フォルクスワーゲン・パサート・ヴァリアントTSIハイライン

2013.01.15

意外とイケそうな新参者

新型パサート、売れているらしい。ミドルサイズに1.4ℓ直4エンジンというイメージのギャップは難なく受け入れられているようだ。その人気の秘密を探るべく、今月号から新たにワゴンモデルを導入した。

導入したパサート・ヴァリアントは上級モデルのTSIハイライン。車重は1500kgだ。このモデルをレポートするにあたり、最大の関心は車重1500kgのミドルサイズボディに1.4ℓターボのエンジンでまともに走れるのか、という部分にあるのは間違いない。そして、7速DSGと組み合わされたダウンサイジングエンジンが、どれだけ走りの楽しさを演出しているか、にあると思っている。

車両が編集部にやってきたのは、本誌締め切り一週間前という事情もあり、まだ300km程度しか走れていない。それも都市部の街中中心である。これだけの走行で、結論を出すのは時期早尚というもの。これからできる限りあらゆるシチュエーションでじっくり走行して、答えを出していきたい。

とはいえ、第一印象としては良好だ。全長4785×全幅1820mmのボディは5.3mの最小回転半径との相乗効果で、充分に取り回しやすい。全高は1530mmだから、1550mmをリミットとする都心に多い立体駐車場にも困らない。

122ps/20.4kgmの1.4ℓターボは走り出しこそ穏やかだが、2000rpm手前から効きはじめるターボのおかげですぐに流れをリードできる。強力な加速力の持ち主ではないが、日常ユースで不満はない。このグレードに標準の17インチタイヤは若干硬めな乗り心地を演出するが不快感には繋がらないし、“ワーゲンの硬さ”が嫌いでなければむしろ歓迎できる。アイドリングストップの出来もいい。

果たして死角はあるのか。興味津々である。

(AUTOCAR No.102 2011年9月26日発売号掲載)

シャランと比較

フォルクスワーゲン・ジャパンの配車の関係で、このひと月のレポートは一旦、中断せざるを得なくなってしまった。ということで、この機会にパワートレインの基本を共有するVWの他のモデルを比較試乗させてもらうことにした。

試乗したモデルはシャランで、グレードは上級のTSIハイラインである。シャランに搭載するパワートレインはターボとスーパーチャージャー両方で過給する1.4ℓエンジンと6速DSGの組み合わせ。スペックは150ps/24.5kgmを計上する。ターボのみで過給(122ps/20.4kgm)し、7速DSGを組み合わせるレポート車のパサート・ヴァリアントTSI ハイライン(以下パサート)と厳密に比較するのは無理だが、車重の違いもある。シャランが1830kgで、レポート車は1470kg。パワーウイトレシオは、それぞれ12. 2kg/ps、12.0kg/psとパサートが少し優る程度。走りのフィーリングはさほど大きく乖離するものではないだろう、というわけだ。

走りの部分で最も大きな違いを感じたのは、スタート時。パサートも穏やかなイメージだが、シャランはよりマイルドな印象だ。やはり車重が影響しているのだろう。とはいえ、ひと度走りはじめてしまえば巡航スピードまでの加速がスムーズである点は共通している。シャランのスペックシートを改め、最大トルクの発生回転数が1500〜4000rpmと確認して納得した次第。低回転・低速域からしかりトルクを引き出すこのチューニングがあるからこそ、わずか1398ccという排気量でもしっかり走れると再認識したのである。ちなみにこの最大トルク発生回転数域は同一だ。

高速道路にシーンを移すと、2920mmのロングホイールベースが奏功し、実に高い直進安定性を見せる。全高は1750mmあるが、フロントウインドウの傾斜角が妙なのか、ロードノイズは想像以上に小さい。むしろハイウェイでは着座位置が高く、視界が確保しやすい点を再確認できた。

居住性については、改めて詳しく触れるまでもない。両側スライドドアによるアクセスのよさ、3名掛けのセカンドシートのサイズ/スペースが充分である点は、まさにシャランの特色。ただ、サードシートへのアクセス、そしてシートサイズと足元空間に関しては、大人が長時間寛ぐには、ちょっと厳しい。子供用か緊急時と割り切りたい。

4855mmの全長や1910mmの全幅、5.8mの最小回転半径をもつシャランだが、慣れてしまえば意外と扱える。駐車スペース等の制約がなければ、パサートの38万円アップとなる434万円(TSIハイラインで比較)はリーズナブルと言える。パサートとシャランで迷う人は少ないだろうが。

