最強ケイマン現る ポルシェ718ケイマンGT4 RS試乗 日常域も「強烈」

公開 : 2023.08.07 17:45

ポルシェ718ケイマンGT4 RSの試乗記です。スペックも外観も「盛々」ですが、身近な領域でも性能を感じられます。

GT3譲りの心臓を得たGT4 RS

ポルシェ718ケイマンGT4 RSを前にしてニヤッとしないクルマ好きはいないだろう。カーボン製のボンネットからスワンネック化されたリアウイングまで全身やる気の塊。これを「さらに速くして!」と持ち込まれたら、スペシャルショップも困るのではないだろうか。

「GT4」はレースカテゴリー、FIA GT4規定準拠の紋所で「RS」は最も切れ味鋭いポルシェの証である。

ポルシェ718ケイマンGT4 RS
ポルシェ718ケイマンGT4 RS

ポルシェ718ケイマンGT4 RSの魅力の核となるのは自然吸気のフラット6だ。GT4の心臓は911カレラ譲りの自然吸気&排気量アップ版(420ps)だったが、GT4 RSは排気量こそほぼ同じ4Lだが中身は別物。GT3から譲り受けた高回転型(500ps)

なので伝統に則ってドライバーの正面に据えられたレヴカウンターは9000回転からが赤く塗りつぶされている。

過給機や排気量の設定でパワーは容易にいじれるが、回転数によって稼いだそれは掛け値なしのホンモノだ。

素の718ケイマンとGT4 RSの仕様の違いはあまりに多すぎるので割愛したいところ。恐らく、モノコックシャシー以外は全て別物といっていいだろう。

ホイール1つとっても、彫刻刀で削られたようなソリッドな造形の鍛造マグネシウム&センターロック(250万円近いオプションだ!)で、お高いパーツであることがよくわかる。

素の718ケイマンより1184万円高、GT4比でも647万円高という車両価格の差異からも、GT4 RS何たるかが伝わってくるはずである。

記憶が生成するダウンフォースの幻影

室内はヴァイザッハ・パッケージのチタン製ロールケージこそ入っていないが、薄いクッションが付いたフルバケットシートが気分を盛り上げてくれる。一見MTに見える7速PDKのシフターの形状もストイックでいい。

筆者はこれまでGT4 RSを3度ドライブしている。大磯界隈、ターンパイク、そして富士スピードウェイのショートコースである。でも不思議なことに、最も凄みを感じたのはサーキットではなく大磯の公道だった。

伝統に則ってドライバーの正面に据えられたレヴカウンターは9000回転からが赤く塗りつぶされている。
伝統に則ってドライバーの正面に据えられたレヴカウンターは9000回転からが赤く塗りつぶされている。

エンジンを掛けた瞬間から盛大な音と車体を揺さぶる振動が「ただならぬ気配」を感じさせる。スロットルを踏み込むだけで盛大な吸気音と爆発的な加速がシンクロする。

高回転を試してみようとしたのだが、例え1速でも迫力があり過ぎて(いや法規的にも)リミッターにブチあてることなどできそうにない。

ブレーキもオプションのセラミックコンポジットブレーキだったので、公道レベルのスピードでは効きすぎもいいところ。たぶんマニュアルシフトだったらヒール・トゥを合わせるのが難しいはず。PDKさまさまである。

また加減速の際、縦方向の無駄な動きがないのも驚愕もので、そこに強大なダウンフォースの存在すら感じてしまう。実際はたぶん、公道レベルの車高とスピードでは体感できるほどのダウンフォースは発生しないと思うのだが、記憶の中の大きなエアダムとリアウイングがプラシーボ効果を生成する感じなのだと思う。

かくして、サーキットも走らず、ステアリングを切ることもなく、「GT4 RSとんでもない!」という概念が出来上がるのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。

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