フォード・エクスプローラー・リミテッド

2013.01.15

大は小を凌ぐ

今月から担当する長期レポート車が切り替わった。フォードきっての人気モデル、エクスプローラーである。およそ10年にわたって生産された先代から何もかもが新しくなった現行型は、今年5月から日本導入が始まった。たとえばモノコックボディやV8をやめて3.5ℓV6のみのDOHCに絞ったエンジンラインナップ、シーケンシャル変速操作が可能な6段A/Tなどを積み、とても現代的なSUVに生まれ変わっている。

少し前、北海道までのロングドライブでとても印象がよかったのがきっかけだが、なかでも印象深かったのは、巨大なサイズをもってのみ達成できる美点が、きちんと美点として味わえたところだ。大きいクルマは数あれど、それが走りにおいて有効に作用していると実感できるクルマは、少なくとも僕が知る限り、そう多くないのだ。

エクスプローラーは全長が5mを2cmだけだが超え、全幅はちょうど2mだ。アメ車的にはフルサイズといえば全長5m台半ば以上、全幅2m強だから、ミドサイズかそれより小さいくらいになるのだろうけれど、動かしてみるとやはりフルといいたくなるサイズ感がある。左ハンドルのみの設定で、最初に試乗したクルマがETC車載器を装備していなかったため、高速道路の料金所や、あるいは有料駐車場の精算機ではしばらくのあいだ、右サイドの寄せ具合にかなり気を遣ったのを覚えている。さすがに今回はそれほど意識せずに乗れているが、それでも複数車線なのに車線幅の狭い道ではやや緊張する。自分がはみ出さないように走るのは苦でもないが、アウト側に並んだクルマがインカットすることを想定(ご承知だろうがこれが本当に多いのだ)すると、マージンがすごく少なくなるためだ。

そういう場面をのぞけば、このサイズがもたらす乗り味は本当に気持ちがいい。速度が上がるほどにそれは大きくなる。

ボディが大きいということは、4つのタイヤ同士の距離が遠いことを意味する。すると、路面のうねりでひとつのタイヤが上下に動かされたときに、ほかの3本がその影響を受けて上下動する量が、タイヤ間の距離が短いクルマに比べて少なくなる。これがフラットな乗り心地と快適さを生むのだ。全体の重量が増えて、相対的にバネ下が軽くなっている効果もあるだろう。

これがただ大きなだけのクルマだと、増えた車重にふさわしい容量を持ったダンパーを与えておらず、クルマ全体がふわついてしまったりする。あるいは重さに負けないようにと必要以上に動きを抑え込み、せっかくの大きさをフラット感につなげられていないクルマもある。そのあいだの絶妙な案配に、新型エクスプローラーはうまくチューニングされているのだ。

反面、やはり2.2tは重く、294ps/35.2kgmをもってしても出足は軽くない。もっとも、それだけ重いクルマなのだから、そんなに急加速できてもマズかろうとも思うし、踏み込めばそれなりに加速できるので、さほど不満でもない。ちなみに燃費はご覧のとおり。都内3割、高速半分、山道2割といった配分だから、意外に悪くない。レギュラー仕様なのもいい。

(AUTOCAR No.103 2011年10月26日発売号掲載)

見切りの妙

試乗会に出掛け、その途中でワインディング路を走ることになった。真っ直ぐ走っているぶんには前号でお伝えしたとおり、とにかく大きさからくる心地よさをみっちり満喫できるクルマだが、そういう道ではどうなのだろう。

まずはラインの自由度が小さい。同じ全幅2m級の12気筒ランボあたりと比べてもそう感じられる。それは当然で、こうした背の高いクルマの場合、遠方の視界はいいが、サイドのウィンドウラインの高さから直近の死角がとても大きくなるからだ。「きれいに走るには遠くを見るべし」とはよくいうが、それは遠くを見ていても視界の端に身のまわりの様子が入っているからであって、それが不十分ではおちおち遠くばかりを見てはいられない。そういうわけで、これはエクスプローラー特有の弱点というわけではないのだが、縦横の大きさよりも背の高さからくる走りにくさが感じられた。

また、地味にタイヤが悲鳴を上げるペースまで上げていくと、ステアリング操作とノーズの動きにタイムラグが目立ち始め、それを織り込んだ先読みが求められるようになっていく。やはり約2. 2tの車重はただごとじゃないんだなと実感する場面である。

けれど、そこまでペースを上げずに走っていると、意外にもコントローラブルで、それほど幅員の広くない曲がりくねった道でも不安なく、思いどおりのラインをトレースしていける。ブレーキの効きにもさしたる不満はない。