今回シャランに試乗して、ひとつ確認できなかった点が、多人数乗車。満員乗車でどこまでしっかりと走れるかは、このモデルの重要なポイントといえるだけに残念である。スペック表からだけでは実感しにくいが、きっと望外に良く走ってくれるのだろう。ちなみに街乗り9割、高速1割を600kmほど走行した実用燃費は10.78km/ℓだった。渋滞の遭遇率は高かったがアイドリングストップ機構の恩恵はしっかり享受できたようだ。

パサートのレポートは次号から再開する。

(AUTOCAR No.103 2011年10月26日発売号掲載)

嬉しい誤算!?

先月ひと月お休みしたパサートの長期テストは、今月から無事に再開する運びとなった。この個体は最初にレポート車として導入した時点で、マイレージがちょうど1万kmを越えたところだった。久々に乗るレポート車は1500kmほどプラスされていたが、走りはじめてすぐに、乗り心地がそれまでと変わった印象を持った。本誌102号では、導入直後は乗り心地に若干硬さがあるとお伝えしたが、その印象がマイルドになったのだ。

たかだか1500km走行をプラスしたところで、乗り心地はそう変わるものでもないだろうが、しなやかさが増したのは嬉しい。クルマにもよるが、新車時から8000〜1万kmを経たあたりで、エンジンや足まわりが本来のパフォーマンスを発揮するようになる、といった話も聞く。ともあれ、乗り心地の印象がパサートの車格によりマッチしたと感じられるようになったのは、担当者としては嬉しい誤算(?)だ。オーナーの皆さんはいかがだろうか?

いまだにロングドライブに連れ出せていないのが残念だが、今回は改めて街乗りでの走りのマナーやフィーリング、取り回しに注目してみたい。

全長4785×全幅1820×全高1530mmのボディサイズは、大人が4人寛げる充分なキャビンスペースと、狭い路地が少なくない日本の街中での扱い易さを見事に両立している。FFながら5.3mの最小回転半径も効いている。実際にこれまでサイズや取り回しの面で困ったことは皆無である。

燃費に貢献するアイドリングストップの躾も良好で、再始動時のスタートも作動自体はスムーズだ。ただ、気になっている点がふたつ。街中のストップ・アンド・ゴーが続くシーンでは、再始動時のエンジンの振動が多少大きく感じられる。正直、アイドリングストップ機構をOFFにしたいときがあるほど。ふたつ目は上り坂の途中で停止し再スタートするシーンで、標準装備のヒルホルダーが作動せず、エンジンが再始動してアクセルを踏み駆動するまで、ほんのわずかだが車両が後退しそうになってしまうこと。前者は感じ方の違いもあるだろう。そして後者についてはレポート車の個体差による不具合かもしれないから、本誌締め切り後に確認してみるつもりだ。

走り出してからのマナーやフィーリングには、いまのところ気になる点は見つかっていない。むしろ好印象を改めて実感している。ターボ過給による加速もスムーズ(ターボ過給のはじまりも唐突ではない)だし、DSGの変速もシームレスといえる。ハンドリングも自然で、違和感を覚えることはない。レポート車は上級グレードのハイラインだからスタンダードタイヤのサイズは235/45R17となるが、マッチングは悪くない。まさに車格に見合った走りで楽しませてくれている。今後のレポートでは、ハイウェイやワインディングでのパフォーマンスにも注目していきたい。高い人気を得ているパサートの魅力を知るために、しっかり走り込み、新世代パワートレインの実力に迫ってみたいと思う。

(AUTOCAR No.104 2011年11月26日発売号掲載)

VWは青い

先日あるイベントで、以前在籍していた編集部時代にお世話になったライターさんに、久しぶりにお目にかかった。その方、たしか当時はアルファ156にお乗りだったはずなのだが、聞けばいま、愛車はゴルフ・トゥーランなのだという。車種は違うが、こちらもレポート車で毎日のようにVWに乗っている。話題は自然と最近のVW車になった。

「いやー、DSGってやっぱりすごいよね。街乗りで走っているときにシフトインジケーターをチラッと見てみると、目まぐるしく変速しているんだよねぇ。常に最適なシフトを選んでいる感じ。どうりで燃費がいいわけだよ」

DSG乗りとしては、実に共感できる話だ。そう、彼が言うとおりドライバーがのんびり気分で走っているときでも、見えないところで猛烈に仕事をしている。シフトインジケーターの選択シフト表示によってそれがわかるから、厳密にはまったく「見えない」わけではないのだが。

