アンバランスなパワフルさ スマート#1 ブラバスへ試乗 筋肉増強剤を飲んだ小動物

公開 : 2023.09.08 08:25

新体制のスマートから強力なバッテリーEV、#1 ブラバスが登場。四輪駆動で428psのクロスオーバーを、英国編集部が評価しました。

小動物が筋肉増強剤を飲んだようなクルマ

スマート#1 ブラバスへ初めて試乗したのは、2022年9月。まだプロトタイプの状態だったとはいえ、少しまとまりが悪いかもしれないな、というのが率直な印象だった。

時流に即したバッテリーEVのコンパクト・クロスオーバーでありながら、最高出力は428ps。ブラバスという銘柄を裏切らない、0-100km/h加速3.9秒という鋭いダッシュ力を秘めつつ、シャシーは快適志向で焦点が定まっていないように思えた。

スマート#1 ブラバス(英国仕様)
スマート#1 ブラバス(英国仕様)

その後、タイヤはダンロップ・スポーツマックスへ置き換えられている。しかし、サスペンションは改良されておらす、引き締まった操縦性を得たわけではないようだ。

#1 ブラバスは、可愛らしい見た目でありながら、荒々しく加速する電動クロスオーバー。小動物が筋肉増強剤を飲んだような、そんなクルマだ。

スマートについておさらいしておくと、メルセデス・ベンツジーリー・ホールディング・グループによる合弁事業が立ち上がり、新たなバッテリーEVメーカーとして再始動したのが2019年。この#1は、新体制下での量産車第1号となる。

製造を担うのは中国の工場。丸みを帯びたボディの内側には、ボルボEX30も採用する、バッテリーEV用のプラットフォームが隠れている。

英国価格は、前輪駆動で271psを発揮するベーシックな#1で3万5950ポンド(約650万円)から。エントリー・グレードは、プロ+と呼ばれている。

航続距離は399km サイズ以上に車内は広々

今回試乗したのは、パワフルに仕立てられた#1 ブラバス。ツインモーターの四輪駆動で、英国価格は4万3450ポンド(約786万円)から。従来のスマートと同様に、特別な高性能仕様となる。

#1 ブラバスの場合、リア側の駆動用モーターに加えて、フロント側にも156psの駆動用モーターが積まれる。ただし、駆動用バッテリーの容量は62kWhで変わらず、航続距離は399kmがうたわれる。

スマート#1 ブラバス(英国仕様)
スマート#1 ブラバス(英国仕様)

急速充電能力は、DCで150kWまで対応。ACでは22kWまで許容する。ミドルグレードの#1 プレミアムと同じく、エアコンはエネルギー効率に優れたヒートポンプ式が採用される。

ブラバスのインテリアは特別仕立て。車内空間は、全長4270mm、全幅1822mmというサイズを考えると広々。着座位置は低めで、ルーフラインが高く、頭上空間にはかなりゆとりがある。

リアシートは、背もたれがリクライニングするだけでなく、スライドも可能。荷室は、テールゲートの開口部が狭め。床面も高い。充電ケーブルをしまうのにちょうどいい、収納が設けられている。

ダッシュボード上に据えられる、12.8インチのインフォテインメント用タッチモニターと、ドライバー正面の小さなメーター用モニターのグラフィックは見やすくカッコいい。スマートフォンとのミラーリング機能も備わる。

ステアリングホイールにはヒーターが内蔵される。ただし英国仕様の場合、後日のソフトウェア・アップデートで利用可能になるという。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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