ミドシップ・スポーツ比較試乗 ロータス・エミーラ x ポルシェ718ケイマン 精鋭を超えるか? 前編

公開 : 2022.07.02 09:45

ロータスの新世代となるエミーラが登場。英国編集部が同クラスの精鋭、718ケイマンとの比較で実力を評価します。

再生計画で進むモデルレンジの拡大

グレートブリテン島の北東部、ノーサンバーランド州の放牧地で、羊がゆっくりと草をはんでいる。筆者は、真新しいロータスのミドシップ・スポーツカーエミーラでその横を通り過ぎる。見た目通り、素晴らしい印象を残してくれた。

コーナーへ飛び込むと、路面を舐めるように旋回していく。真っ赤に塗られたロータスが、にぎやかなサウンドを放ちながら緑の原野を進む。アスファルトが大好物のようだ。

レッドのロータス・エミーラ V6 ファーストエディションと、グリーンのポルシェ718ケイマン GTS 4.0
レッドのロータス・エミーラ V6 ファーストエディションと、グリーンのポルシェ718ケイマン GTS 4.0

特別自然公園のノースペニンズ地域には、広大な自然が残されている。言葉にならないほど美しい景色が続く。エミーラは、リボンのように伸びる1本の道を縫っていく。

近年までのロータスは、負のスパイラルといえる問題に悩まされてきた。経営者が入れ替わるなかで、新たな方向性を模索し、開発資金に飢えてきた。軽さとシンプルさという独自性は保っていたが、少々時代遅れのモデルラインナップに頼ってもいた。

間違いなく、新たなテコ入れが必要だった。そこに手を差し伸べたのが中国の巨人、ジーリー・ホールディングスだ。経営への介入から5年間で、1億ポンド(167億円)という設備投資が行われた。

思い切った再生計画が立案され、モデルレンジの拡大が進められている。2022年の後半には、バッテリーEV(BEV)のスーパーカー、エヴァイヤも完成する予定にある。中国の工場で製造される、BEVのSUVも2025年には姿を表すという。

エントリーモデルとなる、BEVのスポーツカーも控えている。サイズの大きい、グランドツアラーも。

アルミ押出材シャシーに3.5L V6スーチャー

ロータスは、世界中のスポーツカー・ファンの要望を聞き入れようとしている。自らの作るクマを、最高にしようと励んでいる。長い停滞期間が続いたものの、思い切った変化を受け入れた結果、正のスパイラルが生まれたようだ。

新しいブランドを象徴するものとして、橋渡しとなるモデルが早期に必要だったのかもしれない。今後も確かに生き残るために。

ロータス・エミーラ V6 ファーストエディション(英国仕様)
ロータス・エミーラ V6 ファーストエディション(英国仕様)

ロータスは、自社最後となる内燃エンジンのスポーツカー、エミーラはまったく新しいと主張する。だが誤解を恐れなければ、エヴォーラの大幅なバージョンアップだと捉えられると、筆者は考えている。

アルミニウムの押出成形材を接着したシャシーは、新設計だとはいえ、エヴォーラの再設計版ともいえる。グレートブリテン島の東、ノーフォーク・ヘセルに構える本社から遠くない場所へ用意された新工場で組み立てられるが、ホイールベースは同じだ。

左右のタイヤの間隔、トレッドは違うが、ミドシップされるトヨタ由来の3.5L V6スーパーチャージド・ガソリンエンジンも、基本的にはエヴォーラのアップデート仕様。6速MTも同様。技術的なスペックを見ると、筆者の考えは否定できないだろう。

だがしかし、エミーラは間違いなくこれまでとは違う。スタイリングや製造品質だけではない。今後の道筋を指し示す存在としても相応しい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ミドシップ・スポーツ比較試乗 ロータス・エミーラ x ポルシェ718ケイマン 精鋭を超えるか?の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

ロータスの人気画像