ともかく、もはや当たり前になった技術ではあるが、改めて共感できる人と語ることでDSGの偉大さを再認識した次第。いくら直噴で、過給器付きとはいえ、1.4ℓという小排気量のエンジンでパサートをきちんと走らせるのだから、存在価値は大きい。いや、DSGと組み合わせなければエンジンのダウンサイジングは難しかったのだろう。

さらに、燃費に貢献しているのはもちろんTSIエンジンやDSGだけではないことを思い出す。ご存知のとおり、最近のVW車の多くは「ブルーモーション・テクノロジー」が採用されている。もちろん当レポート車も例に漏れていない。いまさら説明するまでもないが、この技術は環境対応技術としてスタート・ストップシステムとブレーキエネルギー回生システムの組み合わせによって燃費性能を向上させるもの。これらの連携があってはじめてレポート車が18. 4km/ℓの10・15モード燃費をマークするのだが、別項のとおり、残念ながら実用燃費はその半分程度に留まっている。たしかに導入からこれまで街乗りがほとんどで、ハイウェイクルーズな好燃費が期待できるドライブができていない。言い換えれば、いかにストップ・アンド・ゴーの多い街乗りでの燃費が良くないかがわかる。

今回はブルーモーション・テクノロジーに触れる話題だから、何かそんなイメージで写真を、と思っていたらなかなかのロケーションを発見。メインカットはその成果である。

というのは真っ赤なウソで、本当は本誌発売日がクリスマス・イブだからイルミネーションを絡めたカットでも、と考えていたのだが、そんなイルミネーション真っ盛りのスポットは人ごみが激しく、とても写真など撮れる状況ではない。困っていると田中カメラマンが助け舟を出してくれた。イルミネーションの点る橋がある場所を教えていただき、そこで撮影することに。行ってみれば、奥に見える橋のイルミネーションが偶然ブルーだった、というわけである。結果オーライ?

裏話はさておき、VWとブルーは深い関係があるようだ。ロゴマークにも青色が使われているし。今度、広報の方にでも聞いてみよう。

(AUTOCAR No.105 2011年12月24日発売号掲載)

格の違い

本誌でご紹介しているジュリエッタの比較テスト企画取材( P40 〜)で、V WゴルフTSI ハイライン(以下ゴルフ)に乗る機会があった。GTIやRの“役モノ”以外ではトップグレードである。パワートレインは160ps/24.5kgmを発揮する1.4ℓ直4ツインチャージャーエンジンに7段DSGを組み合わせる。普段パサートに乗っている身として、その走りを比較してみると、なかなか興味深いことが体感的にわかった。

確かに両者のスペックシートを見比べるだけでも、エンジンスペックで38ps/4. 1kgm、車両重量で130kgのアドバンテージを持つゴルフだけに、加速のパンチ力やコーナリングでの軽快な身のこなしに優位な点があることは明白だ。実際に走らせてみれば誰もが実感できるだろう。ただし、ハイウェイクルーズというシチュエーションにおいて、明確にゴルフを圧倒する美点がある。静粛性だ。

もちろん装着タイヤ銘柄(パサートはコンチ・スポーツコンタクト3、ゴルフはミシュラン・プライマシーHP)やボディ形状の違いも多少は関係しているのかもしれないが、パサートの方が断然、というか根本的な印象として静かなのである。車内の会話のボリュームが変わるほどではないが、同じように話をしても、パサートの方がよりクリアに聞こえるのだ。これは、パサートがゴルフに勝る車格の違い、あるいはキャラクターの違いが、単にボディタイプや装備だけではない、という何よりの証拠だろう。

加速のパンチ力やコーナリングでの身のこなしはゴルフに一歩(いや、半歩くらいか)譲るものの、決して不満を覚える水準ではなく、むしろ頼もしささえ感じられる。

ワインディングに連れ出して、元気良く楽しんでも、このクルマがワゴンボディであることを考慮すれば、ドライバーの精神的消化不良は意外と生じない。ステアリング操作やA/Tモード時にはそれぞれ反応が穏やかに感じるシーンもあるが、このクルマのキャラクターにはよくマッチしている印象だ。高いボディ剛性としっかり感のある足まわりは、安心感をもたらしてくれる。

ハイウェイクルージングでは優れた静粛性に加えて、より長い(ゴルフ比+135 mm)ホイールベースの効果で、実に魅力的な直進安定性を発揮してくれる。ハイウェイでの安楽さはゴルフより一枚、いや1. 5枚は上手とお伝えしたい。

