詰めは甘いが優れるコスパ ワインディングを楽しめる電動SUV スマート#3へ試乗(2)

公開 : 2023.12.12 19:06

新体制での量産車第2段となる#3 プラットフォームはボルボEX30と同じSEA ワインディングを楽しめる操縦性 詰めの甘い部分も少なくない 英国編集部が評価

課題が残る回生ブレーキの制御

スマート#3のドライビング体験は、なかなか印象的。基本的なシャシーのハードは#1と同一ながら、サスペンションのスプリングレートとダンパー、ステアリングのレスポンス、スタビリティ・コントロールなどへ、独自の設定が与えられている。

シングルモーターの#3でも、アクセルレスポンスは良好。発進直後から太いトルクが生み出される。80km/hを過ぎた辺りから顕著にパワーは細くなるが、#3のようなコンパクト・クロスオーバーとしては必要充分。ツインモーターの必要性は感じにくい。

スマート#3 プレミアム(欧州仕様)
スマート#3 プレミアム(欧州仕様)

ドライブモードには、エコ、コンフォート、スポーツの3種類がある。ツインモーターの#3 ブラバスには、ブラバス・モードも付く。

デフォルトのモードはコンフォート。そのままでも、アクセルペダルの角度へリニアな、勢いの良い加速を引き出せる。スポーツ・モードでは、反応が少し過剰なほど鋭くなる。ブレーキペダルの反応も自然といえる。

しかし、回生ブレーキの制御には課題が残るだろう。タッチモニターを介して効きの強さを変更できるのは良いのだが、アクセルペダルから足を離して実際に減速が始まるまで、数秒間の空白時間が存在する。

結果として、ブレーキペダルを頼る場面が増え、回生ブレーキが利き出すと、滑らかな減速を乱してしまう。運動エネルギーの効率的な回収も、妨げるといえる。

ワインディングを楽しめる後輪駆動の操縦性

操縦性は、テスラモデル3へ似た印象。ホイールは19インチか20インチを選べ、タイヤの幅が広く、グリップ力は充分以上ある。

シングルモーターでは、後輪駆動らしいコーナリング特性をほのかに感じる。横方向の姿勢制御は引き締まり、271psを活かしたコーナリングへ興じれる。

スマート#3 プレミアム(欧州仕様)
スマート#3 プレミアム(欧州仕様)

ただし、ステアリングのチューニングは、シャシーの能力を完全に引き出そうという誘惑へ水を差す。ステアリングホイールの重み付けには一貫性が足りず、切り始めに曖昧な領域があるためだ。

それでも、スタビリティ・コントロールの効きを弱くすると、秘めた活発な側面が顕になる。引き締められたシャシーは、リアアクスルへ掛かる不足ないパワーを受け止め、意欲的にフロントノーズの向きを変えていける。

フロントタイヤが外側へ流れ出す前に、グリップを活かしバランスを整えることも可能。電子アシストは完全にはオフにならず、コーナリングスタンスの自由度には制限があるとはいえ、一般的な電動クロスオーバーよりワインディングを楽しめる。

サスペンションは硬め。強い入力が加わると少し突っ張り、ストロークを使い切れていない様子。とはいえ、鋭い隆起部分などでは細かな振動を残すが、衝撃吸収性は悪くない。全般的に、乗り心地は快適で落ち着いている。

今回の試乗では、シングルモーターとツインモーターの両方を試したが、66kWhの駆動用バッテリーでの航続距離は、前者が450km、後者が402kmとなった。暖かく好条件ではあったが、カタログ値へ近いといえる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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