伝統のロータリーエンジンが830ccにて復活 マツダMX-30ロータリーEV 新規開発の8C型搭載

公開 : 2023.12.13 17:45

合理的なだけではなく、感性に訴えるものがある

しかし、試乗してみてわかったのは、理屈や合理性だけのクルマではないということであった。フィーリングや、感性といったものも大切にしているクルマであるのだ。

走り出して、最初に感じるのは乗り心地の良さ。実は「MX-30 R-EV」は重い。車両重量は1780kgで、エンジン車の1460kgどころか、EVの1650kgよりもヘビー級なのだ。それでいながら、足は突っ張っておらず、逆に重さを安定感のように使っているようだ。

マツダMX-30ロータリーEV
マツダMX-30ロータリーEV

しかも、重さを感じさせない軽快さがあった。面白いほど、気持ちよく回頭する。まさに人馬一体感が得られるのだ。

その理由には、マツダならではのこだわりのハンドリング部分を煮詰めた結果でもあるだろう。また、e-GVCプラスという車両制御技術の存在も大きい。モーターのトルク特性を使って、コーナーへのアプローチから脱出まで、前後左右上下方向のG変化をシームレスにつなげて、まるで運転の腕前が1ランク上がったようにサポートしてくれるのだ。

さらに、音量が抑えられていたもののEVサウンドも貢献している。EVサウンドは、エンジン音のかわりにマツダが独自に作り上げた音だ。

トルクにあわせて、そのEVサウンドをドライバーに聴かせることで、モーターの回転や負荷を知らせてくれる。クルマとドライバーが対話できることで、人馬一体感を得る手助けとなるのだ。

最高出力170psは驚くほどのパワーではないけれど、それでも走りは、十分にスポーティであり、ファンと呼べるものであった。

ロータリー・エンジンのフィーリングは?

走行モードは「EVモード」(バッテリー充電率SOC0%までバッテリーの電力優先で走る)/「ノーマルモード」(SOC45%を維持して、モーターとエンジンを使い分ける)/「チャージモード」(設定したSOC%まで充電を優先する)の3つが用意される。またシフトノブの横にあるボタンで走行中に変更することもできる。

ちなみに「EVモード」であっても、アクセルペダルを奥まで踏み込み、いわゆるキックダウンボタンを押し込むとロータリー・エンジンが稼働して電力供給を始める。その時のエンジン音と振動は、ごくごくわずか。気を配っていないと、EVサウンドやタイヤノイズの向こうに埋もれてしまうほどだ。

マツダMX-30ロータリーEV
マツダMX-30ロータリーEV

ロータリー・ファンであれば、じっと耳を澄ましてみよう。加速感とEVサウンドの向こう側に、ロータリー音と細かな振動を感じることができる。大排気量のシングル・ローターということで、意外と図太く、低い音だ。これが新世代のロータリー・エンジンとなる。

個人的には、この新しいパワートレインが「MX-30」に最初に搭載されたのも良いことだと思う。

「MX-30」は「わたしらしく生きる」をコンセプトにした、新しい価値観を提案するクルマである。観音開きのドアを採用することで、クーペのような流麗なスタイルを得ているし、内外装のデザインも独自のユニークさがある。

ガチガチの理論と合理主義だけでなく、感性も決して疎かにしていない。そのバランス感の良さがこのクルマの良さと言えるだろう。頭とハートの両方で魅力を感じるクルマであった。

試乗車のスペック

価格:423万5000円(税込 オプションなし)
全長×全幅×全高:4395×1795×1595mm
駆動方式:FF
車両重量:1780kg
パワートレイン(発電用):水冷1ローター830cc
使用燃料:ガソリン
最高出力:72ps/4500rpm
最大トルク:11.4kg-m/4500rpm
モーター:MV形交流同期発電機
モーター最高出力:170ps/9000rpm
モーター最大トルク:26.5kg-m/0-4481rpm
タイヤサイズ:215/55R18(フロント)215/55R18(リア)

マツダMX-30ロータリーEV
マツダMX-30ロータリーEV

記事に関わった人々

  • 執筆

    鈴木ケンイチ

    Kenichi Suzuki

    1966年生まれ。中学時代は自転車、学生時代はオートバイにのめり込み、アルバイトはバイク便。一般誌/音楽誌でライターになった後も、やはり乗り物好きの本性は変わらず、気づけば自動車関連の仕事が中心に。30代はサーキット走行にのめり込み、ワンメイクレースにも参戦。愛車はマツダ・ロードスター。今の趣味はロードバイクと楽器演奏(ベース)。
  • 撮影

    小川和美

    Kazuyoshi Ogawa

    1986年生まれ。クルマ好きの父親のDNAをしっかり受け継ぎ、トミカ/ミニ四駆/プラモデルと男の子の好きなモノにどっぷり浸かった幼少期を過ごす。成人後、往年の自動車写真家の作品に感銘を受け、フォトグラファーのキャリアをスタート。個人のSNSで発信していたアートワークがAUTOCAR編集部との出会いとなり、その2日後には自動車メディア初仕事となった。
  • 編集

    AUTOCAR JAPAN

    Autocar Japan

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の日本版。

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