加速時はリアタイヤが「右往左往」! カレラRSR 2.1ターボ 935/78 GT1 911を3台乗り比べ(3)

公開 : 2024.04.20 17:47

記念すべき911 カレラRSR 2.1ターボの登場から50年 レース常勝といえたフラット6ターボ フランス伝統のル・マンで活躍 英編集部が代表的レーサー3台を乗り比べ

水冷の3.2L水平対向6気筒ツインターボ

ポルシェ935/78は早々に引退したが、911 ターボの開発は止まらなかった。市販車では、四輪駆動の959が登場し、911は964型へ進化。そして1998年に登場したのが、1990年代半ばに復活した国際スポーツカーレースへ焦点を合わせた、911 GT1だ。

ファクトリーチームとして、トップカテゴリーでの勝利から遠のいていた当時のポルシェは、トヨタメルセデス・ベンツと伍するには有能なGT1マシンが必要だと判断。ヘルベルト・アンフェラー氏の指揮のもと、1995年に開発がスタートしている。

ポルシェ911 GT1(1998年)
ポルシェ911 GT1(1998年)

実戦投入は1996年から始まったが、1998年仕様では大幅な刷新が図られた。レギュレーションを解読しつつ、技術者はゼロから再設計。ホモロゲーション・マシンとして、レーシングカーから派生した極めて高性能なロードカーも、1台製作された。

ミドシップ・シャシーは、ポルシェとして初となる、カーボンファイバー製モノコック。ブレーキディスクには、カーボンセラミックを採用した。コンピュータを活用し、カーボン製ボディの空力特性も入念に煮詰められた。

新しいモノコックの中央に載ったのは、プロトタイプ・レーサーのポルシェ962由来となる、水冷の3.2L水平対向6気筒ツインターボ。かくして、1998年のル・マン24時間レースへの準備が整えられた。

R390 GT1とF1 GTRを抑え1-2フィニッシュ

予選では、メルセデス・ベンツCLK-LMとトヨタGT-ワンが快走。ポールポジションを前者が、セカンドポジションを後者が掴んだ。911 GT1は、4番手と5番手からのスタートとなった。

とはいえ、本戦は甘くない。2台のCLK-LMは、ウォーターポンプの故障でリタイア。GT-ワンは、トランスミッションの不調で姿を消した。

ポルシェ911 GT1(1998年)
ポルシェ911 GT1(1998年)

2台の911 GT1は堅調に周回を重ね、日産R390 GT1とマクラーレンF1 GTRを抑え、1-2フィニッシュ。ポルシェとして16回目となるル・マンでの総合優勝と、最後となったGT1クラスでの優勝という、見事な記録を勝ち取っている。

以降、ポルシェはしばらくル・マン24時間レースから姿を消すが、市販車の911は993型から996型へモデルチェンジ。異論を呼んだ水冷エンジンではあったが、勝利が販売を後押ししたことは間違いない。

実際のところ、911 GT1と996型の911で、共通点が多かったわけではない。涙目のヘッドライトを備えるが、他に同じ部品といえたのは、テールライトとドアハンドル程度。ガルウイングドアを開くと、カーボン製モノコックが姿を現す。

コクピットは狭く、運転席からの視界は限定的。右手には、6速シーケンシャル・マニュアルのシフトレバーが突き出ている。ロードカーも作られたとはいえ、間違いなく本格的なプロトタイプレーサーだ。ルーフは低く、ドライバー交代は手間取っただろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ニール・ウィン

    Neil Winn

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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