逃げるために使われたクルマたち

犯罪者の逃走に自動車が使われるようになったのは、1911年のフランスが最初と考えられている。悪名高い犯罪者集団ボノー・ギャングが、武装強盗の現場から逃げる際にドローネ・ベルヴィル（Delaunay-Belleville）を使用したのだ。その後数か月間にわたって、同様の強盗事件が続いたという。

今回は、世界の犯罪史を振り返りつつ、「逃走」や「追跡」に適したクルマを紹介する。人気ドラマや映画に登場する「あのクルマ」たちも見ていこう。

……えっ、逃げる予定がある？ 悪用厳禁ですよ。

ジャガーMk2

ジャガーMk2は、1959年に発売されるや否や、お急ぎの犯罪者に好まれるところとなった。高速で軽快、かつ4～5人の屈強な男が乗れるスペースと「戦利品」を入れるトランクを備えており、逃走用車両としては理想的なのだろう。3.8Lエンジンを搭載したバージョンは、最高速度200km/hを記録した。

ジャガーのお膝元、英国の警察も犯罪者に置いてけぼりを食らわないよう、すぐにMk2に目をつけ、パトカーとして採用。ねずみを捕まえる「猫」として愛用された。Mk2は、逃げるクルマ、追いかけるクルマ、どちらにも最適だった。

フォード・シエラRSコスワース

欧州で人気を博したフォード・シエラRSコスワースは、いわば新世代のジャガーMk2である。簡単に盗むことができるし、4～5人が乗れるスペース、盗んだブツを入れるトランク、そしてパトカーを出し抜くのに十分なスピードを持つ。英国警察が使用していたローバーSD1やヴォグゾール・セネター24バルブも、加速力では負けていなかったが、ハンドリングは別次元だった。

1990年代前半でも、3ドアのコスワースと4ドアのサファイアは、強盗犯の逃走車としてよく使われていたようだ。今日では、強盗の収入よりもクルマ自体の価値の方が高いと思われる。

ランドローバー・レンジローバー

逃走ルートがオフロードであったり、パワーが必要だったりする場合、レンジローバーが最適解となる。ダニエル・クレイグ主演の2004年の映画『レイヤーケーキ（原題：Layer Cake）』では、真っ黄色のP38a 4.6 HSEが目を引いた。

あるいは、ドイツのニュルブルクリンク・サーキットを制覇したレンジローバー・スポーツSVRも理想的だ。8分14秒で、お帰りになれるはず。

ミニ・クーパー

金塊強盗を成功させるために必要なものは何か？ 赤、白、青の3色のミニ・クーパー、黒幕、渋滞に次ぐ渋滞、そしてベニー・ヒル（コメディアン）だ。1969年の映画『ミニミニ大作戦（原題：The Italian Job）』でのミニの活躍を知る人も多いだろう。

2003年には、マーク・ウォールバーグ、シャーリーズ・セロン、ジェイソン・ステイサムが最新のBMWミニ3台を使って、ロサンゼルスで大胆な強盗を実行するという内容でリブートされた。ステイサムは元F1世界チャンピオンのデイモン・ヒルからトレーニングを受けたと語ったが、出演者たちは皆揃ってセロンが最高のドライバーであると認めている。

画像　カーチェイスに使われた世界の名車【ジャガーMk2やインプレッサWRXなどを写真で見る】　全97枚