ボディタイプこそ異なれど、デザインや発散する雰囲気など、どちらも共通するテイストを持っていると思う。それは同じVWのバッジを貼るというブランドとして当然といえばそれまでだが、きちんと乗り比べてみれば、個々の持ち味やキャラクターがしっかりと備わっている。もはや当たり前の話ではあるが、今月はそんなことを改めて確認できた次第である。

ちなみに、乗り比べた両車の価格差は67万円。より軽量コンパクトなボディで運動性能をとるか、より高い積載性と静粛性、上級の装備&仕様をとるか。個人的にも悩ましい選択肢となった比較だった。最後は好みの問題になるが、さて、アナタならどちらを選ぶ?

(AUTOCAR No.106 2012年1月26日発売号掲載)

コンフォートラインはどうか

コンフォートラインの車両価格は、上級のハイラインより50万円安い346万円。ホイールサイズは1インチダウンの16インチ(タイヤサイズは215/55 R16 )となるほか、シートはファブリックとなり、内装のデコレーションパネルはアルミニウムだけ(ハイラインは一部ウッドも使用)となるなど、装備や仕様でいくつかの違いが挙げられる。ハイラインを日常的に使用している身としては、標準装備のリバース連動助手席ドアミラーと、パーキングセンサーは有難い装備。とくに車庫入れに切り返しが必要な狭い駐車場などでの取り回しには、大いに役に立っている。

走りの面で差の出そうな16インチタイヤのフィーリングは、ハイラインの履く17インチと比べてどうなのか。選ぶ人にとって、この点は軽視できないだろう。ということで、ちょうど2012年モデルに切り替わったコンフォートラインに試乗する機会を得たので、乗り比べてみた。たまたまレポート車と同じボディカラーだったので分かりにくいが、上の写真はコンフォートライン。ご覧のとおり、エクステリアのパッと見の違いはホイールのデザイン程度である。

取材時間の都合上、街中を数十分というドライブだったので、結論めいたことは明言しにくいが、個人的な印象としては、走りの面ではどちらのグレードを選んでも……である。試乗したコンフォートラインはBSのトランザ、レポート車のハイラインはコンチ・スポコン3と、装着していたタイヤの銘柄が違うので、タイヤによる印象の違いがないわけではない。が、例え同銘柄のタイヤを履いていたとしても、印象が乖離することはなさそうである。16インチタイヤのハイトが少し高い分、マイルドな感触を得るシーンもあったことは報告しておきたい。当たり前の話ではあるが、いずれにせよ、パサートの備える高いボディ剛性としっかり感のある足さばき、VW車らしいほんのちょっと硬めの乗り心地が同じように享受できることに違いはない。少し残念に思ったのがアイドリングストップの再始動時の振動。個人的な印象として、車格を考慮すればもう少しマイルドになったらと思っていたのだが、年次改良で変更するレベルではなさそうだ。マイチェン時に期待したい。

パワートレーンや安全装備などクルマとして基本的なスペックは同じだから、できるだけ安いほうがいい、という向きにはコンフォートラインを選んで後悔はしないはず。個人的に選ぶとすれば、冬場(とくに乗りはじめ)に重宝するシートヒーターがある点、シフトパドルが標準装備される点も考慮して、プラス50万円を甘んじたい。

ちなみに、2012年モデルに移行したパサートに、スペック上、変更点はない。電動パワステなどのセッティングを若干見直しと聞いたが、今回の試乗では明確な違いを確認できなかった。ワインディングなどに連れ出したりすると分かるのかもしれない。2011年モデルが上陸してから、さほど時間が経っていないこともあろうが、変更点が少ないということは、それだけ従来型の完成度が高かったのだろうとポジティブに解釈した次第。全国の2011年型パサート・オーナーの皆さんには、ある意味で朗報とお伝えしておこう。

(AUTOCAR No.107 2012年2月25日発売号掲載)

伸びない燃費

レポート車として導入してから4000km以上をドライブしてきたわけだが、平均燃費はご覧のとおり10km/ℓと少し。スペックシートには10・15モードで18.4km/ℓと書かれているから、実用燃費としてはこんなものなのだろう。

この実燃費の内訳は、高速が1〜2割、残りは街乗りで渋滞にもよく遭遇する。アイドリングストップ機構のスタート・ストップシステムは基本的に常時作動。街中の混雑でも、よほどでなければオフにしない。アクセルの踏み加減は交通の流れにしっかりと乗るくらい。

