中古車対決! ポルシェ・ケイマンS vs ランボルギーニ・ガヤルド

公開 : 2014.09.01 23:50  更新 : 2017.05.29 19:33

ただしスイッチの類はポルシェの方に軍配があがる。ケイマンの場合、計器類はつるりとしたデザインで視認性も非常に高く、どのスイッチも押し心地はカチリとして安心感がある。その反面ガヤルドのインパネは既にデビューからかなりの時が経ってしまったと感じさせられる。トグル・スイッチを室内に設えたのはなかなか興味深いが、赤く光るLEDは今となっては時代遅れだし、そもそもアウディで見たことのあるボタンをそのままスーパーカーにスワップしたことは自体が興醒めだ。

まず最初に走らせたのはケイマンS。トラック・コースに入って最初に感心したのはバケットシートのホールド性の高さである。調整幅の小ささとパッドの薄さのせいで快適とは言えないのだが、ドライビング・ポジションそのものには舌鼓を打つほかない。人間工学的にこれより上を見つけることは難しいだろう。

また1分経たないうちに、お金で買うことのできる最上のマニュアル・トランスミッションであることにも気づく。メカニカル・フィールは極小まで抑えられ、シフトノブは吸い込まれるように各ギアへヌルリと入っていく。やみつきになる感触とはまさにこの事である。

カーボン・セラミック・ブレーキの食付きはかなりのもの。したがってヒール&トウを試みる際には、ややつま先の力を抜いてやる必要がある。しかしダウン・シフトを行う際に自動的に回転数を合わせてくれる機能を使えば(スポーツクロノ・パッケージのスポーツ・プラス・モード時に有効)、厄介なペダル操作をせずとも適切な回転数を維持しながらダウン・シフトが可能。またこれは凡庸で眠たくなるような通勤路でも楽しませてくれる重要な機能とも言える。

£1,530(26万4千円)のスポーツ・エグゾーストも筆者のお気に入りのひとつ。演出過剰と言えばそこまでだけれど、特にスポーツモードでの勇ましい排気音や弾けるようなバックファイヤーの音を耳にすれば、どんなオーナーでも ’その気’ になれることは間違いない。ノーマルモードでもフラット6の奏でる音は胸がすく。嫋やかな回転上昇はエンターテイメントと呼ぶに値する仕上がりだ。

ケイマンSの速さにはある種の賢さがある。ガスペダルを強く踏み込み、速いペースでアタックすれば、スポーツクロノ・パッケージに含まれるトランスミッション・マウントに生ずる不要な振動を制振してくれる機能のおかげで安定感も高いし、引き締まったシャシーもより高密度な感覚を与えてくれる。

PASMをスポーツモードにすれば、さすがにバンピーな路面ではボディの上下動は避けられないが、ノーマルモードでは非常に上質なボディ・コントロールが可能。おかげでかなりの自信をもってコーナーへと侵入することができた。ミドルコーナーでアクセルを床まで踏みつければ、LSDがアウト側の車輪にかなり強烈なパワー伝達をするが、トルク・ベクタリングがイン側の後輪にブレーキを掛けてくれるおかげで回頭性はかなり高い。

九十九折のみならず、市街地やモーターウェイでの落ち着きも群を抜いている。ケイマンSは高次元で走行性能と扱いやすさを両立したスポーツカーなのだ。

一方ガヤルドのオープン・ゲート式のマニュアル・トランスミッションは、シフトチェンジをする度にグリスのたっぷり塗られたリンケージなどの内部構造を見ることができ、ポルシェとはまた違った楽しみがある。

5.0ℓV10エンジンはケイマンSより遥かに下の回転域から炸裂感があり、そこから7750rpmのレヴ・リミットに向けてシフト・レバーをカチリ、カチリと操作しながら一気に加速する気持ちよさは何ものにも代えがたい。

コーナーの手前でブレーキを踏めば、まずはベンチレーテッド・ディスクをもつブレーキの寛大さに無条件に身を委ねたくなる。そこで細いアクセル・ペダルをポンと踏んで回転を合わせながらギアをストンと落とすまにまに、後方からはスナイパーが狙撃でもしたかのようなバックファイヤー音が聞こえてくるのだ。痛快である。

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