一見「無意味」なビーチバギーをリメイク 新生メイヤーズ・マンクスへ試乗 EV版も開発中

公開 : 2024.01.30 19:05

VWビートルをベースにしたビーチバギーの元祖、メイヤーズ・マンクス バッテリーEVの時代を見据え、新たに技術開発中 英国編集部がカリフォルニアで試乗

クラスレスな「メイヤーズ・マンクス」

「メイヤーズ・マンクス」というブランド名やモデル名はご存じなくても、フォルクスワーゲンビートルがベースのビーチバギーなら、見たことがある読者は多いはず。自宅のガレージで組み立てられる安価なキットカーとして、1964年に誕生した。

ビーチバギーのメイヤーズ・マンクスを開発した、創業者のブルース・メイヤーズ氏は、2020年に引退するまでカリフォルニアの陽気な文化に貢献してきた。2021年に彼はこの世を去るが、その魂は今も息づいている。

メイヤーズ・マンクス(北米仕様)
メイヤーズ・マンクス(北米仕様)

「彼が亡くなる前に、一緒に仕事できました。素晴らしい時間でした」。2020年に事業を買収し、メイヤーズ・マンクス社を引き継いだベンチャー企業のメンバー、マイケル・ポティカー氏が振り返る。

「買収を持ちかけた時、彼はまだ元気でした。永遠に生き続けそうに感じるほど、エネルギッシュな人でしたね」

メイヤーズ・マンクス社の前身、BFメイヤーズ&Co社は比較的短命だった。経営難に陥り、1971年に倒産している。

だが、2000年にブルースはメイヤーズ・マンクス社を立ち上げ、ビーチバギーの生産を再開した。ホイールベースの長いマンクスター2+2と、デュアルスポーツ、マンクス・キックアウトという新モデルとともに。

ベンチャー企業の一員として加わったポティカーは、メイヤーズ・マンクスの魅力へ引き込まれた。「サンディエゴのダウンタウンで運転すると、沢山の人にサムズアップされたんです。高級住宅地でも。クラスレスなクルマですよ」

キットカーをリマスタリング モダンに安定化

カリフォルニアで育った、現CEOのフリーマン・トーマス氏も、「ビーチバギーに夢中です」。と認める。彼は、アウディTTクライスラー300、新しいダッチ・チャージャーなどに関わった自動車デザイナーだ。

しかも、1990年代にはフォルクスワーゲン・ニュービートルも描き出した。2003年には、ジープ・トレオというオフローダーのコンセプトカーも手掛けている。レトロでコンパクトなバギーの再発明は、得意中の得意といえる。

マイケル・ポティカー氏(左)と、筆者のフェリックス・ペイジ(右)
マイケル・ポティカー氏(左)と、筆者のフェリックス・ペイジ(右)

メイヤーズ・マンクスは、時代へ対応させる必要があった。FRP製ボディとビートルのフロアパンを融合し、空冷フラット4エンジンで走るスタイルには、手を加える必要があった。キットカーをリマスタリングし、モダンに安定化させることが目指された。

同時に彼らは、ブランドを未来へ導くことにも注力している。つまり、電動化だ。メイヤーズ・マンクス 2.0EVは、彼らのビジョンをカタチにしたものといえる。

駆動用モーターとバッテリーのサプライヤーに関して、ポティカーは口を閉ざす。だが、約200psの最高出力と約27.6kg-mの最大トルクを、安定して発揮できる。駆動用バッテリーの容量を大きくすれば、480kmの航続距離が得られるそうだ。

車重は1650kg。ビーチバギーとしては重いが、本来の個性は維持されている。

ポティカーによれば、トーマスが優先したことは、従来のメイヤーズ・マンクスの精神と大きさを維持することだったとか。「大きなビーチバギーを作ろうという試みは、成功しませんでした」

記事に関わった人々

  • 執筆

    フェリックス・ペイジ

    Felix Page

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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