フォード・マスタング GTD(2) 826ps活かせるモータースポーツ直系 想像し難い積極性

公開 : 2026.01.16 18:10

ル・マンGT3マシンの公道版といえる、マスタング GTD スーパーチャージドV8で826ps 製造はマルチマティック社 大きなFRモデルでは想像できない積極性 UK編集部が北米で試乗

速度が増すほど仕事するアクティブダンパー

アメリカの道は、どこも真っ直ぐで退屈というのは誤解。彼方まで見通せるインターステートもあるが、カリフォルニア州にはスポーツカーにうってつけのワインディングもある。パームズ・トゥ・パインズ・シーニック・ハイウェイもその1つ。

交通量は少なく、路面はほぼ滑らか。素晴らしい絶景も楽しめる。スーパーチャージドV8エンジンが載ったクーペを走らせるなら、こんな場所が良い。

フォード・マスタング GTD(北米仕様)
フォードマスタング GTD(北米仕様)    ウェブ・ブランド(Webb Bland)

そこまでの道中も、フォード・マスタング GTDは印象深い。市街地では確かに荒っぽいが、速度が増すほど高度なアクティブダンパーが仕事を始める。安定性は高く、ギア比はロングで、まくし立てられ続けるような印象はない。

バックミラーには、リアサスペンションのメカが映る。ダウンフォースを優先するモードの場合、リアウイングで後方視界は真っ黒。最高速度は、325km/hに達するという。燃費は聞かない方がいい。3.5km/Lくらいだろう。

AMG GT ブラックシリーズと似ている?

このクルマへ似ているモデルを想像してみる。真っ先に思い浮かんだのは、メルセデスAMG GT ブラックシリーズ。フラットプレーンクランクで、サウンドはやや単調だが。マスタング GTDの響きは、ストックカー・レーサーに似ていて、心が動かされる。

ダッシュ力は凄まじい。ステアリングホイールのパドルを何度か弾けば、理想的なギアを選べる。単なるチューニング・マスタングとは異なり、826psを実際に活用できる。レブリミッターまで、しっかり回せる。

フォード・マスタング GTD(北米仕様)
フォード・マスタング GTD(北米仕様)    ウェブ・ブランド(Webb Bland)

より本気度の高いドライブモードを選ぶと、アクセルレスポンスは一層過激に。シフトアップの度に、テールパイプで燃え残りのガソリンが爆発する。8速デュアルクラッチATは滑らかに、正確に、変速を決めてくれる。

カーボンセラミック・ブレーキは標準装備。もちろん、強烈に効く。車重は2t近いが、サーキットを激しく駆け回っても、フェードは起きないだろう。

大きなFRモデルでは想像できない積極性

操縦性は、どんなマスタングとも、多くの量産スポーツカーとも異なる。FRレイアウトの場合は特に、コーナリングでフロントノーズの動きを意識する必要がある。前方へ荷重を載せるため、ブレーキングしながらのターンインが望ましい。

しかし、50:50の重量配分と極太のフロントタイヤを持つマスタング GTDは、反応が別物。僅かにアクセルペダルを傾ければ、吸い込まれるように回頭していく。今回のようなワインディングでは、実にリズミカルで痛快だ。

フォード・マスタング GTD(北米仕様)
フォード・マスタング GTD(北米仕様)    ウェブ・ブランド(Webb Bland)

ミドシップほどではないが、このサイズのFRでは想像できない積極性がある。脱出加速時には、巨大なトルクを受けるリミテッドスリップ・デフが、ガクガクと揺れる。

ステアリングの反応も素晴らしい。手のひらへの感触は薄いものの、フロントタイヤの幅を考えれば、ある程度フィルタリングされないと余計な応力に悩まされるのではないだろうか。ワダチで進路は乱れがち。傷んだ英国の道なら、落ち着かないはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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