フィアット、新型SUVに『ムルティプラ』のスピリットを注入? 2027年発売へ

公開 : 2025.06.13 06:45

フィアットは2027年に新型のコンパクトSUVを発売予定ですが、かつての『ムルティプラ』の精神的後継車となる可能性があります。小さな車体に広い居住空間を確保し、実用的なファミリーカーに仕上げる計画です。

小さな車体に広い空間

フィアットが2027年に発売予定の新型SUVは、カルト的な人気を誇るミニバン『ムルティプラ』のスピリットを受け継ぐ精神的後継車となる可能性がある。

この新型SUVは、今後2年間で投入する2車種のCセグメント車のうちの1つで、もう1つは背の高いハッチバックである。2車種は、昨年初めに発表されたコンセプトカー『SUV』および『ファストバック』がベースになる見込みだ。

昨年公開されたコンセプトカー『SUV』
昨年公開されたコンセプトカー『SUV』    フィアット

いずれも全長4.5m以下で、小型のグランデ・パンダと同じコスト重視の『スマートカー』プラットフォームを採用しており、EVおよびハイブリッド車の設定が可能だ。

新型SUVは、パンダファミリーの一部であり、500にインスパイアされたシリーズとは別系統のものとなる。ただし、フィアット幹部は『パンダ』の名称が必ずしも採用されるとは限らないと示唆している。

欧州部門責任者のガエターノ・ソレル氏は、コア市場であるA/BセグメントからCセグメントに進出することのリスクについて、「難しい挑戦になるでしょう。しかし、ムルティプラのように、フィアットにはファミリーカーで成功を収めた歴史があります」と述べた。

「(親会社の)ステランティスのおかげで、顧客とディーラーに2.5mから4.4mの乗用車ラインナップをすべて提供することができるようになりました。そこがフィアットの領域です」

ムルティプラは、2列3人掛けのシートを備えた全長4mのコンパクトMPV(ミニバン)として1998年に登場した。そのスタイリングは好みが分かれるものであり、商業的には成功しなかったが、設計自体は高く評価され、AUTOCAR英国編集部の2000年の試乗では「このクラスで最も革新的でエキサイティングなクルマ」と評された。

新型車は、より一般的なSUVの外観となるが、小さなボディサイズで車内空間を最大限に確保するという点では、ムルティプラを彷彿とさせるものになるだろう。グランデ・パンダと同じスマートカー・プラットフォームを採用したシトロエンC3エアクロスは、コンパクトでありながらも7人乗りだ。

一方のファストバックのコンセプトカーは、車高の高いハッチバックへと発展し、フィアット・ティーポの精神的な後継車となる可能性が高い。

デザイン責任者のフランソワ・ルボワン氏は、今後のモデルはグランデ・パンダやその他の歴史的なモデルからデザインの影響を受けるが、レトロなデザインに固執することはないと強調した。

「製品はレトロな雰囲気が感じられるものとなります。しかし、過去を知らなくても、製品は魅力あるものでなければなりません。わたし達はポップカルチャーやカーカルチャーのコードを駆使していますが、新しい世代にも受け入れられるものでなければなりません」と、ルボワン氏は力を込めた。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事