いよいよジュリアに乗りこむ(前置きが長くなったが……)

とまあ、早朝のオフィスで焦がれた相手の到着を待ちつつ、思索はとりとめもなく広がり続けたわけだが、それもジュリアの登場で打ち切られた。

真剣勝負に臨む白装束に身を包んだがごとき今回の主役は、装備的に中間グレードのスーパーに当たる。低く構えて引き締まった車体は、XEよりもショルダー・ラインがスッキリとしていて、3シリーズほどゴツくない。

実物を目の前にすると、脳内で美化していたからか、それほど美しくは見えなかったが、ワシ鼻のフロントや魅惑的なホイールは曇り空の下でも輝いて見えた。遠目にも、そばによっても、それはたしかにアルファ・ロメオらしい姿だ。

いよいよキーを受け取り、ドアを開ける。キャビンの第一印象は、なかなかの高得点だといえる。とにかく魅力的だ。流れるようなダッシュボード、大きく目立つメーター、広がりのあるセンターコンソールなど、実にエレガントである。円形の送風口や金属ペダル、2トーンのトリム、インフォテインメントのディスプレイなども、美しさを引き立てる。機能重視の設えが目立つセグメントにおいて、目を引かずにいられないインテリアだ。

それに比べると、XEと3シリーズのモノトーンの内装は陰気で、規律に囚われているように見えてくる。とはいえ、造りや使い勝手については両者ともむしろアルファ・ロメオの上を行く。

とりわけ3シリーズは、ライフ・サイクル後半に入っていながら、ステアリング・ホイールやセレクター・レバー、スイッチ類など、操作系の感触における満足感は特筆ものだ。

中でも改良に改良を重ねてきたiDriveは、いまやインフォテインメントのテンプレートとなっており、ジュリアのそれもBMWのコピーみたいなものだといえる。

ただし、ブラインドでスムーズに操作するにはそれなりに慣れが必要で、ネット接続が緩慢な点は他社と同様だ。ディスプレイはずば抜けてワイドなだけが取り柄で、解像度は格安スマホにも敵わない。コントローラーには、使うことが楽しくなるような遊び心もない。

これはATセレクターにも言えることで、シャープな感触はすばらしいのだが、レバーを前後に動かしてポジションを選ぶ方式は原始的だ。ジャガーのロータリー式セレクターや最新のタッチパネルを知ってしまうと、時代遅れに思えてくる。

待望の対面が叶ったジュリアを内外すみずみまで撫で回し、すっかり時間を食ってしまった。いよいよエンジンに火を入れ、ウェールズ南部を目指して出発だ。まずは高速道路を250km弱走ったのだが、ライバルに対し、運動性能の面で真のライバルだと知らしめるには、最初の数kmで十分だった。