90年、4000万基のエンジンを生産 日産横浜工場で最新の生産過程を見学

公開 : 2023.11.21 20:05

・1935年よりエンジン生産をスタート 日産横浜工場
・最新の可変圧縮機構 長所と短所
・要求される精度 数々の最先端技術で解決

日産創業の地にて90年近く操業する日産横浜工場

2023年6月をもって、日産の横浜工場がエンジンの生産累計4000万基を突破した。日産横浜工場は、ちょうど川崎と横浜の中間、横浜港の北側の臨海部にある総面積約54万平方メートルの工場だ。ここは日産創業の地であり、1933年の日産創業の2年後となる1935年よりエンジン生産をスタートさせている。

グローバル企業に成長した日産だが、ルーツとなる横浜工場は、今も日産の最先端の技術を持つパイロットプラントとしての役割を担っている。日産GT-Rのエンジンを熟練工が組み立てているのも、この横浜工場であるし、日産が世界で初めて量産化した可変圧縮機構採用の「VCターボ」も、この工場から生産から始まった。

日産が世界で初めて量産化した可変圧縮機構採用の「VCターボ」
日産が世界で初めて量産化した可変圧縮機構採用の「VCターボ」    日産

また、EVであるリーフやハイブリッドのe-POWERに搭載するモーターの国内生産の4割も、この横浜工場の仕事だ。さらには、次世代バッテリーと期待される全個体電池のパイロットラインも、ここに設置される予定だという。

そんな日産の誇る横浜工場を見学する機会を得た。見学できたのは可変圧縮機構を採用する日産自慢の「VCターボ」だ。

圧縮比を変えるだけでないVCターボのメリット

「VCターボ」は、追加された複数のリンクによって、ピストンのストローク量を変化させる。同じシリンダーを使いながら、ストローク量が変わることで、圧縮比を変化させることができるのだ。また、ひとつのコントロールシャフトの動きで、すべてのシリンダーの圧縮比を変更する。

さらに、従来のエンジンではピストンが上下するときに、シリンダー内横方向に生じる力が抵抗となっていた。それがVCターボでは、ピストンにかかる横方向の力が小さくなっているため、トータルでのフリクションが低下する。

真ん中のひし形の部品が、VCターボの要となるLリンク。ピストンに続くのがUリンクで、もう片方がCリンクとなる。
真ん中のひし形の部品が、VCターボの要となるLリンク。ピストンに続くのがUリンクで、もう片方がCリンクとなる。    鈴木ケンイチ

つまり、走行状況にあわせてベストな圧縮比に変更できるだけでなく、もともとエンジン単体でのフリクションも低下しているのだ。そのため、パワフルなだけでなく、燃費的にも優れる。その結果、より小さな排気量で必要なパワーを生みだすことができる。

そうした特徴があるため、2LクラスのミッドサイズSUVであるエクストレイルに、e-POWERとはいえ、より小さな排気量の1.5LのVCターボ・エンジンが採用されているのだ。

VCターボのデメリットは生産の難しさ

走らせば利点の多いVCターボではあるけれど、当然、デメリットもある。それが生産の難しさだ。

まず、部品点数が多い。通常エンジンであれば、1シリンダーあたりに必要なリンクは1つで、ベアリングは3つ。それに対してVCターボはリンクが3つで、ベアリングが7つ。さらにコントロールシャフトを動かすために、追加してリンクが1つと、ベアリングが3つ必要となる。部品が多くなれば、当然、それぞれの部品の精度は高いものが求められ、また、バラつきも許されなくなる。

日産横浜工場のSUSミラーボアコーティングを行う生産設備の前で説明が行われた。
日産横浜工場のSUSミラーボアコーティングを行う生産設備の前で説明が行われた。    鈴木ケンイチ

また、途中のリンクにかかる荷重が通常エンジンよりも大きいため、非常に高強度の部品を使わなければならず、その加工技術も高いものが求められるのだ。さらに、ピストンのストローク量が変化するということは、シリンダー内を摺動するピストンの位置も変化する。そのため、従来の鋳鉄ライナーのシリンダーだと、消耗が大きくなりすぎるのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    鈴木ケンイチ

    Kenichi Suzuki

    1966年生まれ。中学時代は自転車、学生時代はオートバイにのめり込み、アルバイトはバイク便。一般誌/音楽誌でライターになった後も、やはり乗り物好きの本性は変わらず、気づけば自動車関連の仕事が中心に。30代はサーキット走行にのめり込み、ワンメイクレースにも参戦。愛車はマツダ・ロードスター。今の趣味はロードバイクと楽器演奏(ベース)。

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