【5か月だけの豪華仕様】シトロエン2CV AZAMエキスポート ルノーR4に対抗 後編

2020.10.25

サマリー

さまざまな仕様が存在したシトロエン2CVですが、特に高級に仕立てられたモデルがAZAM。さらに数か月のみが作られたのが、AZAMエキスポートです。ルノーR4に対抗するために生まれた、貴重な1台をご紹介しましょう。

もくじ

シートもカンバストップもオリジナル
ソフトな足におっとりした走り
番外編:ほかにもあった変わり種2CV

シートもカンバストップもオリジナル

text:Jon Pressnell(ジョン・プレスネル)
photo:Olgun Kordal(オルガン・コーダル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
いま見るシトロエン2CVは、その個性的な雰囲気が愛らしい。多少の欠点もチャームポイントに感じてしまう。

今回ご紹介する、AZAMエクスポートは特別。クロームリングが付いたアミ6用のシフトノブ1つとっても、オーナーの自慢のタネになっている。何しろ製造は1967年4月から8月までの、5か月程度。現存するAZAMエクスポートはほとんどない。

シトロエン2CV AZAMエキスポート(欧州仕様)
シトロエン2CV AZAMエキスポート(欧州仕様)

このクルマには、当時物のオリジナルの内装が残っている。傷の少ない、ガラと呼ばれたホイールキャップも付いている。

エルベ・ショーヴィンが現オーナーのAZAMエクスポートは、1967年6月に、彼の祖母が購入した。それより以前は、よりベーシックなAZLに乗っていたという。そちらも、1995年にエルベ兄弟が1995年に譲り受けている。

このAZAMエクスポートの走行距離は、約7万km。シートだけでなく、カンバストップも新車時のまま。前部分がセパレートになった、オプション仕様だ。

2004年に純正色のグリス・ローズに塗り直されている。この手のクルマでは珍しいほど新車時のような状態で、コンディションは抜群。そして確かに、標準の2CVよりスマートにも見える。

明るいボディ装飾が、全体の雰囲気を華やかにしている。オレンジ色の内装が、豪華に感じさせる。ダッシュボードも、トラクターのものと見間違えることはない。年老いているが、若々しさが残っている。

ソフトな足におっとりした走り

走らせてみる。さした驚きはなかった。「出せるスピードの限度は低いです。日曜日にのんびり流すのには悪くありませんが、日常的に乗るのに適しているとはいえませんね」。オーナーのエルベが話す。

筆者が柔らかい運転席に座ると、AZAMエクスポートはそっと車高を落とした。間違いなく、2CVらしい。

シトロエン2CV AZAMエキスポート(欧州仕様)
シトロエン2CV AZAMエキスポート(欧州仕様)

1966年、シトロエン2CVはフロントへ慣性摩擦ダンパーを残したまま、リアには伸縮式のダンパーが与えられている。それでも乗り心地は、記憶の通りソフトだった。

コツを掴むまで、遠心クラッチを介しての変速は、集中していないと難しい。しかし1000rpm以下なら、クラッチペダルを踏まずとも変速が可能だ。

動的性能は、良くいえばおっとり。エンジンの回転数を高く保たないと、走りにくい。これも2CVならではの必要なドライビング・スキルだといえる。

そのかわりブレーキもステアリングも、特に問題は感じない。ドライブシャフトが生む悩みもない。

筆者が2CVに乗るなら、1970年に追加となった後期型の602ccを選びたい。もちろん、この1960年代の2CVのルックスも、魅力的。リップスティックが似合うような、都会的なスマートさはある。かといって、訴求力で勝るわけでもない。

おめかししたシトロエン2CV AZAMエクスポートを、エルベは心底大事にしている。彼の家族に売ることすら、当面はないだろう。

 

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