頑なに拒むフェラーリ「SUV」の呼び名 プロサングエに大谷達也が試乗 理由、明らかに

公開 : 2023.03.08 08:01  更新 : 2023.03.08 15:13

フェラーリ・プロサングエ(V12)にイタリアで大谷達也が試乗。「SUV」の呼び名を頑なに拒む理由が明らかになりました。

プロポーションのために骨格を見直した

イタリア北部のスキーリゾートで、およそ半年ぶりにフェラーリプロサングエと再会した。

太陽の下で初めて見たそのプロポーションは、実に美しい。見る角度にもよるが、1589mmの全高を意識させることなく、クルマ全体が低くうずくまっているように感じられる。

事前のプレゼンテーションで、チーフデザイナーのフラヴィオ・マンゾーニは「美しいプロポーションとするために、アーキテクチャーを徹底的に見直した」という主旨の言葉を語っていた。
事前のプレゼンテーションで、チーフデザイナーのフラヴィオ・マンゾーニは「美しいプロポーションとするために、アーキテクチャーを徹底的に見直した」という主旨の言葉を語っていた。    フェラーリ

これは、スポーツ系ラグジュアリー・ブランドが手がけるSUV全般にも見られる傾向ではあるが、そうしたモデルにありがちな「ボディを低く見せるデザイン上のギミック」がプロサングエには見当たらない。デザインの自然な成り立ちのなかで、低いスタンスを無理なく作り上げているのだ。

事前のプレゼンテーションで、チーフデザイナーのフラヴィオ・マンゾーニは「美しいプロポーションとするために、アーキテクチャーを徹底的に見直した」という主旨の言葉を語っていた。

アーキテクチャーが決まれば、ホイールベース、ホイールのサイズ、全高、全幅などが決まり、全長や前後オーバーハングもおおよそ決まる。

おそらく彼らは、全長およそ5mのボディを用いて、1.6m近い全高をできるだけ意識させないプロポーションを作り上げようとしたのだろう。

そのために重要だったのが、最大で23インチのホイールであり、3m近いホイールベースだったのだ。

さらにいえば、前方に向けてすっきりと伸びたフロントノーズ、Aピラーを強く倒すことでロングノーズ感を強調したキャビン、同じく強く傾斜したCピラーが筋肉のように盛り上がったリアフェンダー部にジャストミートするスタイリングとすることで、1589mmの全高でフェラーリらしいプロポーションを実現したのである。

私の目には、精神的な意味での前作にあたるGTC4ルッソよりも、プロサングエのほうがはるかに美しく、そして力強いデザインのように思えた。

かつてなかったほど静かなV12自然吸気

一般道を走り始めると、プロサングエがこれまでのフェラーリにない特徴を備えていることがすぐに明らかになった。

まず、タイヤの発生するロードノイズが圧倒的に低い。率直にいって、プレミアムブランドが手がけるスポーツサルーンと大差のない音量で、キャビンは思いのほか静か。隣に腰掛けたパッセンジャーと会話を交わす際にも、大声を出す必要はまったくない。

プロサングエのフロントノーズにはマラネロ自慢の自然吸気V12エンジンが積まれているが、その音量もかつてなかったほど小さい。
プロサングエのフロントノーズにはマラネロ自慢の自然吸気V12エンジンが積まれているが、その音量もかつてなかったほど小さい。    フェラーリ

おまけに、今回は真冬の試乗だったため、ミシュランのパイロット・アルペン5 SUVというウィンター・タイヤを履いていたのである。これが通常のサマータイヤであれば静粛性はさらに高まっていたはずだ。

プロサングエのフロントノーズにはマラネロ自慢の自然吸気V12エンジンが積まれているが、その音量もかつてなかったほど小さい。巡航時にエンジン・サウンドがぐっと低くなるフェラーリはこれまでにもいくつかあったが、プロサングエは、ドライビングモード切り替えのマネッティーノでスポーツないしESCオフを選び、さらにスロットルペダルを積極的に踏み込まない限り、V12サウンドが明確に聞こえてくることはない。

しかし、条件がすべて揃ったときには、澄み切ったメカニカルノイズのスムーズな音色を響かせて、ドライバーを陶酔の世界へと誘う。その際の音量もこれまでに比べれば明らかに抑制されているが、V12のエッセンスのみを抽出したサウンドには官能性がふんだんに盛り込まれているので、物足りなくは感じられないはず。

いや、4ドア・4シーターというプロサングエのキャラクターを考えれば、むしろこの設定のほうが好ましいというべきだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。

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