ソーラーパネル搭載EV ライトイヤー0 試作車へ試乗 インホイール・モーターで624km

公開 : 2022.07.24 08:25

オランダに誕生したライトイヤー社がEVを発表。近未来の自動車へ新しい方向性を示すと、英国編集部は評価します。

機能性重視のボディはCd値0.19

巨大な駆動用バッテリーを搭載したバッテリーEV(BEV)に、出力の低いソーラーパネルを搭載しても、あまり意味はなさそうに思える。だが、ライトイヤー社の考えは違う。

同社は、オランダのアイントホーフェン工科大学で、ソーラーカー・チャレンジに取り組んだチームが設立したスタートアップ企業。10年間に及ぶ研究開発の集大成として生まれたのが、今回試乗した「0」と名付けられたBEVだ。

ライトイヤー0 プロトタイプ(欧州仕様)
ライトイヤー0 プロトタイプ(欧州仕様)

ただし、大手自動車メーカーのような量産は考えられておらず、964台のみの限定。1台21万5230ポンド(約3594万円)という、高額が予定されている。ちなみにこの生産台数は、1光年(ライトイヤー)の速さが、964兆kmであることに由来する。

0のスタイリングは、かなり目立つ。あまり褒め言葉ではないが、圧縮し引き伸ばしたトヨタプリウスのようにも見えるし、飛来した宇宙船のようにも見える。フォルムよりも機能性が重視されているため、明らかに既存モデルとは雰囲気が異なる。

エネルギー効率を追求し、空気抵抗を示すCd値は0.19と低い。リアタイヤはスパッツで覆われ、フロントグリルにはアクティブ・シャッターが付き、滑らかなボディの全長は5057mmと長い。すべては、空気をスムーズに受け流すため。

サイドミラーはなく、カメラがその機能を担う。ダッシュボードの両端に、モニターが付いている。ルーフの後端はソーラーパネルで覆われており、バックミラーもモニター式となる。

728枚のソーラーセルで最大1kWを発電

まだプロトタイプながら、製造品質はとても高い。内装は、ほぼ完成状態だという。インテリアデザインには、ポールスター2のように北欧の雰囲気が漂う。

ダッシュボードはクロスで覆われており、センターにインフォテインメント用、ドライバー正面にメーター用のモニターが据えられている。実装されるソフトウエアは未完成ということで、エネルギー消費に関する情報は数字のみが映し出されていた。

ライトイヤー0 プロトタイプ(欧州仕様)
ライトイヤー0 プロトタイプ(欧州仕様)

ルーフのソーラーパネルで得られる、電力量も確認できた。理想的な天気なら、728枚のソーラーセルが最大1kWの電気を発生させるという。試乗時は0.65kWまでだったが、正午に向けて、太陽の角度とともに増えていたのが印象的だった。

駆動用バッテリーの容量は60kWhで、基本的には一般的な充電器で電気を蓄える。ソーラーパネルは充電を補う機能に過ぎないが、有効なことは間違いないだろう。

ドライブフィールに関しては、まだ試作段階の範囲を超えていない。ステアリングホイールは重く扱いにくいし、ブレーキペダルの感触も正しいとは思えなかった。今回の最高速度は、99km/hに制限されていた。

それでも、すべての開発は順調だという。ライトイヤーの技術者は、スケジュール通りに仕上がる予定だと自信を見せる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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