530dのステアリングは重く、ダブついているのと裏腹にXFは鋭敏で生き生きとしている。530dはコーナーの入り口でグッと力をいれないとステアリングが切れないのに対して、XFは繊細に、しなやかにエイペックスをなめていく。さらにXFは舵角が大きくなるにつれて重みが優美に増していき、センター付近に戻すとナチュラルになる。

たっぷりとしたトルクと優れたスロットル・レスポンス、さらに絶妙なグリップ・レベルゆえ、リア・アクスルと密なコミュニケーションができるのが両者の特長であるが、ダンピング／繊細なホイール・コントロールのしやすさもXFが優っている。さらにグリップが速度や舵角に依存しにくいため、より細やかな調整ができる。

XFは ‘ナチュラルなアスリート’ と表現できよう。しなやかなスプリングと努力なしで得ることのできるスピードのおかげで、日常的に高速道路を走っているだけでも満たされた気持ちになる。これに対する5シリーズは、腕に覚えのある ‘玄人向け’ といってもいいかもしれない。

冒頭部分で、XFは大きく変わっていないと書いた。
これは褒め言葉である。歓迎すべくニュースである。

ナチュラルでコミュニケーティブな操舵フィールとサスペンションの懐の深さは、ドライビング愛好家でさえ満足できるはず。やや効率で劣るエンジンや一流とはいいがたいキャビン・スペースは、この際黙認してもいいくらいに満足できる。

まだAUTOCARは徹底的なテストを行っていないが、先代の欠点を改めた点、乗り心地とハンドリングに見られる先代からの進化、そして競争力の高いエンジンと優れた実用性は、既存のエグゼクティブ・サルーン・クラスのランキングを徹底的に塗り替えることになるはずだ。

もちろん重箱の隅をつつくようにディテールをみれば、こまごまとしすぎたタッチスクリーンや素材の仕上げなど修正して欲しいところはあるのだが、時間が経つにつれてジャガーの製品品質はレベル・アップすることを知っている。

よって、良点の ‘強化’ による圧勝であった。

(マット・ソーンダース)

ジャガーXF 3.0d S

価格	£49,950(936万円)
最高速度	249km/h
0-100km/h加速	5.8秒
燃費	18.2km/ℓ
CO2排出量	144g/km
乾燥重量	1750kg
エンジン	V型6気筒2993ccツイン・ターボ・ディーゼル
最高出力	300ps/4000rpm
最大トルク	71.3kg-m/2000rpm
ギアボックス	8速オートマティック

BMW 530d Mスポーツ オート

価格	£44,465(833万円)
最高速度	249km/h
0-100km/h加速	5.8秒
燃費	18.2km/ℓ
CO2排出量	144g/km
乾燥重量	1785kg
エンジン	直列6気筒2993ccツイン・ターボ・ディーゼル
最高出力	259ps/4000rpm
最大トルク	55.0kg-m/1500rpm
ギアボックス	8速オートマティック