【見直される価値】ジュネーブモーターショー中止 決定は直前だった 出展者、怒りも

公開 : 2020.03.14 18:50

開催4日前に中止となったジュネーブモーターショーですが、出展を予定していた自動車メーカーに与えた影響にはさまざまなものがありました。一方、オンラインでの開催となったことで、改めてモーターショーの持つ価値が見直されることにもなったようです。

「不可抗力」条項発動

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、開催4日前に中止が決まったジュネーブモーターショーは、ふたたび伝統的なモーターショーの影響力低下という問題に注目を集めることとなった。

先週自動車メーカー各社はジュネーブに向けて投じて来た莫大なコストを回収できるかどうかの調査を始めているが、主催者による中止の判断が土壇場となったことに怒りを露わにするものもいる。

自働車メーカー各社はモーターショーに多額のコストを掛けている。
自働車メーカー各社はモーターショーに多額のコストを掛けている。

ある大手メーカー関係者は匿名を条件に、総額600万ユーロ(7億650万円)のコストのうち、回収できるのはほんのわずかでしかないと考えていることを明かしてくれた。

この人物は「おそらくこのコストはわれわれが負担するしかないでしょう」と話しつつ、主催者は「もっと早く決断するべきでした」と指摘している。

メーカー各社が抱える不満のひとつが、参加者1000人以上を見込むすべてのイベントをスイス政府が禁止したことで、実質的にジュネーブモーターショー開催が不可能となった金曜日になるまで、主催者が判断を先延ばしにしていたことだった。

このスイス政府の決定により「不可抗力」条項が発動したことで、各メーカーは主催者に契約債務の不履行を訴える権利を失っている。

記者会見の場で主催者側は、参加予定だった各社に対する金銭補償は行わないつもりであることを明らかにしている。

「もっと早く中止の決断をすべきだったにもかかわらず、まるで彼らはこの政府の決定を待っていたかのようです」と、あるメーカーのCEOも匿名を条件に語っている。

さらに、こうした経緯は保険の適用も難しくしているのだ。

モーターショーの地盤沈下

「中止の判断をしたものの、賠償責任を負わなくて済むのですから、主催者側は笑いが止まらないでしょう」と、こちらも匿名を希望するあるメーカー幹部は話している。

「モーターショーの地盤沈下が叫ばれているなか、本来であれば彼らは可能な限り自動車メーカーの役に立つことをしなければならないはずですが、その代わりにまったく逆のことをしたのです」

ジュネーブではショーの中止とともに、主催者によって「不可抗力」条項の発動が宣言された。
ジュネーブではショーの中止とともに、主催者によって「不可抗力」条項の発動が宣言された。

ジュネーブ中止のはるか以前から、自動車メーカー各社はモーターショーに替わる、より効果的な宣伝機会というものを求めるようになっている。

大手自動車メーカーが存在しないスイスは中立的だという理由もあり、伝統的に多くのメーカーが好んで参加してきたジュネーブでさえ、今年はフォードプジョー日産シトロエンボルボ、さらにはミニの各ブランドが出展しないという事態に見舞われていた。

「モーターショーは全般的に凋落傾向にあります」と、調査会社LMCオートモーティブでトップを務めるピート・ケリーは話す。

「すべてのモーターショーが出展メーカーの減少に見舞われており、自動車メーカー各社ではこうしたショーだけではなく、さまざまなイベントにもコストを費やすようになって来ています。以前のような状態に戻るとはとても思えません」

メーカー各社は新たなイベントの開催に踏み出している。

例えばフォードは、マスタング・マッハEとその他の電動化モデルのプロモーションのため、2月のロンドンでのお披露目を皮切りに、英国内100箇所でゴー・エレクトリック・ロードショーと言う名のイベントを開催している。

「欧州フォードではわれわれの新たなモデルやテクノロジー、そしてサービスをより多様な方法でご紹介すべく、独自イベントの開催にますます注力するようになっています」と、フォードは話す。

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