レクサスの中国製コピー? 上級ワンボックスEVが英国上陸 マクサス・ミファ9へ試乗 価格なりの高水準

公開 : 2024.05.17 19:05

中国SAIC傘下のマクサスが、上級ワンボックスを英国で発売 低重心で操縦性は悪くない 後席の快適性は少し期待外れ 洗練度は至らなくても低価格が強み 英国編集部が評価

中国の上級ワンボックスが英国で発売へ

自動車にも、流行り廃りがある。数年前までは、ワンボックスカーが高級車市場で存在感を示すとは想像していなかった。だが最近は、メルセデス・ベンツEQVレクサスLMなどが、少なくない注目を集めている。

中国のメーカーも、流行には敏感らしい。マクサスが、ミファ9を英国で発売することを決めたのだから。

マクサス・ミファ9 プレミアム(英国仕様)
マクサス・ミファ9 プレミアム(英国仕様)

マクサスというメーカーは、2009年に破綻。中国のビッグ3の1社、SAICモーターが買収した。その2年後には英国のMGも買収され、ミファ9は一部の市場ではMGのディーラーで売られている。

英国では、電動ピックアップトラックのT90 EVが、マクサスで1番知られているモデルだろう。同社のシェアは増加傾向にあり、2023年の売上は46%も伸びたという。2024年は、さらに60%増えると予想されている。

ミファ9のプラットフォームは、内燃エンジンモデルのワンボックス、G90と共有。容量90kWhの駆動用バッテリーは、フロア下に敷き詰められている。

航続距離は、WLTP値で434km。ところが、筆者がトリップコンピューターを確認した時の電費は、約200km走行後に平均2.2km/kWhが表示されていた。

ただし、マイルとkmの切り替えが完全ではない様子。山道を高速で駆け回った区間も多かったから、あくまでも参考として見ていただきたい。160km走ったあと、充電量が40%まで減っていたことは確かだが。

操縦性は悪くない 後席の快適性は期待外れ

ボディサイズは全長5270mm、全幅2000mm、全高1840mm。車重は2535kgあり、前面投影面積も大きい。車内は広いが、優れた効率を得にくいプロポーションではある。

駆動用モーターは1基で、最高出力は244ps。7脚のシートすべてに大人が座ると、3tを超えるから、満員時はフルパワーが必要になるだろう。それでも、ディーゼルエンジンより加速は滑らかだ。

マクサス・ミファ9 プレミアム(英国仕様)
マクサス・ミファ9 プレミアム(英国仕様)

スポーツ・モードが備わるが、積極的に追い越しをかけるのは避けた方がいい。驚くようなスキール音で、グリップの限界が近いことを教える。廉価なリンロンではなく、コンチネンタル・タイヤを履いていても。

操縦性は悪くない。バッテリーEVらしく低重心で、コーナリングは落ち着いている。高めの速度域を保っていても不安感は小さく、流れの速い郊外の道で1番気になったことといえば、ワイドな全幅だった。

そのままコーナーへ突っ込むと、ボディロールが小さくない。山道では、同乗者のクルマ酔いを誘いそうだ。

VIP前提の上級ワンボックスだから、快適性は操縦性以上に重要といえるが、ミファ9のそれは少し期待外れ。乗り心地は商用バンの印象に近く、アスファルトの剥がれた穴を通過すると、不快な振動が伝わってきていた。

LMの試乗も撮影したカメラマンは、リアシートの快適性には歴然の差があると話していた。「肩を並べる水準ではないでしょう」。と。

筆者は以前にEQVへ乗っているが、そちらはエアサスペンションでしなやか。車内も基本的に静かだった。高速域では、大きな風切り音で平穏は乱されるが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    クリス・カルマー

    Kris Culmer

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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