【カーシェア投資】突然の事業停止 240台超の「高級車」敷地にすし詰め 被害者に共通点 今すべきことは

公開 : 2020.10.21 05:50  更新 : 2022.03.25 18:51

事故やトラブル時の保険にも不思議が

もう1つ、契約内容で不思議なのはシェア車両の自動車保険である。

一般的に、個人間カーシェアでは借りる側が、「1DAY保険」(三井住友海上)などの「1日自動車保険」に加入する。独自の1日自動車保険への加入を義務付けているカーシェア会社もある。

借りた側が事故を起こせば、もちろんその1日自動車保険で補償される。車両オーナーの保険を使って修理することなど通常はありえない。

しかし、S社は投資者が自分の名義で保険契約をしており、筆者が聞いた20名の投資者たち全員が2年または3年契約の自動車保険だった。

6等級(新規)スタート&車両保険500万円ともなれば保険料だけで毎月2〜3万円、3年間で80〜90万円と非常に高額になる。(保険料もローン料金と同様にS社が投資者の口座に入金し、毎月、保険料として投資者の口座から引き落とされる)

さらに、カーシェア車両でありながら、年齢条件がついている(35歳以上)のも不思議だ。

とはいえ、クルマの所有経験がない投資者は自動車保険の仕組みもよくわかっていないようで、
「普通個人間カーシェアでは、借りた側が1日保険などに入るんですよ」と伝えると驚いていた。

なお、S社の事業停止が発表されてから、少しでも負担を減らそうと高額(1か月2〜3万円)な保険を解約し、ネット型の安い保険に乗り換える人が急増。

急に解約が増えたこともあって、保険会社が調査に入っているとの情報もある。

中には車両の返却が始まっている人も

S社が事業停止を発表して10日が経過した。運営側から投資者のところには一方的なお詫びメールしか届いていないようだが、実は複数の関係者や被害者有志によってシェア車両の返却が各地で始まっている。

大阪に住むNさんは、自身が契約したレクサスLSを探し出し、取り戻すことに成功した。

「大阪市内にも多くの被害者がいて、皆さん、各地の駐車場に停めてあるクルマを探し回っていました」

「その際に、大阪市内のコインパーキングに停められていることがわかりました」

「カギはS社の元アルバイト(現在は解雇されている)の男性と関係者を通じて受け取りました。約1週間、そこに停めてあったようです」

「1週間分の駐車代金を支払ってクルマを出し、自宅まで乗って帰ってきました。急に高級車を自宅に置くとなると、近所の目が気になりますね(苦笑)」

ちなみに、クルマが返却されたからと言って、すぐに売却(名義変更)することはできない。

これらの車両は所有者がローン会社、使用者が投資者本人となっているため、ローンの返済が終わらない限りは売却も不可能となる。

もちろん、返済額を上回る価格で買い取ってくれる業者でもいれば万々歳だが、もともとがオーバーローン気味(実際の車両価値より大幅に高い価格でローンを組むこと)なのでそれも厳しいだろう。

投資者たちは、いま何をすべきなのか

まずは、デマや他人の言動に惑わされることなく、自分自身で正しい情報を入手して行動するということだ。

クルマの登録や自動車保険に関する正しい知識を持たない人どうしで間違った情報を共有していることも少なくない。

例えば、保険の解約1つとっても、「解約を申し出たけど所有者じゃないので、断られた人がいるらしい」「カーシェア車両の保険契約は違法だから、保険会社に知れたら更なる責務を負うことになるから解約しない」などなど。

推測で適当なことを言う人もいるので、恐れることなく、保険会社に相談すべし。

また、都内や埼玉県内の警察署には多数の被害者が詰めかけているようだが、詐欺事件として確定していない以上、被害届が受理されることは現状では難しい。

ひとまず、法テラスや国民生活センターなど無料で相談できる公的機関に相談することが現状ではベストな選択と言えるだろう。

記事に関わった人々

  • 加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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