タシェック・レノヴァティオT500

公開 : 2012.07.12 19:00  更新 : 2015.06.17 15:54

■どんなクルマ?

スロベニア初のスーパーカー、タシェック・レノヴァティオT500だ。まったく新しい会社からリリースされた、まだデザインも優れているとはいえないクルマだが、その価格は300,000ユーロ(2,970万円)という価格が付けられている。確かに高い。しかし、この新しい会社にチャンスを与えてあげることは必要だ。

まずは、あまり役に立たないだろうが、その簡単な歴史から。創始者、アルジョサ・タシェックは、かつてレーサーだった。しかし、彼のビジネスはすぐにクルマの製造になる。K1アタックと呼ばれたマシンを製造し販売し始める。しかし、そのK1アタックに搭載されていたフォードV6エンジンはあまりに遅くエンジン高が大きく、グラスファイバーのボディは重く不正確な出来であった。本当に、彼が作りたかったのは、そんなクルマではない。

そこで、チューブラー・スペースフレーム・シャシーを持ち、80%以上がK1アタックとはパーツを共用しないマシンを造り上げた。エンジンはアウディRS4の4.2リッターを移植し、S5の6速マニュアルが組み合わせられた。そのデザインは、より長く、より幅広く、より低くなり、その素材はカーボンファイバーとなった。

スロベニアはスーパーカー製作については、あまり豊かな技術をもっていない。しかし、フェラーリのコンポジット・ボディ・パネルはこのスロベニアで製造されている。また、ドゥカティのパネルやポルシェのセラミック・ブレーキ、アカラポヴィック・エグゾーストもここで造られている。つまり、カーボンファイバー、セラミック、チタンの専門家がいたのだ。そこで、タシェックは彼らの協力を求めたのである。

レノヴァティオT500は、スーパーカーとしては標準としかいいようのない444bhpのエンジンを搭載する。しかし特筆すべきは、その1090kgという乾燥重量だ。ほとんどのスーパーカーは重すぎてサーキット向けではないとタシェックは考えた。これには同意する。

レノヴァティオT500は、サーキット志向のマシンであり、スーパーカーであるというのは付加価値でしかないのだ。

タシェックには余計な野望はない。彼らは非常に慎み深いのである。トップ・スピードが310km/h、0-100km/h加速が3.7秒、それも1速ギアで100km/hに到達するという性能を持つ
レノヴァティオT500だが、向こう10年で30台を生産できれば良いと考えている。初期のプロトタイプは2台製作され、その2台は完売した。今回試乗したのは3台目のモデルで、まだ売りに出されていないモデルであったが、既に更に2台は支払い済みのオーダーを受けているという。タシェックは、今年は5台の販売を目標としている。

バックオーダーの2台のクルマはRS4ではなくR8のエンジンを使用する予定だという。その理由はドライサンプだからだ。

レノヴァティオT500は、クーペ・ルーフを持つが、スパイダーに姿を変えることができる。しかし、その取り外しには2分少々の時間がかかる。ライバルに較べると、プリミティブなルーフ構造だが、重量軽減のためにとられた構造である。

■どんな感じ?

そのボディ・モールディングは素晴らしい出来だ。また、インテリアは魅惑的なフィニッシュがされている。

タシェックがワイパー・アッセンブリーまで自作していることからも、そのエンジニアリングのクオリティについては、高い水準がキープされているようだ。

ハードウェアは直球勝負といった感じで、はったりやナンセンスなところがない。インボードのダンパーを持つフロント・ダブル・ウィッシュボーンを持ち、エンジンはミドに搭載される。その重量配分は僅かにリア寄りだ。油圧アシストのパワー・ステアリングと、サーボ・アシストの付いた、但しABSのないカーボン・セラミック・ブレーキが装着されている。

ドライビング・ポジションは、少しばかり変な感じがした。シートが短すぎて、着座位置がたかすぎるのだ。しかし、タシェックによれば「ノープロブレム」ということだ。というのも、オーナーとなる人の好みに合わせてシートはセッティングされるからだ。この注文仕立ては、さすがにスーパーカーというだけのことがある。そのオーダー・リストの中には、腕の長さを書き込む欄もあるというのだ。また、オプション・リストにはテレメトリー・システムや、ヒューランド・シーケンシャル・ギアボックス(30kgの重量軽減にもなる)もある。

レノヴァティオT500の、一般路上でのファースト・インプレッションは、とても固いといった印象だ。しかし、厳しいほどではない。もし、望むのであればダンパーを緩めれば良いのだ。ドライブ・トレーンは、良い意味で生のままといった感じだ。潤滑油や冷却水に加えて燃料など入れた車両重量で1133kgというボディ・ウエイトはすべてが良い方向に作用する。

また、エンジン・サウンドも良い。というのも、遮音するものが欠けているために、直接的なサウンドがはっきりと聞こえてくるのだ。正直なところ、コクピットには多くの熱量が入り込むことになろう。

われわれはレノヴァティオT500を飛行場に隣接された小さなサーキットに持ち込んだ。7900rpmのレブ・リミットまで非常に素早く回転が上がる様は、ランボルギーニガヤルド・スーパーレジェッラ並だ。しかもランボルギーニよりも機敏なレスポンスが味わえる。

油圧アシストのパワー・ステアリングは、適度な多さがあり、とても正確だ。フェラーリ458イタリアよりも落ち着いており、ノーブルM600やマクラーレンMP4-12Cほどねちっこくもない。まさに正直なフィーリングで、フロント・タイヤがどんな仕事をしているかがはっきりとわかるというものだ。

ちなみに、そのタイヤは特別にハイパフォーマンスに耐えうるコンパウンドを持ち、グリップは非常に高い。

ブレーキング時やコーナリング時のちょっとしたボディの動きは敏感で、ボディ・コントロールは総じてタイトだ。安定したスロットル・ワークであれば、ほんの少しのアンダーステアでコーナーを駆け抜けてくれる。ちなみに、ブレーキも卓越したペダル・フィールを持っている。

とにかくレノヴァティオT500のシャシー・バランスは素晴らしいものがある。その気になれば簡単にリアをスライドさせるだけのパワーもあるし、その時の挙動は、多くのミドシップ・スポーツよりも予想しやすい。間違いのないシャシーがレノヴァティオT500にはある。サーキットで時を重ねるつれ、その楽しさは増していった。そして、その印象は、多くのトラディショナルなスーパーカーよりも、ポルシェのGTモデルや最新のロータス・エクシージSに近いものを感じだ。

■「買い」か?

面白い質問だ。実際、私個人がスーパーカーの購入者というものを完全に理解できているとは思わない。多くのスーパーカーのユーザーは、ガレージにそのクルマを置いておくことで満足してしまうのかもしれない。しかし、レノヴァティオT500は、ちょっとばかり立ち位置が違うような気がする。このクルマは消耗費をすり減らさなければならないスーパーカーなのだ。

私? 私だったら、オプション欄のヒューランド・ギアボックスにチェックを入れて愉しむだろう。

(マット・プライヤー)

タシェック・レノヴァティオT500

価格 241,000ポンド(2,970万円)
最高速度 310km/h
0-100km/h加速 3.7秒
燃費 8.7km/l
Co2排出量 NA
乾燥重量 1090kg
エンジン V8 4163cc
最高出力 444bhp/7900rpm
最大トルク 32.2kg-m/3200rpm
ギアボックス 6速マニュアル

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