羨望のカレラRSR 2.8を再現 ルーフ3.4 RSRへ試乗 年間1台のスペシャル911 後編

公開 : 2022.09.06 08:26

911カレラRSR 2.8は伝説的なクラシック・ポルシェの1台。ルーフが再現した現代版を、英国編集部が評価しました。

アグレッシブな見た目を裏切らないパワー

昔ながらのキーをルーフ3.4 RSRのシリンダーに刺し、ひねると、長めのクランキングで3.4Lの水平対向6気筒が目を覚ました。最高出力は320psを実現しており、オマージュしたポルシェ911 カレラRSR 2.8より20psほど力強い。

ザラザラとしたノイズを伴う、威圧的なアイドリングに落ち着く。クラッチペダルは重いが、発進はケータハム・セブンより簡単。パワー感は、アグレッシブな見た目を裏切らない。最新の911 GT3より多くの注目を集めそうな気がする。

ルーフ3.4 RSR(欧州仕様)
ルーフ3.4 RSR(欧州仕様)

ドイツの路面は滑らかで、夏という季節も相まって、英国のうらびれた環境とは異なる。ルーフは日常的な乗りやすさにも配慮しているが、今日のような天気の良い日は、なおのこと実力を確かめるのに丁度いい。

5速MTは、RSR 2.8より後に積まれたG50と呼ばれるユニット。それに伴い、リア側のトーションビームは新開発されている。シフトレバーの動きは正確で締りが良い。

メカニズムが最適化されており、感覚的に次のゲートへ滑り込ませられる。長いシフトレバーに抱くイメージとは裏腹だ。

ステアリングにはパワーアシストがなく、低速域ではかなり重い。速度が乗ってしまえば、扱いやすさが目に見えて高まる。レシオはクイックすぎず、スローすぎず。100km/h前後なら、安心感を伴いながら指先でノーズの向きを変えられる。

素晴らしい姿勢制御 予測可能な挙動

コーナーへ飛び込んでいくと、一体感を伴って3.4 RSRが反応。自ずとアクセルペダルを踏み込んで、勢いよく脱出したくなる。コンパクトなボディサイズも、そんな高ぶりに貢献している。

姿勢制御は素晴らしく、挙動は常に予測が可能。秘めた能力の本域を探りたい、という気にしてくれる。

ルーフ3.4 RSR(欧州仕様)
ルーフ3.4 RSR(欧州仕様)

ルーフは、ポルシェがRS 2.7からRSR 2.8へ施した内容に準じて、911のボディシェルを強化している。オリジナルと同等の体験を求めて、隅々まで抜かりはない。

アンチロールバーは太くなり、サスペンションの構成部品は殆どがアルミニウム製へ置き換えられた。リアのリンク類も強化されている。ダンパーはビルシュタイン社のもので、減衰力は高いものの、しなやかさや落ち着きが失われてはいない。

試乗の途中、深いワダチが残るコーナーをハイスピードで通過したが、通常のクラシック911なら身構えていたはず。しかし、3.4 RSRのリアアクスルは優しく追従し安定性を維持。フロントタイヤは、狙ったラインから一切ブレなかった。

タイヤは1973年のRSR 2.8を意識し、ピレリP7とコンパウンドは控えめ。反面、パワーウエイトレシオは996型の911 GT3を凌駕している。それにも関わらず、操縦性は素晴らしいのひとことだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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