【カーシェア投資】突然の事業停止 240台超の「高級車」敷地にすし詰め 被害者に共通点 今すべきことは

公開 : 2020.10.21 05:50  更新 : 2022.03.25 18:51

AUTOCARが伝えた後、多くのメディアでも報道されはじめた「高級カーシェア投資」会社の破産を中心に広がる波紋。20代から主婦まで、クルマに詳しくない人が苦しむことになりました。今すべきことまで考えました。

240台超の高級車、すし詰め状態

text:Kumiko Kato(加藤久美子)

先日AUTOCAR JAPANが伝えた、S社による詐欺まがいの行為に関する報道が増えてきた。

その行為とは
1、投資者に実車両販売価格の2〜3倍でローンを組ませて、
2、投資者名義(車検証上の使用者名義)でクルマを購入&登録
3、個人間カーシェア専門車という形でS社が運用する
というもの。

通称「昭和カートン」と呼ばれる埼玉県川口市内にある駐車場。カーシェア車両が多数置いてあるとされる。
通称「昭和カートン」と呼ばれる埼玉県川口市内にある駐車場。カーシェア車両が多数置いてあるとされる。    加藤博人

車両は手元になく、投資者がその車両を使うことはもちろんできない。

投資者には契約時に車両代金の1割が振り込まれる。毎月のローン代+保険代はS社から振り込まれて、1か月1万円程度の報酬を受け取る。7年後ローン完済時にはS社がその車を100万円で買い取り投資者に入金するという約束だった。

しかし、10月8~9日にS社の会長K氏が実名で投資者にメッセージを送り、事業停止を発表した。

投資者の多くは多額の負債を抱えることになり、ローンの名義貸しや車庫飛ばしが違法であることも知らなかった。

数多くの情報提供があり、それらの情報をもとにカーシェア車両が多数置いてあるとされる埼玉県内の駐車場に向かった。

すでにSNSなどでその駐車場の写真も投稿されていたが、一部を写した写真が多く、全体像がつかみにくかった。

通称「昭和カートン」と呼ばれるその駐車場は実際に埼玉県川口市内にあった。うわさ通りかなりの台数が停まっている。見たところ外観が大きく損傷したクルマは見当たらない。

その場所には本当に多数の高級車が置いてあった。

ドイツ車やレクサスが多いが、ジャガーXJ、フォードエクスプローラージープラングラーの姿も。

レクサス以外の国産車ではトヨタアルファードやヴェルファイヤなども。

昭和カートンにあるのは約240台で、この周辺にもいくつか車両置き場所があり、合計するとこのエリアだけで300台以上が停まっている。

クルマたちは、いつからここに停まっているのか。近所の住民は「この半年で急に増え始めた」と教えてくれた。

川口市内の駐車場にはS社の事業停止が発表されてから、クルマを探しに来た人が急増している。

事業停止が発表されたその日、パトカーに乗った警察官と共に自分のクルマを探しに来た人も数名いたという。

20代や主婦 詳しくない人が狙われた

S社による詐欺まがいの行為で被害を訴えているのは20代の若者や30〜40代主婦などあまりクルマのことを知らない人が多いように思える。

なぜか。

最初に情報提供してくれたAさんとS社、カーシェア利用者の関係。
最初に情報提供してくれたAさんとS社、カーシェア利用者の関係。    AUTOCAR JAPAN編集部

簡単な話、クルマが好きというわけではなく、投資目的の人が多数だからだ。

クルマや家を購入したこともないから「ローン枠」も十分にある。中には1人で2台、3台と契約している人もいる。

一方、別の楽しみを見出していた人もいる。1人で3台契約しているJさんは、「S社の投資メンバーになると高級車が半額で(1日5000〜6000円)シェアできるんです。わたしとしては月ごとの配当よりも、大きな魅力でした」という。

なお、このサービスが始まった当初(2018年)は、購入したクルマと一緒に写真に納まったという投資者も多い。

S社のカーシェア予約サイトに掲載するためだ。現在もS社のサイトは閲覧可能。

(さすがに予約は受け付けていないが)そこには、「ジャガーXJ H・S会社員」や「BMW 420iクーペMスポーツ Y・N会社員」など顔出しアリの人、顔部分が見えない人、クルマだけの写真などいろいろなパターンで紹介されている。

しかし今年に入ってから契約した人の多くは、「クルマは全く見ていない」「車検証のコピーなどもない」という。

もちろん、実車と写真を撮った人も含め、車検証の使用者名義人でありながら、合いかぎなども渡されていない。

車名と年式だけは、手元に送られてきた保険証券で確認できるものの、そのクルマが不動車なのかどうかもわからず走行距離も知らされず契約しているのだ。

記事に関わった人々

  • 加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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