基本的には徹頭徹尾アンダーステアで、フロントを流れ出させてしまうと、少なくとも僕の技量では、すなわち一般的なドライバーではそう簡単にリカバーさせられない慣性があるから、これでぎゃんぎゃん走っていこうとするのは、どこかのネジが飛んでいる人に違いない。フォードはだから、そうなってしまってからの操縦性を意図的に見切って、そこまでの走行性能に回しているはずだ。普段の街中や高速道路、あるいは思いがけないワインディングの気持ちよさは、その見切り具合が絶妙だからこそ生まれているのだろう。だからといって、世界を代表するドイツ製ハッチバックのようにフロントが逃げたら一直線……というほど凄まじくはなく、なんとかしようと思えるくらいの粘り強さはある。この仕上げ、いやあっぱれです。

それはそうと、今月はもう少し軽いSUVからスポーティなセダンにハンドリング志向のクーペまで、割といろいろなタイプのクルマに乗る機会があった。そんな各車から乗り換えるたびに気になったのが、エクスプローラーのスロットル特性の特徴だ。具体的には、アクセルペダルに力を込め始めたところのパワーの出方で、エクスプローラーはグイと前に出たがる。他車に乗り換えた直後は青信号に変わったところで後続車からクラクションを鳴らされてしまうんじゃないかとドキッとする。当然、車重を考慮しての措置だろうし、実際に有効に機能していると思う。それに、このクルマばかり乗っていると気にならない程度にはうまくまとめられている。そこにまた感心した次第である。

(AUTOCAR No.104 2011年11月26日発売号掲載)

アメリカ的高性能

全盛期の勢いはないにしても、それでも日本は自動車大国だ。生産数だけでなく、文化的にもそうだと個人的には思う。日本で広く使われてひと段落した技術が、相応にアップデートされているにしても、数年遅れで欧州車のトレンドになっている例は少なからずある。ユーザーの嗜好にも、日本の後追いと考えるとわかりやすい部分はある。直噴ガソリンエンジンだったり小排気量ターボだったり、オートマの多段化だったり、このところのコンパクトサイズSUVだったり、懲りまくったシートアレンジだったり、もちろん最初に目をつけたのはほとんどがどこかの欧州メーカーなのだろうけれど、量産技術として確立していわゆる大衆車にまで広く適応したのは、日本なような気がしてならない。単純に生産規模や市場規模の違いでそう見えているだけだとしても、それならそうとして。

けれど、アメリカはちょっと違うと認めざるを得ない。僕に認められたからといってなんの権威も誇りもないだろうけれど、アメリカ車に日常的に乗る機会がぐんと増えたここ最近、頭ではなく身をもってそういうふうに感じている。

彼らは自分たちの所有物として日常的に、なければ生活が成り立たないレベルでクルマを考えているふうだ。できるだけブラックボックスの少ないシンプルな作りを目指し、1日の大半をそこで過ごしていられそう(車内生活するという意味ではなく移動するという意味で)なリラックス感というか刺激の少なさ、物理法則に正しくしたがっていると直感的に感じる動き方とか反応の返し方がある。それにどこかにちょいとぶつけたくらいなら自分で簡単に直してしまえる気がする組み付けや部品の汎用性には、この世から修理工場がなくなっても10年単位で使っていけそうな、ほったらかしでも壊れないという日本車的な意味とは違った信頼感を覚えてしまう。サバイバル耐性と置き換えてもいいかもしれない。以前までのモデルよりはるかに現代的なクルマになったエクスプローラーでさえ、そう感じさせるのだ。

たとえばこんなことがあった。撮影のために林道を走っていたら、フロントバンパーの下にあるリップスポイラーが、いつの間にか片側だけはずれて脱落しかかっていた。それだけを見るとチャチな造りともいえなくはないが、がっちり固定されていてバンパーごと外れるよりは確実にマシだし、破損したり傷が気になって交換する際に費用が安く済む。結局は勘合部分をはめ込んだら元通りになったのだから、リペア性も高い。それくらいのことをしているクルマは世界中にあるといわれるだろうけれど、なんだか感心した。

乗っていても、アメリカの大半の場所でそうであるような一本道では恐ろしく真っ直ぐ走る。そのまま走っていて忘れた頃にコーナーがやってきても、無意識に予想してハンドルを切ったとおりにノーズが動いてくれて修正舵がいらない。押さえつけられたような直進性ではなく、ぎゅんと曲がる高機動感たっぷりなコーナリングでもないが、それは間違いなく高性能だろう。

今回、それをもっと高い次元で確かめる機会があった。というわけで、次ページに続く。

(AUTOCAR No.105 2011年12月24日発売号掲載)

エクスプローラーでオーバルコースを走ってみた!

