プジョーRCZ R
公開 : 2014.03.26 19:46
その一方で、お利口エンジンとは違って高回転高負荷での振る舞いは颯爽としていて、直列4気筒らしい健康的なビートと共にトップエンドまで力強く噴け上がり、最後でタレてドライバーをがっかりさせることはない。要するに真っ正直なパワー志向の過給エンジンである。
これに対してシャシーは、当然ながら基準車よりも締められている。だが締めたアシに対して、クーペ化による形状変化で頑強になったリヤはともかく、フロントのサブフレーム周りの剛性が明らかに不足している。不整路ではガタピシわななくし、高G制動をかけて前サスのバンプストッパーが潰れた状態でそういう路面に遭うと、まず確実に進路は乱れがちになる。これには、235の幅はそのままに19インチ化されたバネ下の重さと融通性の欠如も一因になっているはずだ。路面が平らならざるところではRCZ Rは、それなりに暴れるのである。
荒れていないところではどうかというと、高速直進性はきちんと確保されているし、旋回性も弱アンダーの枠に落ち着いている。とは言っても、先代ゴルフのように無闇にリヤが粘るのでなく、やたらにギヤ比が速くされたステアリングを切ってハナが横に動くと、するりとリヤにスリップアングルがつく。このときの姿勢は前下がりロール軸の類ではなく、平行ロール気味に推移して安心感は濃い。
旋回負荷をさらに上げていくと、負けるのはリヤでなくロールアンダー気味に設えられているフロントで、前輪ショルダーを地面に擦り込む感覚とともにフロントが外にはらみ出す。ちなみにRCZ Rにはトルセン式LSDが装備される由だが、同様の機構を用いるホンダ・タイプR系のようにパワーオンでフロントを巻き込んでいくような動きまで作ってはくれない。踏んだとたんに舵角に関係なく真っ直ぐ突進するような手酷いアンダーステアを消す程度に働かせているのだろう。
つまりRCZ Rの操縦性は、基準車と同じく、もっぱら安定方向に重心を置いたものであり、その安定は嫌味になるほど濃くはないけれど、小回り旋回エンターテインメント性のようなものは付加されていない。そちらのほうを望むならば、もっとアシは硬くなるけれどメガーヌRSを選んだ方が得策だ。
そしてまた、シャシーが暴れ気味になるのを忌避するドライバーもやはりメガーヌRSのほうがいいと思う。RCZ Rのシャシーはあちらのように明確な頑強化は施されておらず、上記のように危いところがあるのだから。これは270psというFWD車には過大なパワーを与えて瀬戸際で成立させているクルマであり、その瀬戸際から破綻の彼岸を覗き込むことができる。ただし、覗けるのであってRCZ Rは本物の破綻にまでは至らない。抜本的な対処はせずに、そこで落としどころを見つけたあたりは流石プジョーではある。
昔の高性能車によくあった放埓なところまで含めて速いクルマに乗る愉しみなんだと、呵呵と笑える懐深いドライバーのためのこれはクルマである。
(文・沢村慎太郎 写真・高橋 学)
プジョーRCZ R
| 価格 | 540.0万円 |
| 0-100km/h | 5.9秒 |
| 最高速度 | 250km/h |
| 燃費 | 15.9km/ℓ |
| CO₂排出量 | 145g/km |
| 車両重量 | 1340kg |
| エンジン形式 | 直4DOHCターボ, 1598cc |
| エンジン配置 | フロント横置き |
| 駆動方式 | 前輪駆動 |
| 最高出力 | 270ps/6000rpm |
| 最大最大トルク | 33.7kg-m/1900rpm |
| 馬力荷重比 | 201ps/t |
| 比出力 | 169ps/ℓ |
| 圧縮比 | 9.2:1 |
| 変速機 | 6段M/T |
| 全長 | 4295mm |
| 全幅 | 1845mm |
| 全高 | 1350mm |
| ホイールベース | 2610mm |
| 燃料タンク容量 | 55ℓ |
| 荷室容量 | 309ℓ |
| サスペンション | (前)マクファーソン・ストラット |
| (後)トーションビーム | |
| ブレーキ | (前)φ380mmVディスク |
| (後)φ290mmディスク | |
| タイヤ | 235/40R19 |



