小さなスズキは「軽・好・楽!」 新型スイフトへ英国試乗 操縦性と快適性はクラス上位

公開 : 2024.04.03 19:05  更新 : 2024.05.15 10:37

適度に活発な1.2L 3気筒 変速が楽しい5速MT

確認はこのくらいにして、発進してみよう。1.2Lエンジンは、Z12E型と呼ばれる3気筒で、電圧12Vのスターター・ジェネレーター(ISG)が実装される。最高出力は82ps、最大トルクは11.4kg-m。4気筒だった4代目から1ps落ち、0.5kg-m太くなった。

0-100km/h加速は12.5秒で、最高速度は168km/h。速いハッチバックではないものの、適度に活発で、英国の交通の流れへ余裕で合わせることはできる。

スズキ・スイフト 1.2ウルトラ(欧州仕様)
スズキスイフト 1.2ウルトラ(欧州仕様)

アクセルペダルへの反応は感度が良く、特徴的なビートとともに、線形的に力が増していく。5700rpmまで引っ張る必要性は感じさせない。

5速MTは、滑らかにシフトレバーが動き、重み付けも丁度イイ。ストロークが短いわけではないが、変速が楽しい。CVTは試乗していないが、4代目の印象を踏まえると、MTを推したいところだ。

スズキの技術者は、乗り心地と操縦性の改良で、ベンチマークにしたモデルを公言している。ボディロールは、フォルクスワーゲン・ポロ水準へ抑えたとか。ステアリングの反応は、フォードフィエスタ水準へ高めたそうだ。

正直なところ、4代目スイフトの身のこなしがポロより鈍いと感じたことはなかった。だが確かに、その進化ぶりは明瞭といえた。

ステアリングのレシオや重み付けは望ましく、反応はリニアでポジティブ。今回は高速道路まで走れていないが、直進時は安定してもいる。

連続するカーブを小気味よく縫える

車重が軽いおかげで、姿勢制御を引き締めるため、過度にサスペンションを硬くする必要はない。旋回時の傾きを抑えつつ、低めの速度域でも落ち着きは良好。連続するカーブを小気味よく縫っていける。

試乗車が履いていたタイヤは16インチ。扁平率は55と薄すぎず、サイドウォールもある程度の衝撃を吸収してくれる。ノイズレベルは、このクラスの上位モデルほど静かではないが、良く抑えられていた。

スズキ・スイフト 1.2ウルトラと筆者、マット・プライヤー
スズキ・スイフト 1.2ウルトラと筆者、マット・プライヤー

フィエスタ級に、操縦性と快適性を高次元で両立したとはいえない。だが、クラストップの水準へさらに一歩迫ったことは間違いない。

英国のトリムグレードは、モーションとウルトラという2段階。前者にも、バックカメラとパーキングセンサー、アダプティブ・クルーズコントロール、アルミホイール、キーレスエントリー、スマートフォンとのミラーリング機能など、殆どの装備が備わる。

四輪駆動のメカニズムは、スズキ・イグニスと同等とのこと。最低地上高は25mm高くなる。

確かに、欧州では選択肢が狭まるコンパクトカー・クラスではあるが、まだ出来の良いクルマは少なくない。その1台、スイフトはさらに能力を高めることへ成功した。運転が楽しく、シンプルで実用的。英国価格も充分お手頃といえる。

新車でフィエスタを購入できない今、乗り心地と操縦性との組み合わせでは、相当な上位に仕上がっている。適度に活発なエンジンと、気持ちイイ5速MT、適度な小ささが融合し、かなり好ましく楽しめるスズキだ。

◯:軽くて小さい 充実した装備 妥当な価格
△:傷の付きやすそうな内装素材

スズキ・スイフト 1.2ウルトラ(欧州仕様)のスペック

英国価格:1万9799ポンド(約374万円)
全長:3860mm
全幅:1735mm
全高:1495mm
最高速度:168km/h
0-100km/h加速:12.5秒
燃費:22.7km/L
CO2排出量:99g/km
車両重量:945kg
パワートレイン:直列3気筒1197cc 自然吸気+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:82ps
最大トルク:11.4kg-m
ギアボックス:5速マニュアル(前輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    英国編集部エディター・アト・ラージ
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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