ツインリンクもてぎにやってきたのは、その日、マスタングの30台限定特別仕様車である6段M/T搭載の特別仕様車、パフォーマンスパッケージを試乗するためだった。そこで撮影のためと称して、エクスプローラーでもスーパースピードウェイつまりオーバルコースを走らせてもらった。真っ直ぐなハイウェイをひたすら走り続ける使用状況がまず念頭に置かれているであろうアメリカ車の動力性能を確かめるのに、ここほど打ってつけの場所はない。

あいにくの雨、というか一時的にはみぞれ状態にもなる空模様で、外気温は2℃ほどしかない悪条件ではあったものの、オールウェザータイヤ+4WDだからそれなりには走れるはず。というわけでコースイン、並走撮影のためにマスタングと抜きつ抜かれつを開始する。

並走というくらいだから、この撮影では2台が並んでコース上を真っ直ぐ走る必要があるのだけれど、オーバルコースはいわゆるサーキット以上に道幅が広く、真っ直ぐ走る明確な目安がない。コース外側の壁はあるが、遠いのであまり目安として機能しない。なので、濡れた路面の陰影から舗装の継ぎ目(とはいっても段差や隙間などがあるわけではなく、いわばサッカー場の芝生の模様的なもの)を見極め、それを頼りに走っていくことになったのだが、じつはもてぎのオーバルコースは、直線部分にもカント、すなわち左右方向の傾斜がついている。つまり、全周にわたってすり鉢状なわけだ。だから本来なら、常にステアリングに力を加えていなければコースに対して真っ直ぐは走れないはずだ。

なのにエクスプローラー、ほとんどクルマなりに真っ直ぐ走ってくれる。でも、とくにステアリングを支えている感覚はなく、それでいてステアリングがスティックしているかのような押さえつけられ感もない。手を離せばもちろん重力に引かれてイン側に下がっていくのだが、少なくともこの肉体的状況は、ステアリングを保持するために力を加えている感覚ではない。でありながら、マスタングとの距離を調節するためにクルマ半台分くらいの範囲で微妙にラインを変える操作にまるでストレスがない。レスポンスがいいのにゲインが穏やかなのだ。この感覚、持ち合わせているクルマはそう多くはない。

スロットルレスポンスもそうだ。前後方向の間隔もやはり微妙に調整する必要がある撮影なのだが、じわりと踏めば、ほとんどピッチングを感じさせずにじわりと前に出る。それでいて重ったるさは皆無だ。同じフレーズを繰り返すが、レスポンスがいいのにゲインが穏やかなのだ。

ピッチングのなさはブレーキングにも効いてくる。高速からの制動はそれなりの頻度で‘急’がつく操作になるものだが、その際にノーズがずんと下がるような動作をエクスプローラーはしない。すっとそのままの姿勢で、必要なだけの制動力が得られるのである。ノーズダイブが過度に出ると、ほとんどフロントブレーキに頼っているような感覚になり、制動能力に対する不信感のようなものが潜在意識に刷り込まれてしまう。そうなると、人によっては高速走行に無意識な嫌悪感が生じてしまうかもしれない。

こうした素直な応答性は、長距離を走る場合に本当にありがたい。刺激的ではないが正確で、本当の意味で意識せずに操作できる。ちなみにエクスプローラー、シートやステアリングホイールの位置調整機能のほかに、ペダルの前後位置調整もできる。それも電動で。おかげでほぼ完璧にしっくりくるポジションを取れるのだけれど、操作性のよさはそのおかげでもあるだろう。

それと、巡航時の音環境がいい。外界と隔絶されているタイプの静粛性ではないが、余分な音がない。頑張っているときには存在感をそれなりに主張するエンジンが、定常状態ではほぼ無口になる。ロードノイズも癇に障らない。超高速ではワイパーまわりから大きめのノイズが出るものの、そういうときは音が操作や集中力の妨げになる状況ではないので問題ない。

結局のところ、コースらしいレベルの超高速を出すチャンスはないままに終わったオーバル走行だったが、それでもエクスプローラーの高速巡航性能にますます信頼をもてた体験だった。

(AUTOCAR No.105 2011年12月24日発売号掲載)