こんなものかと思うと同時に、もう少し伸びないものかと、いろいろ試してみた。アクセルをさらにマイルドに操作し、無駄なアクセルオンを極力減らし……。だが目に見える効果はなかった街乗りではこの辺りがいいところなのだろう。

一方で、高速はまだまだ伸びシロがありそうだ。先日打ち合わせで編集部と横浜みなとみらいを高速で往復したとき、初めてメーターの平均燃費表示が15km/ℓを越えた。クルマは多かったが以外とスムーズに流れていて、スピードメーターの針もあまり動かないペース。そんな走り方なら燃費が良くなって当然といえばそれまでだが。

しかし、よくよく考えてみると、燃費が思っている以上に伸びないと思っていたのは、どうやら自分のドライブに大きな原因があった。

意外と踏んでいたのだ。

スムーズに走れるシーンでは、気持ちのいい加速が味わえるがゆえに、ついアクセルに力を込めている。122ps/20.4kgmのスペックは正直、平凡である。実際スタート時は加速がマイルドだし、信号が青に変わってスタートする際に、となりの軽に一歩リードを許すこともある。だが、ひと度スピードに乗れば、流れをリードすることも難しくない。低回転からスムーズなターボ過給が始まるから中間加速はなかなか頼もしい。高速では、ちょっとしたスポーツカーならついていける。パドルシフトの変速も楽しい。追い込んだ走りでも足はそれなりに粘るから、ついつい……。

これでは燃費が伸びないはずである。スポーティな走りを楽しむか、良好な燃費でお財布をいたわるか。この手のクルマを運転するドライバーにつきものの葛藤といったら大げさか。

残されたレポート期間では、その葛藤とどう付き合うかをむしろ楽しみたい。踏むときは踏んだほうが、精神衛生上はいいのかもしれないが。

蛇足ながら、そこそこ長く付き合ってきて実感している事柄がある。キャビンの居心地だ。

居心地とは、シートポジションがフィットするか、シートクッションや表皮の仕上げはどうか、インパネの操作系は扱い易いか、など。これらの要件が充分に満たされてないと、長時間のドライブ、とくに激しい渋滞を伴う場合は、疲労感がより大きくなる気がする。とくにブレーキペダルに足を載せたり離したりを繰り返すだけのシーンでは、できれば居心地のいいキャビンでありたいもの。キャビンの居心地の良さはつまり、ドライバーならより運転に集中できるし、パッセンジャーならよりリラックスして過ごせるというもの。パサートはそんな点も高く評価したい。

(AUTOCAR No.108 2012年3月26日発売号掲載)

確かな存在感

8232台。この数字は2012年3月期のVWの国内登録台数なのだが、単月の台数としては2006年3月に記録した8376台以来の8000台超えである。さらに前年同月比は57. 7%のプラスという好調ぶり。VWの勢いは健在だ。

この勢いを支えているのがエコカー減税対象車の存在。国内モデルラインナップの7割が同対象車となっており、3月期の登録台数においても、その92%がそれである。具体例を挙げると、ポロの2890台、シャランの500台は、単月販売台数としては過去最高をマーク。当レポート車であるパサートも2011年5月の上陸以来、最高を記録したと、発表されている。

パサートが売れている要因として、エコカー減税対象車であることに疑う余地はない。当レポート車と同じヴァリアントTSIハイラインの場合、エコカー減税(100%!)と補助金で約32万3600円優遇される。購入時におサイフ面で大きな魅力となろう。だが、それはあくまで“最後に背中を押してくれる”というもので、クルマそのもののデキが評価されていると捉えるべきだろう。もちろんその“デキ”の中には、エコカー減税対象=基準を満たす燃費・環境性能が含まれているのだが。

高い評価を得ているパサートのハード面での魅力とは何か。ゴルフより広いキャビンを持ちながら狭い道でも取り回しに困らないボディサイズ。7速DSGとの組み合わせで122psのマックスパワーながら充分な動力性能を演出する1.4ℓターボエンジン。シーンを選ばずに安定した走りに貢献するシャシーやボディ。VW製らしい品質感。そしてリーズナブルなプライス……。そんな要素がパサートの存在感を確かなものにしていると思うのだ。確かにイタリア車に例えられるような個性的なデザインとはいえないかもしれない。だが、それを補って余りあるドイツ製品らしい“いいモノ感”はエクステリアを眺めても、運転席に収まっているときでも感じとれる。VWを選ぶユーザーはデザインコンシャスであることより、質実剛健であることや高い品質を優先するはずだから、まさに需要と供給が合致している。売れないワケがない。担当者も過去、VW車(ポロ)を所有していた経験があるので、ワーゲンの魅力はよく理解しているつもりだし、とくにDSGが搭載されるようになってからの進化ぶりには、感心するばかりである。

