ソーラーパネル搭載EV ライトイヤー0 試作車へ試乗 インホイール・モーターで624km

公開 : 2022.07.24 08:25

インホイール・モーターで航続距離は624km

少なくとも発進加速は、ほとんどのドライバーが不満を感じないほど活発。ローンチコントロールは備わらないが、効率を最大化することが目指されている。電費効率は9.3km/kWhだといい、現在のBEVとしてはずば抜けて優秀だ。

航続距離は、WLTP値で624kmが見込まれている。高速道路を110km/hで巡航すれば、560kmを走行可能だという。

ライトイヤー0 プロトタイプ(欧州仕様)
ライトイヤー0 プロトタイプ(欧州仕様)

筆者はこれまで多くの自動車メーカーの新モデルを試乗してきたが、BEVで高速道路での航続距離を教えてくれたのは、ライトイヤーが初めて。敬意を払いたいと思うし、それだけ自負もあるのだろう。

この電費効率を生んでいる理由は、ボディの他にもある。なかでも高効率な駆動用モーターは、スロバキアのTK社と共同開発されており、インホイール構造が採用されている。多くの既存のBEVのように、シャシー側ではない。

通常のブレーキディスクと並ぶカかたちで、幅の細いホイールの内側に組み込まれている。モーターは軽くなく、バネ下重量を37kg増やしてしまうそうだが、細身のタイヤとホイールである程度は相殺している。

トランスミッションやドライブシャフト、ディファレンシャル・ギアなどが不要になるため、クルマ全体では軽量化にも一役買っている。実際、0の車重は1575kgで、BEVとしては軽量といえる。

BEV化に向けた近未来へ新しい方向性

0で自動車メーカーとしての出発を果たしたライトイヤーだが、今後、順調に加速できるかどうかは不透明。1、2と順にモデルを開発していき、テスラのようになれるだろうか。2024年頃に英国へやって来るモデル3は、3万ポンド(約501万円)もしない。

人材確保に積極的で、開発にも意欲的だとはいえ、量産車を実際に販売するということは、想像以上に手間や費用を必要とする。BEVへ多額の投資額を集めることも、数年前より難しい条件だといえる。

ライトイヤー0 プロトタイプ(欧州仕様)
ライトイヤー0 プロトタイプ(欧州仕様)

少なくとも筆者は、ライトイヤーには勝ち残って欲しいと考えている。優れた技術力による可能性を、0で確かめることができた。

極めて効率に優れた設計によって、天気が良ければ1日に最大70km走れるだけの電気を、ソーラーパネルが生み出してくれる。BEV化に向けた近未来へ、新しい方向性を示してくれている。

若い技術者だからこそ創出できる、斬新なアイデアに期待したい。数年後にライトイヤーのクルマを市街地で見かけることができれば、より道路は面白いに違いない。

ライトイヤー0 プロトタイプ(欧州仕様)のスペック

英国価格:21万5230ポンド(約3594万円/予定)
全長:5057mm
全幅:1972mm
全高:1445mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:10.0秒
航続距離:624km
電費:9.3km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:1575kg
パワートレイン:クワッド永久磁石ラジアルフラックス・モーター
バッテリー:60kWh
最高出力:190ps
最大トルク:175.1kg-m
ギアボックス:−

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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