もうひとつ頼れるのは55.3kg-mのトルクだ。スタビリティ・コントロールは完全に解除でき、このトルクを存分に解き放ってやると思いのほか愉快なクルマであることに気づく。

ただし、やはりマスタングはコーナーごとに完璧なラインをトレースするようなクルマではない。パンケーキにあたたかいメープル・シロップをたっぷりかけるように、V8エンジンを思いっきり回して楽しむクルマだ。

エンジンを全開に回してやれば、同価格帯のほとんどのライバルよりも速く走ることができる。0-100km/h加速は5.0秒でこなし、161km/hには12秒以下で到達する。

ただ、もっとも楽しいのはツーリング・モードでふらりとドライブした時だ。2500〜4000rpmまでの音質はV8ならではのもの。快感そのものである。

マニュアル・ギアボックスはショートでずっしりとしている。シフト・ゲージは狭いものの、ゲートにカチリと吸いこまれる。シフト・チェンジ自体が楽しくなる。