だから桜の季節の訪れとともに、パサートの長期テストが終了してしまうのは、実に残念でならない。願わくはあとふた月、いやひと月でも長く共にしていたい。それだけパサートで過ごすカーライフに違和感がなく、頼もしい相棒となってくれた。2011年9月にスタートした当レポート車の走行データは別項の通りだが、平均燃費は街乗りが約7割を占め、踏むときはきちんと踏むという走り方の割には、まずまずの結果といえそうだが、パサート・オーナーの皆さんはいかがだろうか。

ちなみに、これからパサートを購入する方に朗報をひとつ。6月末まで1.99%の低金利と3年間フリーメンテナンス(法定点検や定期交換部品の交換工賃が無償となる「プロフェッショナルケア」など)のキャンペーンが実施中とのこと。購入予定者にはまさに、好機到来である。

(AUTOCAR No.109 2012年4月26日発売号掲載)

高い偏差値

先月で退役するはずだったパサート・ヴァリアントだが、フォルクスワーゲン グループジャパン広報部のご厚意で、1ヵ月延長することになった。前号で総括らしい総括ができなかったことが引っかかっていた身としては、願ったり叶ったりといったところである。

レポートの第1回目、102号で「死角はあるのか」と記したが、約7000kmのドライブを経た今となっても、正直、死角らしい死角が見つかっていない。つまり偏差値の高いクルマなのだ。どこか1点、突き抜けているところがあるというわけではない。だがボディサイズや取り回し易さ、内外装の質感、居住性、そして走りと、あらゆる面で水準が高いと思うのだ。デザインに関しては好みの問題もあるだろうが、少なくともVWのモデルラインナップにおけるパサートのポジションにはマッチしているし、品格は十分備えている。そして価格。400万円を切り、いまならエコカー減税の恩恵も受けられるこの手のクルマは、なかなかお目にかかれない。

細かいことを挙げれば、改良を望みたい点はある。例えばアイドリングストップの再始動時の振動。ストップ・アンド・ゴーの続くシーンでは意外と気になりやすかった。そのほかではラゲッジのトノカバーを引き出した際、固定が甘く、走行中ちょっとした段差を越えるときなどで
巻き取られてしまうときがある、など。これらは感じ方や個体差の問題もあるから、一概に弱点とはいいきれないのだが。
 
さらに欲を言えば切りがないのだが、特に上級のハイラインなら、もう少し出足の加速にパンチ力があってもいいのかもしれない。別にゴルフGTIに東名でブチ抜かれたからというわけではない。パサートという車格を考えると、先代のR36のようなハイパフォーマンスグレードの選択肢があるということが、パサートそのものの格の高さ、イメージを一層引き上げるように思うのだ。昨年の東京モーターショーでお披露目された2ℓターボを搭載するパサート・オールトラックは、SUV風味を効かせてはいるが、上陸した暁には頼もしい選択肢になるだろう。

ゴルフやゴルフ・ヴァリアントを買いにディーラーに行っても、チャンスがあれば、ぜひパサートにも試乗してみてほしい。格の差を明らかに実感できるはず。長く乗るなら多少おサイフに負荷がかかっても、手が届くのならパサートをお勧めする。もっとも、パサートの販売は好調に推移しているというから、これは大きなお世話か。

話は変わるが、先日、お台場のレインボーブリッジを走っていたら、アイアングレーメタリックのパサート・ヴァリアントの後ろに付いた。夕暮れ時だったから夕日が当たり、少し水色がかって見えたのだが、テールライトとのカラーコンビネーションもよく、なかなか知性的だった。普段は運転席に収まっているから、パサートの走行中のリヤビューを見たのが新鮮だったのだ。輸入車ではフレンドリーなブランドだが、なかでもパサートに乗っていると、ちょっと知性が豊かなイメージに映る。この“ちょっと”の加減は意外と大事なポイントで、パサートは嫌味にならない程度の絶妙な線を上手く付いているのかもしれない。

(AUTOCAR No.110 2012年5月26日発売号掲載)

 
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