スズキ・ジムニー(シエラ) 5ドアへ海外試乗 待ち望んでいた本当の姿? WBを340mm延長

公開 : 2024.01.27 19:05

海外にもファンが多い小さなオフローダー、ジムニーに5ドア登場 ラダーフレームとリジッドアクスルの従来的な走りに愛らしい個性 英国編集部が評価

ホイールベースを伸ばしリアドアを追加

4代目へモデルチェンジしたスズキジムニーは、2018年の登場以来、世界各国で人気を博している。メルセデス・ベンツGクラスを彷彿とさせる四角いカタチに、道具的で機能的な内装のデザイン、個性的なパッケージングで、多くのファンを獲得している。

唯一、弱点といえたのが狭い車内空間。それを克服するべく、歴史の長いジムニーとして初めて、5ドア仕様が登場した。ホイールベースを340mm伸ばすことで、リアドアを追加。荷室容量も126L増えている。

スズキ・ジムニー(シエラ) 1.5 GLX 5ドア(南アフリカ仕様)
スズキ・ジムニー(シエラ) 1.5 GLX 5ドア(南アフリカ仕様)    スズキ

ただし、購入できる市場は限られている。小さなサイズでも、CO2の排出量は少なくなく、英国への導入は今のところないという。今回筆者が試乗したのは、既に販売が始まっている南アフリカだ。

全長は、スペアタイヤ込みで3965mmへ長くなったが、1645mmの全幅と1720mmの全高は、3ドアのジムニー・シエラと同じ。フォルクスワーゲンTクロスよりひと回り小さい。ファミリーSUVが並ぶ駐車場に停まると、明らかにコンパクトでかわいい。

定員は4名で変わりないが、車内は充分広くなり、家族4名でのお出かけに問題なく対応できる。小旅行なら、荷物もしっかり載るはずだ。

特長といえる機能が、前後のシートがフルフラットになること。全部倒すと、大人2名が寝られるベッドになる。キャンプなどでの車中泊にピッタリだろう。

ラダーフレームにリジッドアクスル

内装の質感はソリッド。スイッチ類は大きくデザインされ、悪路でボディが傾いても握って体を支えられるよう、グリップがドアに用意されている。

ダッシュボード中央には、9.0インチのタッチモニターが据えられる。アップル・カープレイとアンドロイド・オートに無線で対応し、現代的な機能もしっかり備わる。

スズキ・ジムニー(シエラ) 1.5 GLX 5ドア(南アフリカ仕様)
スズキ・ジムニー(シエラ) 1.5 GLX 5ドア(南アフリカ仕様)    スズキ

ただし、動的な印象は従来的。その理由の1つが、3ドアのジムニー・シエラと同じく、ラダーフレーム・シャシーと3リンクのリジッドアクスル・サスペンションで支えられているため。

ホイールベースが長くなり、多少改善しているものの、明確に落ち着きを増したわけではない。時折、若干不安定に感じられる場合もある。

エンジンは1.5Lの自然吸気ガソリン。最高出力104psに、最大トルク13.6kg-mと、潤沢とはいえないパワーで、3ドアから75kg増えた1210kgのボディを受け持つ。坂道ではシフトダウンが必要だし、高速道路では高めの回転数を維持することになる。

日本には軽自動車規格のジムニーもあり、それにはガソリン・ターボエンジンが載っている。しかし、最高出力は64ps。より強力な、ブースタージェット・ユニットが載る可能性もないとか。

ブレーキペダルの感触が、運転する自信を高めるわけでもない。ステアリングホイールの操舵感は重めだ。とはいえ、これらは3ドア版と大きく違わない。ジムニー独自といえる、愛らしい個性を否定することには繋がらない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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