VIP気分

年末の買い出しで、身分相応の庶民的なスーパーに、身分不相応に立派なエクスプローラーで出掛けた。そこには店の規模からするとそこそこの台数が置ける駐車場があるのだけれど、いかんせん、1台分の枠があまり広くない。少なくともこのクルマにとってはあと20cmくらいは幅がほしい。年末セール中らしく駐車場は混雑していて、空き待ちの短い列に並ぶことになったのだが、いざ自分の番になって少しうれしいことがあった。誘導員が1台分ではきついととっさに判断してくれて、2台分の枠を使うよう指示してくれたのだ。ちょっとしたVIP気分である。頑張って1台分のスペースに駐めたのだが。

いや、頑張ったというのは言葉の綾というやつで、実際にはそれほど頑張ってはいない。エクスプローラーにはリヤビューカメラが全車標準装備されているからだ。しかもこのカメラがなかなかわかりやすい。左右幅をのほかに、クルマのセンターを示すガイドラインが画面上に出るのだが、それで角度合わせがとても楽なのだ。後方の障害物に対しても、ギリギリまで寄せられるような画角になっている。映像もクリアだ。

それともうひとつ、エクスプローラーは意外に小回りが利く。具体的には最小回転半径が5.8mしかない。絶対的には小さくないが、ボディサイズからすれば望外の数値である。なおかつ最大舵角が大きい。これと側方を確認しやすい大型のミラー、そしてキノコミラー代わりのボディサイドカメラ(モニターは助手席側のAピラー内側に設置されている)を組み合わせれば、まさに自由自在に取り回せるのである。

日本フォードいちの売れっ子ブランド品だから、機会があれば所有して乗ってみたい人は実際のオーナー数を普通よりはるかに上回る数でいるはずで、でもサイズの問題が……という人もまたそのうち少なくない割合でいることだど思う。けれど、そういう人に声を大にして伝えたい。普段の駐車場が寸法的要件を満たしているなら、サイズでそんなに困ることはないと。

もしも7人が乗れるクルマをお求めなら、だからエクスプローラーはお薦めしたい物件だ。7人が乗れて、その人数分の荷物を積むとしたら、必然的にこれに近いサイズになる。実際、国産の大型ミニバンは、エクスプローラーより全長と全幅が約15cmほどずつしか小さくない。その差が大きいといえば大きいが、それが取り回しのしやすさを指していっているのであれば、前述のとおりエクスプローラーは優秀だ。

そして何より、3列目シートのアレンジがすべてボタンひとつで自由自在なのがいい。背もたれの前倒しからフルフラットから着座姿勢への復帰まで、ラゲッジスペースにあるボタンひとつですべて電動操作できるのだ。こちらは残念ながらリミテッド専用の装備だが、3列目までシートを使う機会がそれなりにあるのなら、それだけでXLTではなくリミテッドを薦めたい。

さて、買い出しの帰り。ガソリンスタンドに立ち寄った。「レギュラー満タン、レギュラーね」と二度もいったのに、領収書を見るとハイオクだ。こういうVIP気分はうれしくない

(AUTOCAR No.106 2012年1月26日発売号掲載)

惚れ直し

エクスプローラーが編集部にやってきてから4カ月が経過した。あちこちの取材へと、とくに問題もなく活躍してくれていたのだが、とある事情から一時的に里帰りすることとなった。繰り返すけれどとくに問題はない。けれどせっかくなので、定期点検や“MyFord Touch™ ”のソフトウェアアップデートなどをやってもらうことにして、そのあいだの代車にマスタングの5.0ℓモデルをお借りした。

2010年4月に25台限定で発売された5段M/TのGTパフォーマンスパッケージを長期テスト車として担当していた経験がありながら、恥ずかしながら5.0ℓモデルはこれが初体験だ。ただし今回は6段A/Tである。このA/Tがまたずいぶんと燃費志向のプログラムになっていて、普通に走っているとほぼ2000rpm以下しか使わない。意識的にグイッと右足に力を込めなければ、400psオーバーの力を秘めているとは思えないほどジェントルなのだ。もっとも、それでなんのストレスもなく走れてしまうのが5.0ℓ418psの底力なのだろうし、グイッとやってしまえば好きなだけスキール音を奏でられるのだけれど。

そんな具合に5.0ℓを得てパワー方面での自由度が1ランク上がったマスタングだが、同じくらいに気になっていたのが電動アシストになったパワーステアリングだ。何しろ5.0ℓ化以前のモデルのそれは、自分のなかでリファレンスのひとつにしていたほどの傑作だった。

判定としては、残念ながら従来と同等とはいえなかった。悪いものではないけれど、切り始める瞬間のなめらかさが少しだけ落ちている。機械的にそうであるように、アシスト力変化の曲線がアナログではなくてデジタルであり、それがうっすらと感じ取れてしまうのだ。無から有への切り替わりがシームレスじゃない感じだ(実際には有から有なんだろうけれど)。1時間運転していても気になる瞬間がなかったりするくらいなので、電気アシスト同士を横並びで比較するならかなり自然で出来はいいと思う。

