羨望のカレラRSR 2.8を再現 ルーフ3.4 RSRへ試乗 年間1台のスペシャル911 前編

公開 : 2022.09.06 08:25

911カレラRSR 2.8は伝説的なクラシック・ポルシェの1台。ルーフが再現した現代版を、英国編集部が評価しました。

1973年のカレラRSR 2.8を現代技術で再現

遡ること2010年。アロイス・ルーフJr氏が、1人の顧客を自社の特別なクルマでドライブに誘った。業界で見れば小規模なルーフにとって、プロトタイプのテスト走行に来客を同乗させることは、珍しい行為ではなかった。

ただし、そのクルマは通常のルーフとは異なっていた。ドイツ・バイエルン州の南西にある小さな町、プファッフェンハウゼンの工場に出入りする人物以外、存在は知られていなかったという。

ルーフ3.4 RSR(欧州仕様)
ルーフ3.4 RSR(欧州仕様)

1970年代のモータースポーツで大暴れしたポルシェ911 カレラRSR 2.8を現代に再現すべく、アロイスの希望をカタチにしたクルマだった。普段使いに配慮され、公道走行できるようナンバーを取得した、1台限りのワンオフ・ルーフだった。

このアイデアに、同乗した顧客も強く共感。自身にも1台作って欲しいと願い出た。その結果誕生したのが、今回試乗を許されたブルーメタリックのルーフ3.4 RSRだ。

同社のカタログモデルとして完成したのは2022年。3.4 RSRの製作に10年を要したわけではないものの、極めて複雑なプロセスを踏んで仕上げられている。

1971年から数年間生産された、Eシリーズと呼ばれる901型911のシャシーから1973年のカレラRSR 2.8を再現するには、想像以上の手間と費用が掛かるという。1台のプロトタイプを完成させるのと同程度だと、アロイスは説明する。

アグレッシブで、子犬のように可愛くもある

ルーフの工場ではカーボンタブを備えるスーパーカー、SCRを生産しながら、964型RCTのレストアなども請け負っている。992型911のチューニングもしている。それと並行して進めるため、3.4 RSRの生産キャパシティは年間1台らしい。

この非常にレアな3.4 RSRがオマージュした911 カレラRSR 2.8は、カレラRS 2.7をグループ4規定に準拠させたレーシングカーだった。ダックテールと呼ばれる、特徴的なリアスポイラーで武装していた。

ルーフ3.4 RSR(欧州仕様)
ルーフ3.4 RSR(欧州仕様)

クラシックカーとしても評価は高く、RS 2.7にはオークションで75万ポンド(約1億2375万円)の価格が付くこともある。55台しか製造されなかったRSR 2.8の場合、その倍の予算を準備しなければ落札は難しい。

ダックテール以外にも、ワイドなリアフェンダーや大きなフロントのチンスポイラー、ツイン・エグゾーストなどでカレラRSR 2.8は仕立てられていた。実際の姿はどんなものだったかというと、このルーフをご覧いただくのが手っ取り早い。

実物の3.4 RSRは、想像以上に小さい。フォルムはシンプルでありつつ、ディティールの処理にクルマ好きなら思わず心が動くはず。アグレッシブだが、子犬のような可愛らしさも混在している。

存在感は半端ない。ピレリP7のリアタイヤは、幅が285もある。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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