頑なに拒むフェラーリ「SUV」の呼び名 プロサングエに大谷達也が試乗 理由、明らかに

公開 : 2023.03.08 08:01  更新 : 2023.03.08 15:13

フラットライド しかし当たりは柔らか

シャシーのセッティングもまた、フェラーリの伝統的な味わいと4ドア・4シーターの世界観を絶妙にブレンドさせたものといえる。

微低速域ではタイヤのソフトな当たりに驚かされるが、車速を上げていけば、ロールやピッチが極端に小さなフラットライドを実現していることに気づくはず。

高速でギャップに乗り上げたときにボディが浮き上がろうとしても、タイヤの接地性が一切、揺らがないことに驚かされる。その足回りの動き方は、従来のコンベンショナルなサスペンションとはまったく異なるものだ。
高速でギャップに乗り上げたときにボディが浮き上がろうとしても、タイヤの接地性が一切、揺らがないことに驚かされる。その足回りの動き方は、従来のコンベンショナルなサスペンションとはまったく異なるものだ。    フェラーリ

その乗り味からは、スプリングやダンパーがかなり締め上げられていることが想像されるが、前述のとおりタイヤの当たりは柔らかでゴツゴツしたところがない。

しかも、高速でギャップに乗り上げたときにボディが浮き上がろうとしても、タイヤの接地性が一切、揺らがないことに驚かされる。その足回りの動き方は、従来のコンベンショナルなサスペンションとはまったく異なるものだ。

その最大の理由が、プロサングエに搭載されたフェラーリ初のアクティブ・サスペンションにあることはいうまでもない。電気モーターとボルトシャフトを組み合わせることで、ホイールの位置を自在に調整できるこのサスペンションがあればこそ、極端にフラットな姿勢と快適な乗り心地を両立できたのである。

しかも、ロール量が極端に小さい(一般的なモデルの半分程度とフェラーリは説明する)ため、コーナーへの進入でもクルマの姿勢が落ち着くのを待つ必要がなく、素早くターンインできる点が、このアクティブサスペンションが持つもう1つの特徴。

その優れたステアリングレスポンスは既存のSUVとは別次元の鋭さで、フェラーリの名にまったく恥じないものといえる。

つまりプロサングエは、フェラーリが伝統的に備えてきたスポーツカーとしての素質を一切失うことなく、ユーティリティや快適性の面では4ドア・4シーターに相応しい洗練さを手に入れたモデルといえる。

そのために彼らはアーキテクチャーをいちから作り直したうえで、4WD、4WS、アクティブサスペンションなどの最新システムを総動員。

さらに、ここに自然吸気V12エンジンを組み合わせることで、フェラーリに期待される官能性とパフォーマンスを実現したのである。

ボディサイズや室内スペース、そして185mmの最低地上高などはたしかにSUVと捉えてもおかしくないが、フェラーリ自身がSUVという呼び名を頑なに拒んできた理由が、実際に試乗してようやく理解できた。

その意味でいえば、プロサングエはまさに唯一無二の存在というべきだろう。

フェラーリ・プロサングエのスペック

価格:-
全長:4973mm
全幅:2028mm
全高:1589mm
ホイールベース:3018mm
乾燥重量:2033kg
パワートレイン:V型12気筒6496cc
最高出力:735ps/7750rpm
最大トルク:73.0kg‐m/6250rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ

フェラーリ

記事に関わった人々

  • 執筆

    大谷達也

    Tatsuya Otani

    1961年生まれ。大学で工学を学んだのち、順調に電機メーカーの研究所に勤務するも、明確に説明できない理由により、某月刊自動車雑誌の編集部員へと転身。そこで20年を過ごした後、またもや明確に説明できない理由により退職し、フリーランスとなる。それから早10数年、いまも路頭に迷わずに済んでいるのは、慈悲深い関係者の皆さまの思し召しであると感謝の毎日を過ごしている。

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