準備着々のパサート級EV フォルクスワーゲンID.7 試作車へ試乗 航続最長700km 後編

公開 : 2023.04.16 08:26

BEVのラインナップ拡充を進めるVW。パサート・クラスの新モデル、ID.7の試作車へ英国編集部が試乗しました。

モニターは15インチ 車内はパサートより広々

フォルクスワーゲンID.7のドアを開き車内へ身を置くと、高めのウエストラインと小さめのグラスエリアが相まって、適度な包まれ感がある。試作段階ながら、インテリアの品質は従来のID.シリーズより間違いなく高い。

内装素材はどれも上質で、硬質なプラスティック製部品は限定的。居心地が良い。

ドライバーの正面には小さなメーター用モニターが据えられ、拡張現実機能付きのヘッドアップ・ディスプレイが、フロントガラス側に用意される。だが特に目を引くのは、ダッシュボード中央の大きなインフォテインメント用タッチモニターだろう。

サイズは15.0インチあり、最新版のシステムが稼働する。ホーム画面が一新し、前バージョンより直感的に操作しやすいと感じた。メニュー構造は見直され、音声認識機能も理解度を増したようだ。

同社がスライダーと呼ぶタッチセンサーで、エアコンの温度調整などがまかなわれることは、他のID.と同様。とはいえイルミネーションが追加され、夜間での使い勝手は改善している。

上級サルーンらしく、ベンチレーションやマッサージ機能を内蔵した、エルゴアクティブ・シートに加えて、ハーマン・カードン社製の高性能オーディオもオプションで選べる。アンプの出力は700Wあり、14本のスピーカーで豊かなサウンドを楽しめるはず。

車内空間は、Aピラーがフロント側に寄せられたおかげでパサートより広々。ダッシュボードは奥行きがあり、フロントガラスが遠い。リアシート側は、リムジンと呼びたくなるほどのゆとりがある。

素直で活発で、運転しやすい

従来のID.シリーズでは、ギアセレクターはメーター用モニターの横に付いていた。だが新しいID.7では、ステアリングコラムからレバーが伸びている。その先端をひねると、発進準備は完了する。

1段階ひねると、デフォルトのD(ドライブ)モード、2段階ひねると、回生ブレーキが強くなるB(バッテリー)モードになる。それ以外にもドライブモードは用意されているが、選ぶにはセンターモニターを介する必要がある。

エコとコンフォート、スポーツ、インディビジュアルの4種類があり、パワートレインやステアリングの特性が変化する。ダイナミック・シャーシー・コントロール(DCC)装備の場合は、アダプティブダンパーも変化する。

スペインの一般道を走らせてみると、ID.7はパサートのように素直で活発で、運転しやすいことがわかる。軽くない約2.0tの車重を、巧みに包み隠している。0-100km/h加速時間などは不明だが、アイオニック6に迫ることは間違いなさそうだ。

アクセルペダルを少し深めに傾けた途端、55.4kg-mの最大トルクが放たれる。スポーツ・モードを選べば、驚くほどレスポンスは鋭い。速度が上昇しても、加速の勢いは衰えにくく、リアアクスルのトルクベクタリング機能が優れた回頭性を生んでいる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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