そんなこんなで楽しみながらマスタングで2週間ほど過ごし、いよいよエクスプローラーご帰還の日を迎えた。そして乗り換えて思った。やっぱりエクスプローラーには、大きさからくるよさがみっちりと詰まっている。

どちらが好きかと問われれば、マスタングのほう。最大の理由は着座位置が高いのが生理的に苦手だから。にもかかわらず、そんな人間にもいいクルマだと思わせてしまうエクスプローラー最強の美点、それが、大きいことでしか得られないよさが走りに全面的に出ているところだ。

大きくなれば、取り立てて細工をしなくてもボディに落ち着きが出る。サスペンションアームが長く取れるから、重くて背が高いのにコーナーでもグラッとこない。今、ミニバンに乗っていて、乗せているお子さんがクルマ酔いして困っている方は、ぜひ、子ども同伴でフォード販売店へ試乗しに行ってみてほしい。それに、新しく追加されたエコブーストなら燃費も国産大型ミニバンと遜色ない……ってモリケータさんのインプレのまとめと同じか。面目ない。

(AUTOCAR No.107 2012年2月25日発売号掲載)

フォードとは?

「フォードのイメージって、でかいトラクターなんですよね。子どもの頃に身近にあったから。だからプロの道具というか、信頼性を感じるというか」とは、あるカメラマンの方から聞いた話。5年くらい前、取材で八郎潟に行ったとき、そこのやたらに広い畑でそういえばフォードのトラクターを見たのを思い出した。確かにプロの道具というか、屈強な機械というか。こういうので畑仕事をする国に、そりゃあ戦争したって勝てないよな……などと、なぜだかふと思ったりした。

一方、僕はというと、マツダのディーラーで販売されていた頃のクルマたちが、フォードに対するブランド・イメージの根っこにある。ちなみにうちの父はテルスターに乗っていた時期がある。「ガイシャだぞ」なんて言いながら。ウソではなかもしれないけれど、僕は心の中でニヤリとしていた。「でも作ったのはマツダでしょ?」と。そういうわけで僕は、セミ外車というか日米のハーフというか、あまりいい意味ではない微妙な感じでフォード車をとらえていた。

それが少し変わったのが、自動車雑誌業界の末席に加えてもらい、ほかのフォード車を試乗させてもらったときだ。日米ハーフから「まさにアメ車」になったのである。欧州車のような緻密な作り込みよりはサバイバル性、言い換えれば高度なメンテナンスを受けずともエンジンやボディが寿命をまっとうするまで乗り続けられそうなシンプルさがとても印象的で、“お隣は砂漠”的な土地ではこういうクルマじゃないと生きていけないのだろうなと、素直に感心したのを憶えている。

それからしばらくして、欧州フォードのハイパフォーマンス軍に触れ、またしてもフォードに対するイメージが変わる。作り込みや走りの仕立ては当たり前ながら徹頭徹尾欧州車で、しかもそのレベルが妙に高い。微妙なチューニングに頼るのではなく、骨格をしかるべく設計し、テクニックではなく素性で気持ちよく走らせる米国フォードのクルマ観が芯にありながら、欧州らしい職人仕事がそれを磨き上げた感じだった。

そして近年。以前に長期テスト車としてともに過ごしたマスタングや、今現在、日々の相棒としているエクスプローラーに触れ、またまたフォード車に対するイメージは変わった。“生き残れるシンプルさ”の次元が上がり、シンプルにして高精度というか、許容誤差を大きく見込んでいるのに製品にバラつきがないというか、そういう感触だ。複雑な電子制御技術でなかば自動運転化している=ソフトウェアに大きく依存している多くの今どきのクルマたちとは違い、フォードのクルマは骨格で走る=ハードウェアで勝負している感じがする。気持ちいい。違和感がない。

電子制御技術が満載のクルマで育った若い人たちにそんな類の気持ちよさとか違和感とかを説いてみても、それほど共感は得られないかもしれない。ただ、ディーラーでの試乗でもかまわないから、クルマが好きなら一度はフォード車に触れてみたほうがいい。きっと世界が広がるから。

2回目となるフォード車の長期テストレポートは今回で終了となるが、いまだに乗るたびにエクスプローラーには感心する。名残惜しい。

(AUTOCAR No.108 2012年3月26日発売号掲載)

 
最新海外ニュース

人気記事