【実際に購入レポート】ポルシェ・タイカンの長期テスト(9) 充電事情の現状と将来を考える

公開 : 2022.10.18 16:45  更新 : 2022.10.20 10:28

普及のカギは「夜間充電」 でも……

この状況で、さらにEVが普及すれば、充電器の数が足りなくなるのは明白である。

かといって、急速充電器を導入するには、90kWhのもので1基6000~7000万円もし、ディーラーなどならともかく、一旅館が投資をする費用としてはとてもじゃないが無理である。

ある旅館に設置されていた6kWhの充電器。1000円で利用できる。
ある旅館に設置されていた6kWhの充電器。1000円で利用できる。    笹本健次

EVの台数が増えてくれば、部屋の予約とともに、充電器の予約も増えてくるので充電器の管理も必要となり、現状の多くの旅館のように施設側はノータッチで勝手に使ってくれ、という訳もいかない。

そもそも、10~20部屋の小規模旅館ならまだしも、50~200室ぐらいの大型の旅館・ホテルでは、それぞれのお客さまの充電希望のすべてに対応するのはほぼ不可能だ。

都市型の大型ホテルのように資本力のある所では急速充電器の装備が可能であろうが、それ以外の施設では可能な限り普通充電器を増やすことしか手が無い。

とすれば、将来を見据えた現状でのベストの方法は、家庭で据え付けると同様のシンプルな6kWhの充電器を備え付け、宿側で管理をして、使用するには、1000円とか2000円とかで時間を区切って使い放題にするのとともに、対応できないお客さまには、高速道路などやデイーラーなどの急速充電器の数を90-150kWhで増やすことを併用してゆくしかないだろうと思う。

こと充電に関する限り、旅館ホテルは極めて特殊な状況であり、今から、普及が進んだ将来を見据えて、全国レベルで省庁も一体となって、充電ノウハウの解決方法を見出していかなければ、と思っている。

現在、マンションなどの充電器の設置を巡り、アプリを使ったシステムを導入する動きができてきているが、マンションなどの場合は、使用する人がある程度特定されているのでコミュニティ内での同意がなされれば問題はないだろうが、宿泊施設の場合は、不特定多数となるので、各施設ごとのアプリの乱立は避けなければならないと思う。

10月11日から全国旅行支援が始まり、宿泊施設は多くの観光客で賑わっているが、これが、全部EV使用になったらと思うと、いささか寒気がする。

一刻も早く、旅館・ホテルの充電レギュレーションができれば、と思うこの頃である。

記事に関わった人々

  • 執筆

    笹本健次

    Kenji Sasamoto

    1949年生まれ。趣味の出版社ネコ・パブリッシングのファウンダー。2011年9月よりAUTOCAR JAPANの編集長を務める。出版業界での長期にわたる豊富な経験を持ち、得意とする分野も自動車のみならず鉄道、モーターサイクルなど多岐にわたる。フェラーリ、ポルシェのファナティックとしても有名。

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