期待を込めた辛口評価 ホンダe:Ny1へ英国試乗 eより長い航続412km  目指すべき水準は上にある

公開 : 2023.11.21 19:05

ホンダのEVの第2段となるコンパクトSUV 航続距離は最長412km 価格帯に見合う高級感を伴わない内装 英国編集部が期待を込めて辛口評価

ホンダ製バッテリーEVの第2段

ホンダは、好印象なハッチバック、eでバッテリーEV時代への1歩を踏み出した。しかし航続距離がネックとなり、販売は低調。第2段となるe:Ny1は、より賢明なパッケージングにあり、掛かる期待も大きいはず。

このe:Ny1は、近年の主力カテゴリーといえるコンパクトSUVで、航続距離も長い。バッテリーEVの普及がひと足先に進む欧州市場では、商業的な変革をもたらすと考えられている。

ホンダe:Ny1 エレガンス(英国仕様)
ホンダe:Ny1 エレガンス(英国仕様)

ボディサイズは、ハイブリッドのホンダHR-V(ヴェゼル)とほぼ同じ。駆動用モーターがフロントに1基載る前輪駆動となる。英国での価格は、4万4940ポンド(約813万円)からと少々強気。果たしてその価値は備わるのか、実際に乗って確かめてみよう。

車内は、このクラスとしては広め。前列・後列ともに、大人2名が快適に過ごせる空間が確保されている。ただし、日産アリアテスラモデルYは、同等以下の価格で、e:Ny1以上の実用性を備えていることも事実ではある。

ライバルとなるキア・ニロEVや、ヒョンデコナ・エレクトリックは、数1000ポンド(数10万円)もお手頃。それでいて、車内空間は引けを取らない。さらに、1度の充電で走れる距離はカタログ値で412kmがうたわれるが、韓国勢の方が長くもある。

ガソリン車の燃費のように、現実的にカタログ値を走れるわけではない。エアコンをオンにした時の航続距離は、305km程度まで短くなる。エネルギー効率に優れる、ヒートポンプ式エアコンはオプションだ。

内装の高級感は届かず 姿勢制御は悪くない

インテリアを眺めると、レザー張りのダッシュボードに据えられた、巨大なインフォテインメント用タッチモニターが存在感を放つ。それでも、価格帯に見合うような高級感までは備わらないだろう。

内装は、頻繁に触れる部分でも硬質なプラスティックが目立つ。テクスチャも単調で、光沢感が印象を落としている。少なくとも、ホンダらしく実際に押せるハードボタンが各所に設けられている点は、評価できる。

ホンダe:Ny1 エレガンス(英国仕様)
ホンダe:Ny1 エレガンス(英国仕様)

運転席からの視認性は良好。指定速度支援や車線維持支援など、運転支援システムも充実しているが、不要な場面で機能をオフにするのは少々面倒に感じた。

ホンダがe:Ny1で強調するポイントが、快適性や洗練性、使いやすさ。この市場をリードするテスラ・モデルYは、しっとりとした乗り心地の実現へ手を焼いているだけに、主張どおりなら強みになり得る。だが実際は、理想に届いていないと思う。

フロントシートは柔らかく、座り心地は良い。それでも、調整域はやや狭く、身体をしっかり支えてくれる印象が薄い。

乗り心地は、基本的に滑らか。しかし路面状態が悪化してくると、期待ほど衝撃を丸めてはくれない。凹凸の目立つ区間では、落ち着きが乏しくなる。そのかわり姿勢制御は引き締まり、SUVとしては悪くない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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