信頼関係の深さはCSL以上 BMW M4 CS(2) サーキットで顕になるコンペとの差

公開 : 2025.06.12 19:10

サーキットでの体験と公道でのパフォーマンスを追求したM4 CS CSLと同じ550psと66.1kg-m 各部の軽量化で−50kg シリアスなコクピット サーキットで顕になるコンペとの違い UK編集部が試乗

スーパーカー級の加速 8速ATの厳選ギア比

BMW M4 CSLと同じ、550psと66.1kg-mを得たM4 CS。0-100km/h加速は、われわれの計測で3.1秒を記録した。数字通り、速さは衝撃的。四輪駆動システムも、圧倒的な動力性能へ大きく貢献している。

48km/hから112km/hへの中間加速は、2.5秒とスーパーカー級。ポルシェ911 GT3より、0.2秒鋭い。1.8t近い車重を感じさせないほど。ジャイアントキラーと呼ぶには大柄で高価だが、まさにそんな印象を与える。

BMW M4 CS(英国仕様)
BMW M4 CS(英国仕様)

ZF社製の8速ATはギア比が厳選され、印象的な加速に繋げている。システム任せでも軽快で巧妙に変速を処理し、シフトパドルを弾けば即座に応えてくれる。レッドラインの7200rpmまで引っ張っても、勝手にシフトアップしないのもうれしい。

ステアリングホイール上には、赤く塗られたM1とM2のスイッチ。シャシーとパワートレインの特性を任意に登録でき、状況に合わせて即座にモードを切り替えられる。狙い通りの変速制御も、一発で呼び出せる。

M4 CSL以上に信頼関係を築きやすい

ブースト圧が上昇した直列6気筒エンジンは、リニアでレスポンシブ。2500rpm以上でターボが威力を発揮し、本格的にパワーが湧出する。ただし、個性は若干希薄。サーキットでは、911 GTSに載る3.6L 水平対向6気筒の方が、充足感は高いだろう。

タイヤは、コース上を意識したミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2も指定できるが、試乗車はパイロットスポーツ 4Sを履いていた。よりロードカー寄りのチョイスで、公道での扱いやすさを高めていた印象。

BMW M4 CS(英国仕様)
BMW M4 CS(英国仕様)

滑らかな路面なら、足さばきは驚くほどしなやかで、積極的にコーナーへ突っ込める。ボディロールは限定的でありつつ、荷重移動を捉えやすく、M4 CSL以上に信頼関係を築きやすい。公道をこれ以上迅速に処理できるモデルは、極めて限られるはず。

反面、劣化したアスファルトでは、M4 コンペティション以上に乱れがち。チャレンジングな区間での敏捷性を求めると、サスペンションを引き締めたくなるが、代償として落ち着きは低くなる。それでも、ボディの上下動が完全に鎮められるわけではない。

サーキットで顕になるコンペとの違い

運転体験は、総じてグランドツアラー寄りで、速度域の高いルートとの相性が優れる。稀に現れるタイトコーナーでは、アクセルペダルの踏み込み次第でシャシーの余力を引き出せる。これは、M4 コンペティションでも同様だが。

サーキットへ足を進めれば、見事な操縦性と落ち着いた身のこなしで、M4 CSとしての違いが顕になる。BMWの意図通り、シリアスなインテリアへふさわしく、後輪駆動モードの能力が引き出される。

BMW M4 CS(英国仕様)
BMW M4 CS(英国仕様)

フロントタイヤはしっかり路面を捉え、驚くほど滑らかにテールスライドを誘いやすい。とはいえ、パイロットスポーツ 4Sはすぐに熱ダレしてしまう。この環境では、耐性の高いカップ2タイヤへ履き替えたい。

燃費は、高速巡航で11.5km/Lに届いていた。英国ロンドンからドイツ・ニュルブルクリンクまで、無給油で目指すことも不可能ではない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

BMW M4 CSの前後関係

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