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回顧録 歴代911比較試乗 最新は最良なのか

2019.02.09

タイプ993カレラ4S(1996年型)

空冷エンジンを積んだ最後の911であり、空冷時代の最高傑作と多くの人から認められているのが、このタイプ993だ。実際にはポルシェが深刻な財務危機にあった時期に開発されたため、周囲から期待されていたような劇的なフルモデルチェンジを実施することができず、タイプ964を実用的に改良するにとどめられたモデルだ。

だが、空力性能に優れたボディワークを取り入れ、トランスミッションは6段とされるなど、不満点として挙げられていた箇所は丹念に仕上げられている。なかでも重要なのは、新設計のダブルウィッシュボーンとなったリアサスペンションだ。さらに、この世代で初めて不格好な部分が完全に解消され、911のなかでももっとも好まれるモデルにもなっている。

エンジンは、チューニング違いの2種類が存在した。現在ではより甘美な特性と信頼性の高さから、初期型の272psユニットのほうが285psの後期「バリオラム」より好まれているが、実際にはどちらも傑出した素晴らしいエンジンだ。

タイプ993で知っておくべき最重要事項は、スペックによって性格が歴代ポルシェのなかで最も大きく変わるモデルだということだ。したがってグレード選びに際しては、それこそホイールのサイズにいたるまで、すべてを正しく把握しておかなければ最高の満足感は得られない。

たとえばワイドボディ化されたこのカレラ4Sは、正直なところ失望感漂うグレードだった。では、どれがベストか? おそらくそれはバリオラムに切り替わる前の、ナローボディだったベースモデルのカレラ2、それも16インチか17インチのリムを履いた仕様だろう。それなら間違いなく最良の911のひとつといえる。

タイプ964に対するタイプ993の優位をひと言で表すなら、それは「ドライバビリティ」だ。今、改めて運転すると、ギア段数の増加によって出力を有効活用できる点や、しかるべきサスペンションを得て踏ん張りが効くようになったリアアクスルに、それ以前のモデルとはまさに隔世の感を覚えずにはいられない。

911はタイプ993でようやく万能ウェポンとしてライバルを凌ぐ性能を発揮できるようになり、過度の緊張を伴わずにドライビングを楽しめるクルマとなったのだ。現在でも人気があるのは不思議でもなんでもない。

スペック

新車価格 1175.0万円
最高速度 270km/h
0-100km/h加速 5.3秒
車両重量 1450kg
パワートレイン 水平対向6気筒3600cc
最高出力 285ps/6100rpm
最大トルク 34.0kg-m/5259rpm
ギアボックス 6速MT
 
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