリングは、ジャガーにも似ている。適度な弾性と重さがあり、ラインを正確に辿れ、安定を崩さない。

確かに、路面からの情報は手のひらへ殆ど伝わってこない。とはいえ、ローレンジ付きの四輪駆動と、カイエンより50%深い河川を渡れる能力を持つことを忘れてしまうほど有能だ。

グリーンのBMW M3 ツーリングと、レッドのランドローバー・レンジローバー・スポーツ
グリーンのBMW M3 ツーリングと、レッドのランドローバー・レンジローバー・スポーツ

運転時間が長くなるほど、傷みの酷い英国の道路環境にとって、理想的な高性能モデルだという実感が湧く。よく動くサスペンションと、不足ないサイドウォールを持つタイヤ、運転席からの優れた視界に外界との隔離性が、オンロードでも存分に活きる。

ラグジュアリーなキャビンに抱かれながら、ツインターボで過給される4.4L V8ガソリンエンジンを奮い立たせる。筆者はSUVを好むわけではないが、レンジローバー・スポーツが支持される理由は充分に理解できる。

獰猛なほどパワフルではない。フルスロットル時の轟音から期待するほど、鋭くはない。トラクションは極めて高く、ボディの質量は大きく、シャシーの電子制御は安定性を最優先する。それでも、間違いなく運転は面白い。

乗り心地は上質で、操縦性は正確。クルマ好きの気持ちをしっかり満たしてくれる。レンジローバー・スポーツが誕生したことへ感謝したくなる。

慣性の小ささと爽快な敏捷性を実感

キドニーグリルがこれ以上ないほど拡大した、G80型BMW M3 ツーリングへ乗り換える。レンジローバー・スポーツより車重は565kgも軽い。アクセルペダルを踏み込んだ瞬間から、慣性の小ささと爽快な敏捷性を実感できる。

ひたすら気持ちイイ。最も優しいドライブモードでも、キビキビと小気味イイ。滑らかに路面へ追従し、雨で多少濡れていても、不安を感じさせない身軽さで回頭していく。

グリーンのBMW M3 ツーリングと、レッドのランドローバー・レンジローバー・スポーツ
グリーンのBMW M3 ツーリングと、レッドのランドローバー・レンジローバー・スポーツ

Dセグメントのクラスリーダーといえるステーションワゴンをベースに、高度にチューニングされたという事実が、筆者の気持ちをくすぐる。能力の高さは疑いようがない。

それでも、殆どの時間を過ごすであろう、一般道や高速道路へも見事に対応する。自分の身の回りにある不要なものを売却してでも、M3 ツーリングを手に入れたいと思わせるほど、筆者を夢中にさせる。

レンジローバー・スポーツも、万能選手として極めて水準は高い。雨がちな道を650km程走る途中、家畜を運搬するトラックの後ろで、その快適性へ酷く感心させられた。

座面が高めのドライビングポジションは、背もたれが倒れ気味で好ましい。JLR最新の機能的なインフォテインメント・システムが稼働する、13.1インチ・タッチモニターが据えられたダッシュボードも美しい。M3 ツーリングでは叶えがたい、幸福感がある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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